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世界に向けてセミナーを開催
自家歯牙移植の権威

2019/8/9 デンタル〇〇デザイン

今年4月、愛知県の蟹江町にある月星歯科クリニックで、2日間にわたって「International Hands-on Course for Autotransplantation of Teeth」という国際的な研修会が開催されました。
主催者である月星光博院長は、外傷歯の治療および自家歯牙移植における第一人者として国内外に知られる人物です。世界各国から受講生が集まるセミナーを見学させていただき、月星先生がどのようにして国際的に活躍する歯科医となられたのか、お話を聞きました。

ーー本日は宜しくお願いいたします。こちらに到着してまず何より、セミナー会場全体が、一流ホテルの貴賓室を思わせる作りであることに驚きました。

月星 ありがとうございます。以前はもう少し狭い会場だったのですが、クリニックの改築に合わせて6年前に思い切ってリニューアルしました。セミナーに参加される先生方に「ぜひ月星のCEセミナーに行ってみたい」と思っていただき、受講中も心地よく学べる環境を作ることが、私の長年の夢だったんです。

ーー研修の様子を覗かせていただきましたが、実習模型を大型スクリーンに投影しながら、メスをどの角度で歯肉に入れていくか、縫合糸をどのように結べば良いかなど、非常に細かく指導をされているのが印象的でした。

月星 国際セミナーに限らず、CEセミナーは1日目は授業形式で知識を学び、2日目は実習を通じて技術を身につけてもらうようにプログラムされています。

ーー参加者はどういった国々から来られているのでしょうか?

月星 今回は台湾から参加者が約3分の2で、UAE、アメリカからも来てくれました。前回はヨーロッパ、オーストラリア、シンガポールなど、世界中の国々から大勢の参加者が集まりました。

ーー世界に向けてのセミナー開催はどのように告知しているのでしょうか?

月星 ホームページとネットの口コミだけです。開催を告知すると、いつの間にかFacebookなどで拡散されて、口コミで早期に定員に達します。受講生に聞くと、僕のことを何年も前から知っていて、「いつかセミナーを受講したいと思っていた」という人が多いようですね。

ーーそれだけ月星先生の名前が世界の歯科医の間で知られているんですね。

月星 私が長年の研究テーマとしてきたのは「外傷歯」なんですが、そこから派生した「自家歯牙移植」の専門家としても、私は海外の歯科医によく知られています。今回のセミナーは自家歯牙移植に関してです。自家歯牙移植は、親知らずなどの自分の歯を欠損した部位に移植する治療法で、とくに若い人であれば非常に良い治療結果となることが少なくありません。昔からある手法ですが、最近とくにヨーロッパで関心を持つ歯科医が増えており、数年前からポーランドの先生を中心に学会も立ち上がっています。

ーーインプラントに比べ自家歯牙移植にどんな利点があるのでしょうか?

月星 人間の顎の骨や筋肉は、成長や加齢にともなって少しずつ動いていきますが、人工物であるインプラントは顎の変化に追随することがありません。そのため治療してから数年〜10数年でトラブルになることもあります。自家歯牙移植は自分の歯ですから、治療に成功すれば元から生えていた歯のように自然に馴染み、劇的に良い結果をもたらします。天然歯はインプラントに比べ虫歯になったり、欠けたり割れたりというデメリットはありますが、やはり自分の歯がいちばんです。とくに若い患者さんには、インプラントの前に自家歯牙移植を検討することを勧めたいですね。

ーー自家歯牙移植には大きなメリットがあるんですね。

月星 ただ、自家歯牙移植も決していいことばかりではありません。インプラントに比べて適応症例が限られています。また術式も簡単ではありません。自家歯牙移植が一般的でないのはそういった理由もあるようです。また2割ぐらいは移植しても定着せずに、歯根が無くなってしまったりすることもあります。適応症例をきちんと見極め、しっかりとした技術に基づいて施術する必要があります。

ーー世界の歯科医が月星先生のセミナーを受けたいと思うのは、その技術を身につけたいというのが理由なんですね。

月星 私が世界に名を知られるようになったのは、私が20年ほど前に書いた外傷歯の治療に関する本が、英訳されたことがきっかけでした。その後に書いた『自家歯牙移植』という本は、いまではアゼルバイジャン語など、英語を含め4カ国語に翻訳されています。その本は長い間、自家歯牙移植に関する唯一の専門書だったので、教科書として多くの世界中の歯科医に読まれてきました。また本だけでなく、私は若いときから論文を英語で書いて世界の学会で発表してきたので、そうした積み重ねが今につながっています。

ーー歯科医もグローバルに活躍する人が増えていますし、またインターネットが普及した今だからこそ、外国語で情報を発信することはますます重要になってきますね。

月星 私は最近では、年に5〜6回は海外の学会に呼ばれて講演します。学会場では、「以前にも先生の講演を聞きました」と声をかけられたりするんですね。先日もヨーロッパのどこかの空港でまったく知らない現地の人に手を振られて驚きましたが、その人も歯科医で過去に講演を聴いてくれた方でした。

ーー月星先生は、国内の歯科医向けの「CEセミナー」という研修会も開催されていますね。

月星 はい、CEセミナーはもう25年目になります。そちらでは外傷歯や自家歯牙移植だけでなく、ベーシックコースとアドバンスコースに分けて歯科医に必要なあらゆる技術と知識を教えています。卒業生が全国に千数百名いて、同窓会組織も近年作り、300名ほどのOBが入会してくれています。

ーーセミナーなどの際に、若い歯科医師たちにはどんなアドバイスをされていますか?

月星 とにかく継続して勉強をしてください、ということですね。私が専門とする外傷歯は、臨床の現場でもとても多い症例ですが、じつは多くの歯科大学できちんと治し方を教えていないんです。子どもが鉄棒に歯をぶつけたり、野球のボールが当たったりして、歯が折れたりぐらつくことはよくあります。しかし歯科医が適切な外傷歯の治療法を知らないために、不適切な治療をされてしまい、それが原因で歯を失うケースも少なくないんです。ですから、卒教育で外傷歯治療に限らず、多くの治療法を学ぶことが大切と思います。

ーーこれからの先生の目標を教えてください。

月星 私は歯科医になって42年ですが、今まで自分が得てきた知識や経験を、国内外の若い次の世代の人たちに伝えていくことが使命だと思っています。私もたくさん失敗してきたので、同じ失敗を繰り返してほしくありませんからね。私が持っている知識が有用である限り、教育にさらに力を入れて取り組んでいこうと思います。

ーーありがとうございました。

ープロフィールー
月星光博(つきぼし・みつひろ)
1952年生まれ。1977年大阪大学歯学部卒業。81年京都大学医学部大学院卒業、同大学医学博士取得。82年、月星歯科クリニックを愛知県海部郡蟹江町に開設。91年日本自家歯牙移植研究会会長(2000年に日本自家歯牙移植・外傷歯学研究会に改称)。2009年・2010年国際外傷歯学会会長、2015~2018年東北大学歯学部臨床教授。著書に『外傷歯の診断と治療』『自家歯牙移植』(ともにクインテッセンス出版)など多数。

月星歯科クリニック
http://tsukiboshi-dc.com/index.html