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見込み集患数が分かる「診療圏」とは?歯科医院の開業における正しい活用方法を解説!

見込み集患数が分かる「診療圏」とは?歯科医院の開業における正しい活用方法を解説!
見込み集患数が分かる「診療圏」とは?歯科医院の開業における正しい活用方法を解説!
歯科医院の開業時に必ず行う準備が、見込み患者数を推測するための診療圏調査です。
診療圏調査を基に最適な開業地を判断すること可能となります。

今回は、診療圏や調査の方法、競合歯科医院の分析、診療圏調査の注意点について解説します。

診療圏とは

歯科医院の経営で重要な要素のひとつとして挙げられる項目が、歯科医院に通う人々にかかわるデータである「診療圏」です。 約500m圏内を「一次診療圏」、約1km圏内を「二次診療圏」と呼びます。 診療圏調査では、診療圏内にいる人々の数、性別、年齢、生活の動線、収入などに加え、競合の歯科医院を調べます。 さらに、データだけでなく、実際に現場へ訪れて開業予定地周辺を自分の目で確かめます。 実際の人通りや時間帯による変化、日当たり、車道の交通量、商業施設など、さまざまな観点で調査しましょう。 診療圏調査には、約1ヶ月を要すると言われています。 予定していた開業地に問題があれば、他の候補地も探る必要があります。 開業地の重要性については、別の記事をご覧ください。 【関連】歯科医院を開業するなら「立地」が大切!土地の種類や選び方を解説! 患者さんが通院する歯科医院を選ぶ際には、治療したい診療科目のある歯科医院を探すことは当然ですが、それ以外の要素として、特に自宅や勤務先から歯科医院までの距離がポイントとなります。 いくら医療技術の高い歯科医院であっても、通学・通勤や買い物といった日常生活のエリアから遠いと通えません。それよりも日常生活の範囲内で通える歯科医院が選ばれるでしょう。 ビジネス視点を持ったマーケティングの一環として、診療圏調査は重要であると言えます。

診療圏調査のシミュレーション方法

より詳しい診療圏調査のシミュレーション方法について解説します。

推計患者数

診療圏調査の中で、「推計患者数」は最も重要です。 推計患者数とは1日あたりの見込み集患数のことで、この値が大きいと診療圏における医療ニーズが高く、小さければ医療ニーズが低いと考えられます。 算出方法:診療圏内の人口×受診率÷(競合医院機関数+1) - 診療圏内の人口:国勢調査などのデータを参照しましょう。 - 受診率:厚生労働省などが発表している都道府県別・地域別のデータが参考になります。 - 競合の歯科機関数+1:現在の歯科医院数に自身の歯科医院を加えた数です。 推計患者数を自ら計算することも可能ですが、開業支援を行う事業者に依頼することもできます。 ただし、診療圏調査の結果には、事業者による精度のばらつきを考慮し、推計患者数やリスクを正しく算出しているかをチェックしましょう。

日常行動線と分断要因

一次診療圏や二次診療圏における診療圏調査は、範囲内の受診率を把握できますが、実際の人々の日常行動線まで考慮していません。 地域には、住民の多くが通勤や通学で日常的に利用する道路や公共交通機関、施設などがあり、それらを結んだ動線を「日常行動線」と呼びます。 日常行動線を外れると、潜在的な患者数が多いにもかかわらず集患につながりにくくなります。 「仕事帰りに通える」「買い物のついでに通える」といった、住民の日常行動線に沿ったクリニックの立地選定が望ましいです。 日常行動線を外してしまう要素に「分断要因」があります。 分断要因とは、河川や中央分離帯、鉄道路線、高架橋、土地の高低、坂といった住民の日常行動線を分断する要因のことです。 例えば、土地の高低や坂の存在は、高齢者の患者さんや徒歩で来院される患者さんの妨げとなります。 物件の前に交通量の多い幹線道路があっても、中央分離帯が反対車線からのアクセスを妨げる原因となるでしょう。 分断要因を踏まえた診療圏は、基本的にきれいな円ではなく、いびつな形となります。 分断要因は、地図上の道路や河川を見ただけでは判断できません。 鉄道路線で分断されていても、十分な人通りのある開業地もあるでしょう。 実際に周辺地域に足を運ぶことでようやく理解できるため、数値だけに頼らない調査も最適な開業地選びには欠かせません。

