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pd普及の会で歯科医師たちに
「紙芝居」の活用を提言

2020/4/22 デンタル〇〇デザイン

ーー3月1日、メルパルク京都にて「pd普及の会」の定期総会が行われました。歯科医師をはじめとする歯科業界関係者が30名ほど集う中、「子どものための歯科とは?」シリーズでもご紹介した、紙芝居屋さんガンチャンの紙芝居を上演しました。「子どもの予防的矯正の普及」のために紙芝居をつくり、「全国の歯科医の皆さんにも活用してほしい」と語る小佐々
晴夫先生のお話をうかがいました。

ーー「pd普及の会」は、2002年に設立された「NPO法人ジーピープログラムジャパン」が主催する歯科診療者の集まりです。同組織では、歯科医の身体的な負担を軽減する「pd (proprioceptive derivation)」スタイルの診療を、広く歯科医師や歯科衛生士だけでなく一般市民にまで啓蒙する活動を行っています。紙芝居「歯ならび歯たろう」の上演に先立ち、小佐々先生からスピーチがありました。


皆さんもご存知のとおり、pdスタイルの診療を世界で初めて提唱したのは、アメリカ人歯科医師のダリル・レイモンド・ビーチ先生です。私は約50年前から、ビーチ先生とともに長い間、日本におけるpd診療の普及活動に携わってきました。
「人間の持っている固有感覚(pd)に基づくケア」を理念とするpd診療は、患者さんに診療台に寝ていただき、歯科医が重力に逆らわない無理のない姿勢で治療を行うことで知られています。しかしそうしたスタイルだけでなく、pd診療のもっとも重要な根本には、「ヘルスケア・ゼロ(HC-0)」という考え方があります。これはすなわち、「歯を削ったり詰めたりする治療を必要とせず、定期的なチェックだけで済む状態」を保つことが、理想の歯科診療であるという考え方です。

そのための予防診療として、歯磨きや定期検診、う蝕や歯周病などのケアの重要性は、かなり世間に広まってきました。しかし、今なお周知が進んでいないのが、「子どものときからの不正咬合の予防」になります。
実は、ビーチ先生は不正咬合については何も言及されておられません。しかし私は、長年ビーチ先生の側近として仕事をしてきたことから、「ビーチ先生なら不正咬合の予防についてこう考えられたであろう」と想像することができるのです。

ほとんどの子どもは、きれいで健康な歯列が生える可能性を持って生まれます。幼少期からきちんとメンテナンスをし、歯列が乱れる原因となる生活習慣を持たなければ、正しい歯ならびの健康な歯列のままで一生を過ごすことができるはずです。 しかし現在、子ども10人のうち7人から8人には不正咬合が見られます。この数字は、E幼稚園やR小学校の歯科検診を長年続けているなかで、実際に自分の目で確認したデータです。一見きれいにならんでいても、乳歯から永久歯に生え変わったときに不正咬合になる子どももたくさんいます。

こうした現実に対して、歯科医や矯正医はどんな対策を行うべきなのでしょうか。現在は不正咬合になってから結果処理として矯正治療を行うことが普通ですが、保険診療ではないため、多くの費用がかかります。また歯の矯正には、1年以上の歳月も必要です。「ヘルスケア・ゼロ」を理想とするビーチ先生ならば、不正咬合についても「子どものときから予防することがベスト」と考えるはずです。

不正咬合には、いくつかの原因があります。その原因を取り除くことで、費用をかけずに予防的矯正措置を行うことができます。予防をすすめるためにも、子どもの不正咬合と生活習慣の因果関係というものを、広く世に知らしめること、それも子を育てる一般の親御さんに分かっていただくことが大切だと思っています。私が今回、モリタさんからの打診を受けて、紙芝居づくりに協力をしたのもその思いがあるからです。

子どもの不正咬合は、遺伝的な要素があることも事実ですが、95%は後天的な生活習慣の結果として発生します。不正咬合を起こす原因は、機能的な問題(舌の癖、ポカン口、口呼吸、片側噛みなど)、姿勢の問題(うつぶせ寝、頬杖、肘づえ、側湾、猫背など)がありますが、その多くは日本人のライフスタイルの変化に起因しています。食事の西洋化による咀嚼の減少、椅子やソファなどの普及によって、正座をしなくなり姿勢が乱れたことなどが、子どもの不正咬合を増やす結果となっているのです。


子ども時代から不正咬合を放っておいたまま成長すると、やがて全身的な問題が生じてきます。高齢になってからの不定愁訴や、運動機能の低下、うつ病などの心の問題も、不正咬合が引き起こしていることは珍しくないのです。人間は15歳ぐらいで骨格的な成長が止まり、筋肉などの成長も20歳ぐらいでピークを迎えます。つまり、そこまでに歯を含めた健康を確立し、あとはそれを数十年間維持することが、極めて大切なのです。

以上のようなことは、歯科医の方々であればご存知だと思います。ただそれが、一般の人々にも伝わっているかといえば、まだまだ啓蒙が足りていないのが日本の現状だと思います。そして不正咬合を予防するための情報を伝える相手は、親だけではいけません。子どもたち自身に、「良い歯並びをキープするためのライフスタイル」を伝えていく必要があるのです。
本日皆さんに見ていただく、紙芝居屋のガンチャンとともにつくった紙芝居「歯ならび歯たろう」は、そのような考え方に基づいて制作されています。子どもたちにどうすれば伝わるか、それが子どもの歯の健康につながるか、考える中で最適のメディアとして紙芝居を選びました。子どもたちの歯のヘルスケアを「ゼロ」にするために、ぜひこの紙芝居を、皆さんの医院でも活用してもらいたいと思います。

ーー小佐々先生の挨拶のあと、紙芝居屋のガンチャンが「歯ならび歯たろう」の上演を行いました。



※子どもたちを前に上演した模様はこちらの記事からご覧ください。



ーー小佐々歯科では、さっそく「歯ならび歯たろう」の紙芝居をラミネート加工し、一枚ずつ後ろにセリフを書いて、子どもたちに見せているそうです。

「この紙芝居をうちのスタッフも活用して、診療を待っている子どもたちに楽しそうに見せています。学校診療などのときに、低学年の子どもに予防診療の大切さを伝えるためのツールとして活用してもらってもいいでしょう。ぜひ皆さんもこの紙芝居を有効に活用してもらえればと思います」と小佐々先生は語ります。

ーー現在、小佐々先生とDLDでは、新しい紙芝居の制作の準備を始めています。そちらも完成次第、当サイトで発表・ダウンロードできるようにいたしますので、ぜひご期待ください。

紙芝居「歯ならび歯たろう」のPDFダウンロードはこちら
「歯ならび歯たろう」のストーリーPDFダウンロードはこちら

「歯ならび歯たろう」
小佐々晴夫先生監修

小佐々歯科診療所
http://www.kosasa.jp/