ゾウを見れば、まず巨大な牙が目にはいる。 アフリカゾウのオスでは3mにもなる。(図1) これで樹木の皮を剝いだり、地面を掘り岩塩をなめる。 また、闘争の道具にも用いられる。 牙は、根尖が開いている(無根歯)ため一生伸び続ける。 わずか1年で17cmも伸びるという説さえある。 ところで意外に思われるかもしれないが、牙は犬歯ではなく側切歯である。 この理由について説明しよう。 多くの哺乳類では、上顎骨(前顎骨)の前方に切歯骨がある。 もちろんヒトにも存在する。 これは胎生期の一次口蓋の名残である。 しかし、ヒトでは頭骨の短頭化に伴い融合して上顎骨となる。 そして切歯骨から萌出するのが切歯、上顎骨からが犬歯や臼歯である。 従って,ゾウの牙は切歯骨から萌出するので側切歯なのだ。(図2) 次に口元を見ると、太くて長い鼻と下唇が目につく。 しかし、上口唇が見当たらない。 実は、鼻は上口唇と一体化したものだ。(図3) 鼻には,ヒトと同様に2つの鼻孔がある。 嗅覚が優れ、50m先の5mmのバナナのにおいを感じるという。 誤解されがちであるが、鼻から水を飲むことはできない。(図4) 間違って喉頭に流れ込めば、むせてたいへんだ。 そこで鼻孔から水を吸い上げ、口に入れて飲む。 もちろん、ゾウの赤ちゃんも口で乳首をくわえ母乳を飲む。 さて,鼻には骨がなく約10万もの筋線維からなる。 鼻は,巨大な筋肉の塊だ。 しかも,手の代わりにもなる。 人間の腕くらいの木の枝なら簡単にへし折るという。 さらに、鼻の先は三角にとがり(指状突起)、まるで指の様に動かすことができる。 こうしてゾウは、地面の草を引き抜いたり,樹木の枝葉を器用に引きちぎって食べる。(図5) ところで、これは某動物園の食事風景。 上に吊ったエサを、鼻を伸ばして捕っているではないか・・。(図6) どうして、このような与え方をしているのだろう? そこで飼育員に聞いてみた。 すると、これは“鼻の筋トレ”だという。 エッ~ツ! ゾウの“筋トレ”!? 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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