競合の歯科医院の分析方法

競合の歯科医院を分析する方法について、3つのポイントで解説します。 診療圏マップ内にある競合の歯科医院を調べてみましょう。

得意な診療科目

競合の歯科医院が得意とする診療科目について分析しましょう。 自院と同じ診療科目を得意としている場合には、患者さんの取り合いになる可能性も考えられるためです。 歯科医院の公式ホームページなどで、どの領域に力を入れているのか確認してみてください。 また、診療科目を一つの治療に特化していると、他医院との差別化になるでしょう。

サービスの質

患者さんは、病院を医療技術だけで判断しません。 スタッフの接客や待ち時間の長さ、プレイルームの有無、患者さんのプライバシー配慮など、総合的なサービスの質で判断します。 患者さんの口コミなどを参考に分析しましょう。 実際に通っている患者さんに話を聞いてみるのも一つの手です。

通いやすさ

競合の立地や広告、宣伝といった側面から通いやすさを分析しましょう。 立地は、周りの人通りの多さやアクセスの利便性といった観点から判断できるほか、前述の日常行動線や分断要因からも推測できます。 広告や宣伝では、どの広告媒体にどのくらい予算をかけているのかもチェックしましょう。 患者層によって、インターネットや看板、ポスティングなど、効果的な広告も変わります。 差別化戦略の競合分析手法である「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」については、下記の記事をご覧ください。 【関連】歯科医院の差別化戦略をわかりやすく解説!必要な要素は競合分析と自社経営?

歯科医院の診療圏調査における注意点

失敗しない診療圏調査の注意点について解説します。

競合調査をしない

前述の通り、競合調査は重要であるため、診療圏内の歯科医院数だけで判断することは避けましょう。 得意な診療科目、サービスの質、通いやすさといった観点からの調査が大切です。 診療圏で有名なクリニックや先生がいるなら、より詳しく調査を行いましょう。 また、クリニックの開設者が高齢者なら、いずれ引退を迎え競合から外れるかもしれませんが、この場合は継承者の存在を必ず確認しましょう。

地域の将来性を知らない

診療圏調査では、基本的に過去のデータを扱います。 ただ、開業後5年10年と経営していくためには、地域の将来性についても把握しておく必要があります。 都市機能や事業所、工場の移転などによって患者数が増減するため、診療圏における患者数の今後の増減予測を調べておきましょう。 行政のホームページなどで確認できる「都市開発計画」や、地場産業の動向などを参照してください。 また、人口の調査時には夜間と昼間で人の動きが変わることにも注意しましょう。 実際に現地に足を運び、夜間と昼間での人通りの変化を観察してみることをおすすめします。

事業者の報告を鵜呑みにする

診療圏調査を行う際、公開されている各種データを基にレポートを作成することは可能ですが、時間や労力がかかるため、外部の事業者に費用をかけて依頼する方もいるでしょう。 他の事業者から受けた診療圏調査の報告を、鵜呑みにすることは避けたほうがベターです。 開業支援を行う事業者は当然、「診療圏調査の結果を基に、開業を進めて契約を結んでもらいたい」と考えています。 そのため、中には開業に有利なレポートを出して、開業を促す事業者もいるかもしれません。 数値に嘘はなくとも、診療圏や競合の設定で見せ方を変えられます。 事業者に依頼する場合には、正しく土地の調査を行い、経験やロジックに基づいた結果か冷静に判断しましょう。

入念な診療圏調査を

開業してから「見込みの集患数とまったく違う」と分かっても、その時点ではすでに手遅れです。 本日のポイントを踏まえながら、慎重で確実な診療圏調査を行うことをおすすめします。 「医師はお金儲けではなく、医療のために尽力すべき」という考えをお持ちの方もいるかもしれません。 しかし、患者さんに医療を提供し続けるためには、ビジネスの視点を持っておく必要があります。 利益が出なければ、スタッフの給料を払うことができません。 赤字が続けば廃業になる恐れもあります。 また、より良い医療を提供するため、新しい設備や人材育成にも費用はかかります。 患者さんやスタッフのために、ビジネスの視点を持った経営を目指しましょう。 【歯科開業支援コンテンツ】OneToOne Club 来院患者分析レポート

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