Dental Life Design

あなたのデンタルライフを彩るメディア

子どものための歯科って? Vol.1
―子どもにウソをつかない歯科医院―

2019/1/21 デンタル〇〇デザイン

いつの時代も子どもにとって、歯医者さんは「行きたくない場所」の1つではないでしょうか。予防歯科の重要性が知られるようになり、定期検診を受ける児童の数も増えていますが、それでも嫌がる子どもをどうやって歯医者に行かせるか、頭を悩ませる保護者の方々は少なくありません。
本連載「子どものための歯科って?」では、生涯にわたる歯の健康の基礎が作られる子どもの歯と、歯科関係者はどう向き合えばよいか考えます。
第1、2回は、日本でわずか1,200人しかいない小児歯科専門医の重岡真理子先生に、「まりこ小児歯科」の取り組みと現代の子どもたちが抱えるお口の問題についてうかがいました。

■まりこ小児歯科 院長 重岡真理子さん
2004年福岡大学卒業。4つの歯科医院で小児歯科専門医として勤務した後に、2018年7月、大阪府吹田市に「まりこ小児歯科」を開業。日本に約1,200人しかいない小児歯科の専門医として、地域の子どもたちの歯の健康を育む。クリニックには子ども専用の特注診療台や器材を揃え、保護者への食育指導などにも積極的に取り組む。

まりこ小児歯科 https://www.mariko-ped.com/

−−重岡先生がここ、大阪の吹田市に、小児歯科専門の「まりこ小児歯科」を開業された経緯について教えていただけますでしょうか?

はい。私は夫が転勤族で、しばらく前に大阪に引っ越してきたのですが、その前は福岡県で保険医として地域の子どもたちの歯科検診を担当していました。自分の子どもが1歳半になって、最初の地域の歯科検診を受けたときに、母子手帳に「歯に磨き残しがあって汚れています。お母さん、歯磨きがんばろう」と書かれていたんです。

−−それはちょっと……ショックですね(笑)。

「ありえない!」と思いました(笑)。もちろんプロの目で、毎日子どもの歯はしっかり磨いていますし、何かの間違いだと思ったので、「私は小児歯科の専門医なんですが、もう一度見てもらえますか?」とお願いしました。結局、その担当してくれた先生は、ふだんは大人の歯ばかりを見ていて、小児歯科の専門ではなかったんです。その経験があまりにショックで、それまで独立など考えたことも無かったのですが、闘志がメラメラと湧いてきたんです(笑)。

−−それで吹田市に引っ越されてから、小児歯科専門の医院を開業されたわけですね。

はい、私は「小児歯科学会専門医」の資格を持っていますが、日本におよそ10万人いる歯科医のなかで、小児歯科専門医は1,200人、約1%しかいません。大人になってからも口腔の健康の基礎は、子どものときに作られます。だからこそ、子どもの歯のことをよく知っている小児歯科専門医が、子どもたちの歯を診ることが大切なのです。まりこ小児歯科は、0歳から15歳前後までの、お子さんだけの診療を行う小児専門の歯科医院としています。医院を開いたこの場所は、もともと、私の子どもが通っていた保育園だったんです。物件を探していたときに、ちょうど保育園が別の場所に移ることが決まって、そのあとをお借りすることができました。地域のお母さんたちにとっても馴染みの場所なので、とてもラッキーでしたね。

−−まりこ小児歯科にかかるお子さんたちは、どんな歯の問題を抱えていることが多いのでしょうか?

保護者の方々の歯に対する意識は、昔と比べてとても向上していますので、定期検診やフッ素塗布を受ける子どもは増えています。全体としてみれば虫歯の数は確実に減っていますね。その一方で、1歳の時点ですでに7〜8本虫歯がある子や、5、6歳になると20本以上も虫歯がある子もいます。そういう子どもの保護者の方も、決してその状況になるまで放置していたわけではなくて、だいたい1〜2歳ぐらいのときに歯医者に連れて行っているんです。でもそこで、子どもが泣いて暴れて治療ができなくて、「乳歯だから生え変わるだろう」とそのままにしてしまったケースが多いですね。乳歯の虫歯もそのままにしておくと、永久歯が虫歯になりやすくなりますし、しっかり奥歯で食べ物が噛めなければ、子どもの成長そのものに悪影響が及びます。また先天性欠如で永久歯が生えない子の場合、乳歯で一生食べ続けなければなりませんので、虫歯が多い子どもの保護者の方には、小児歯科治療の重要性を説明して、きっちりうちで治してもらうようにしています。

−−子どもの多くは、歯医者に行くことを嫌います。重岡先生は、どうやって嫌がる子どもの歯を治療されているのでしょうか?

まず歯医者に来たこと自体を「えらいね、よく来たね」と褒めます。子どもにもプライドがありますから、褒められると嬉しくなりますし、「せっかく来たんだからがんばろう」と思ってもらえるんです。それでも嫌がる、泣く子もいますが、そういう子には「泣いていいよ」と言いますね。麻酔を打つときも、子どもの歯肉は大人より柔らかいので、あまり圧をかけずに済むから、注射器さえ見せなければ、気づかせずに麻酔ができるんですね。むしろ近くで見ている保護者の方が、「我慢してね」なんて声をかけるせいで、かえって子どもが怖がることもあります。子どもの治療を近くで見るか、こちらに任せるかは、保護者の方の希望を聞いていますが、案外子どもって、親が近くにいない時のほうがしっかりしているんです。何回か通院するうちに、たいていの子は一人で治療できるようになりますね。

−−子どもを「子ども扱いしない」ということなんですね。

そのとおりです。私は以前から、「子どもにウソをつかない」「約束を守る」「一人の人間として扱う」という方針に則って、すべての子どもの歯を診ています。そもそも歯医者というのは治療のために行く場所ですから、決して「楽しい場所」ではないんですね。麻酔を打てば少しはチクッとしてしびれるし、治療に使用するタービンやコントラの音は昔から子どもにとって恐怖の対象です。だからこそウソをつかずに、「これはあなたの歯を治すために必要なんだよ。ちょっとだけ我慢してね。一回で終わるからね」としっかり説明して、約束したことを守って治療することが大切だと考えています。子どもは3,4歳ぐらいになると、大人の言うことをきちんと理解してくれます。こちらがウソをつかない、約束を守るとわかれば、多少嫌でもガマンして治療を受け入れてくれるんです。そうするうちに、「なんだ、それほど痛くないな」「行きたくないけど、まあ仕方ないか」と慣れていってくれますね。

Vol.2に続きます。