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スウェーデンとアイルランドで学んだ人生の旅の終わり
Vol.2 スウェディッシュ・マザー

2020/3/2 デンタル〇〇デザイン

スウェーデンの指導教授には、留学中にスウェーデンのいろいろな歯科医院を見学させてほしいとお願いしていました。そこで紹介された歯科医師が、北極圏にある人口5,000人ほどの町に住む元同級生で、指導教授は心憎いほど最適な人選をしてくださいました。その元同級生は、イエテボリ出身者ですが、内科医の旦那様が僻地医療をすることを機に北極圏のその町に移り、素敵な家庭を育んでいる方でした。聡明で、どんな逆境の時にも驚くほど冷静で、そしてこの上なく温かいハートを持った女性で、その指導教授も「学生時代から、彼女はまさに"マザー"」と評していました。


<見学に行った公立歯科医院の待合室>

歯科医院だけを見学させてもらえると思いきや、到着すると最初から歓待を受け、夜はご家族と親戚を交えて特別なディナーを催してくれ、昼は雪国ならではの様々なイベントに誘ってくれました。日本人にはオーロラが人気だと言っていたので、夜中にずっと気にして空をチェックしてくれていたようで、オーロラが出ると、そっと私を起こしに来てくれました。まさに、お母さん。その後も交流が続き、私がどこに住んでいても、彼女から毎年、誕生日とクリスマスにプレゼントが送られてきました。


<真夜中でも日が沈まない北極圏の白夜>

ある年、全身に転移したがんが見つかったという連絡がありました。その後に彼女に会うと、ご本人もご家族も友人たちも全く変わらない様子だったので、私も何も気を遣うことなく普通に話をしました。友人の一人は、「彼女が普通なので、自分たちも普通に接することができて嬉しい」と言っていました。私は、彼女の普通さに心から感銘を受け、自分ももし余命宣告を受けるような病気に罹ったら、こういう風になりたいと思いました。


<スウェーデンの夏至のお祭り>

5年後の12月上旬、ご家族から、クリスマスまでもたないかもしれないので来てほしいと連絡があり、飛んでいきました。とても悲しい旅でしたが、計画性に長けたスウェーデン人らしく、ぎりぎり皆んなと同じ物を食べられ、笑って話をできる状態で、一足早いクリスマスディナーが実現しました。そして、2週間後に家族に見守られながら天国に召されました。


<12月の北極圏は白銀の世界です>

5ヶ月後、私の誕生日が来て、「ああ、もうイングリッドからの誕生日プレゼントは来ないんだなあ。」と寂しく思って家路につくと、ポストに彼女からの小包が届いていました。その時の喜びを何と表現したらいいでしょう!天国からプレゼントが送られたかのようでした。同封してあったご家族からの手紙には、生前、この日にこれを私に送るように言われていたそうです。


<イングリッドが眠るお墓>

他の友人にもそのようにプレゼントを用意してくれていたとのこと。目の前で自分の人生が終わろうとしている最期の時に、何ヶ月も先の友人たちの誕生日のことを計画してくれていたのですね。一時でも彼女がまだ生きていると思えた幸せなサプライズのおかげで、寂しい気持ちが失せ、感謝の気持ちで涙が溢れました。何があっても同じ調子で愛情を注いでくれたスウェディッシュ・マザーは、今もそのまま穏やかに見守り続けてくれている気がします。

次回に続く
「スウェーデンとアイルランドで学んだ人生の旅の終わり」Vol.3 無条件の愛