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耳鼻咽喉科医から見た
医科歯科連携
不良な補綴装置が
口腔がんの原因に!?
頭頸部がんと
歯科との関係性を探る Vol2

2020/3/3 臨床ライブラリ

放射線治療後の抜歯による骨壊死

--口腔がんの治療はどんなことを行うのでしょうか? 手術療法が原則として第一選択となります。状況によって放射線療法や化学療法を単独あるいは組み合わせて行うことがあります。咽喉頭癌の場合、臓器温存を目的に化学放射線療法を選択される方もいらっしゃいます。ご存じの先生も多いかと思いますが、頭頸部がんの放射線治療後における照射野内の歯牙、あるいは照射の影響を受けていると考えられる歯牙の抜歯は、その後の一生涯をかけて、原則的に禁忌となります。理由は放射線性骨壊死が抜歯を契機に発症する可能性があるためです。そのため、長期的に予後不良の歯がある場合は放射線治療前にすべて抜歯することが臨床上、強く勧められています。 --抜歯は頭頸部腫瘍センターで行うのでしょうか? 基本的には当センターの歯科口腔外科の先生が予後不良の歯をリストアップして抜歯をするのですが、抜歯についてはかかりつけ医の先生にお願いしたいと希望される患者さんもいらっしゃいます。ところが、手紙を書いてお願いをしても、こちらの意図がうまく伝わらず、思うように抜歯していただけないことがあるんです。 --それはどういうことでしょうか? 例えば、当方では5本抜いて欲しかったところ、「今は抜歯をする必要はありません」ということで、3本しか抜いてもらえなかったり、場合によっては1本も抜いてもらえないで、こちらに帰って来てしまったりすることがあるんです。歯科の先生のお立場からすれば、患者さんのためにも残せる天然歯はすべて残したいというお考えがあることや保存的治療の重要性については我々も承知しています。しかし、骨壊死は一度、発症してしまうと治療が難しい疾患で、症例によっては口腔がんよりも悲惨な状況になり兼ねません。開業医の先生のほうで抜歯していただけなかった場合でも、後々、抜歯の必要性が認められる歯については、最終的には当センターの責任で改めて抜歯を行っています。

経過観察が命取りになることも

--一般的にがんは早期発見、早期治療が望ましいと言われています。口腔がんについても同じでしょうか? はい、同じです。特に口腔がんは頸部のリンパ節に早く、そして高頻度で転移するんです。また、扁平上皮がんのように組織型によっては進行が早いがんもあります。1~2ヵ月様子を見たことで転移してしまったり、進行して命取りになってしまったりするケースが少なからずあります。手術の侵襲を最小限に抑えるためにも、なるべく早い段階での専門的な検査、診断が望まれます。口内炎の治りが悪い、歯肉からの出血がある、しこりに触れられるなど、口腔がんと口内炎を見分けるポイントはいくつかあります。しかし、確定診断には病理組織検査をはじめ、総合的な判断が必要となります。また、多くの口腔がんを扱っている当センターにおいても、症例によっては迷うことやすぐには判断がつかないことがあります。そのため、一般歯科の先生が口腔がんを見逃さずにすべて発見するというのは難しいと思われます。それでも、早期発見、早期治療は何よりも有効になりますので、「何かおかしいな」「普段と様子が違うな」と感じた際には、気軽に高次の医療機関に紹介してもらえるとよいのではないかと思っています。

頭頸部がんにおける口腔ケアの重要性

--歯列不正や不良補綴装置が口腔がんの発がんと関わりがあるというお話でしたが、口腔内の衛生状態という点ではいかがでしょうか? 口腔がんの患者さんの口の中は汚れている印象がありますね。実際、歯周病や歯肉炎も危険因子として考えられているので、口腔がんの予防という意味においても日頃の口腔ケアは大切だと思います。 実は、当センターの耳鼻咽喉科医は常に歯ブラシを持ち歩き、非常によく歯を磨くんです。私自身も音波水流で歯垢を落とすソニッケアーを愛用するなど、口腔内の健康状態には気をつけています。おそらく口腔内の汚れが口腔がんと関係していることを直感的に理解しているからなんだと思います。
--先ほど、QOLを高めるために口腔ケアや口腔リハビリを組み合わせるというお話がありましたが、詳しく教えてください。 当センターでは治療方法によらず、頭頸部がんの全症例に対して、口腔ケアや口腔リハビリを実施しています。頭頸部がんの場合、発症部位の特徴から術後は飲み込みが悪くなり、嚥下性肺炎を起こすリスクが高まるんです。また、創部が唾液にさらされることで感染症のリスクも高まります。加えてもう1つの問題が化学療法や放射線療法による副作用です。口内炎や口腔内乾燥によって口腔内が爛れてしまうのです。これらのトラブルを防ぐためにも口腔ケアは欠かせません。 --頭頸部医療センターではいろいろな場面で医科歯科連携が進んでいるんですね。 そうですね。例えば、歯科の先生方が口腔ケアを行う中で、私たちが見逃していた真菌の感染などを見つけてくださることがあります。歯科と耳鼻咽喉科では扱う領域が重なる部分、そうではない部分、また得意なこと、不得意なことがそれぞれにあります。お互いの欠点を補いながら、今後もより安全でより確実な医療を提供していきたいと思っています。 --最後に、歯科の先生に望むことはありますか? 高齢化が進み、口腔がん患者などが増加するなか、耳鼻咽喉科と歯科が連携する機会はますます増えていくものと感じています。私自身も歯科の先生に手紙を書く機会は多くなりました。歯科の先生からも、少しでも疑問に感じることがあれば、相談を兼ねて気軽にご紹介いただけたらと思っています。そうした交流を積み重ねることで関係性も構築できると思っています。また、コミュニケーションを密に取ることで、歯科と耳鼻咽喉科がともに研鑽を積み、患者さんにとってより良い治療が行える環境を生み出せていければと思っています。開業医の歯科の先生方を『かかりつけ医』として頼りにされている患者さんは非常に多くいらっしゃいます。頭頸部がんの治療を行う際に歯科治療が必要となる場合、あるいは手術後の口腔ケアに関しても、「かかりつけの歯科の先生に診てもらいたい」と希望される患者さんは少なくないんです。だからこそ、今後もより深い連携を行っていければと思っています。手術や臨床を「極める」というのは難しいものです。しかし、私自身も患者さんのために、ますます努力を重ねていきたいと思っています。 耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携不良な補綴装置が口腔がんの原因に!?頭頸部がんと歯科との関係性を探る Vol1 耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携不良な補綴装置が口腔がんの原因に!?頭頸部がんと歯科との関係性を探る Vol2