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耳鼻咽喉科医から見た
医科歯科連携
不良な補綴装置が
口腔がんの原因に!?
頭頸部がんと歯科との
関係性を探る Vol1

2020/2/24 臨床ライブラリ

頭頸部がんの中でも近年、罹患者が増えているのが口腔がんです。最大の危険因子は喫煙と考えられていますが、昭和大学病院 頭頸部腫瘍センターの櫛橋幸民先生は「歯列不正や不良補綴物が多くの発がんと関わりを持っている可能性があります」と話します。このたび櫛橋先生には口腔がんと歯科の関連性、そして耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携のあり方についてうかがいました。

慢性の機械的刺激による発がん

--昭和大学病院の頭頸部腫瘍センターはどんな特徴の医療機関なのでしょうか? 当センターでは耳鼻咽喉科医と歯科口腔外科医とがタイアップしながら、頭頸部腫瘍全般の検査、診断、治療を行っています。また、口腔ケアと口腔リハビリテーションを組み合わせることで、よりQOLの高い治療を目指しており、日頃から歯科領域の先生方とは深い関わりを持っています。 --口腔がんの特徴を教えてください。 発生頻度は、がん全体の約1~3%で、決して多い数字ではありませんが、頭頸部がんの中でも口腔がんは近年、増加していて、年間約6000人が罹患し、約3000人が死亡しています。一般的ながんと同じく60代、70代の罹患率が高いのですが、20代や30代でも発症するケースが少なからずあります。また、口腔がんの中で舌がんの割合は約60%ともっとも多く、次いで多いのが30~40%を占める歯肉がんになります。最大の危険因子として考えられているのが慢性刺激です。なぜなら、当センターで経験する口腔がんの多くが慢性の機械的刺激が直接的、あるいは他因子と絡み合いながら発がんと深く関わっている可能性が否めないためです。

歯牙の鋭縁が原因による腫瘍の例

--慢性の機械的刺激というのはどういうものが挙げられるのでしょうか? 例えば、傾斜歯、う歯、不良充填物、不適合義歯の鋭縁などによって舌や歯肉、頬粘膜などを慢性的に刺激し、潰瘍となり、それがやがてがん化するのです。先日、舌に潰瘍があり、治療を繰り返しても痛みが軽減されないため、舌がんが疑われて来院した患者さんがいました。細胞診判定では異型細胞が認められるものの、悪性とは断定できないクラスⅢでした。歯を観察すると、尖っている歯牙が認められたため、歯科の先生に研磨してもらったところ、潰瘍はほぼ治り、現在は経過観察しています。このような例は珍しくなく、歯科が介入することでがん化が回避できるケースは多々あります。 不適合義歯が原因で生じた下顎歯肉癌の症例です。 右頬粘膜の早期癌です。 早期舌癌疑いで紹介になった患者ですが、歯牙研磨にて治癒した症例です。 --逆に言えば、歯科が介入しないことでがん化してしまうケースがあるということでしょうか。 当然、あり得ます。あるいは、歯科が介入していたとしても機械的刺激について見過ごされてしまい発がんするケースもあります。実際に、歯科の先生からの紹介で来院した患者さんの中にも、不良補綴物が原因で口腔がんになったと思われる患者さんがいらっしゃるときがあります。おそらく、歯科の先生方が想像している以上に、そうしたケースは多くあるのではないでしょうか。口腔がん患者増加の要因の1つは高齢化です。でも、それは高齢者の増加にともない、歯列不正の放置や不良補綴装置の使用が長期化したことが背景にあるのではないかと、臨床上の経験則ではありますが、感じています。

抜歯にともなう腫瘍の播種

--その他、歯科の先生が見落とす可能性がある、口腔がんに関する注意点はありますか? 厄介なのは歯の根元付近に発症した歯肉がんでしょうか。こうした部位で発症すると動揺歯になることがあり、歯科の先生ががんとは気づかずに抜歯してしまうことがあるんです。そうすると、腫瘍が播種するリスクが高くなります。最終的に縫合不全や治癒不全が起き、治りが悪いことから当センターのような施設に送られて来て、ようやくがんが発見される、そんなケースがあります。口腔がんは確かに発生頻度としては低いのですが、だからこそ、見過ごされて、発見自体が遅れてしまうケースも多いように感じます。 27歳女性の下顎歯肉癌症例です。 抜歯後の治癒不全で下顎歯肉癌だった症例です。 耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携不良な補綴装置が口腔がんの原因に!?頭頸部がんと歯科との関係性を探る Vol1 耳鼻咽喉科医から見た医科歯科連携不良な補綴装置が口腔がんの原因に!?頭頸部がんと歯科との関係性を探る Vol2