子どものための歯科を考える、本シリーズ。Vol.3では、小佐々歯科診療所の小佐々晴夫先生に、「子どもの不正咬合を防ぐための紙芝居」の制作に関するアドバイスをいただきました。それを受けて、紙芝居屋の岩橋範季さん(通称ガンチャン)が、制作を手がけ、その紙芝居がいよいよ完成!神戸市灘区にある、むらまつ歯科のご協力を得て、子どもたちを前に上演を行った様子をレポートいたします。
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記事の後半でガンチャンの紙芝居の様子を動画でご覧頂けます。
■子どものこころをグッとつかむ紙芝居の力
神戸市灘区、阪急六甲駅から坂道を登って10分ほどのところにある「むらまつ歯科」。同クリニックには、近隣の幼稚園、小学校、中学校に通うたくさんの子どもたちが治療や定期検診で通院しています。
今回、紙芝居を見るのは、近所の小学校に通う小学3年生の男の子5人、1年生の女の子1人です。椅子に座りながらわいわいガヤガヤ、元気にお喋りしている子どもたち。その前に、紙芝居屋のガンチャンが、楽しげな音楽に乗せて登場しました。
まずは場を温めるために、紙芝居を使って「歯のクイズ」を行います。
ガンチャン:
「虫歯のもととなる酸を発生させない、天然の甘味料といえばなんでしょうか〜。①キリシトール ②リキシトール ③キシリトール ④オシリトール」
子どもたち:
「あはは、オシリトールやって」「天然素材って何や」「わかった!キシリトール!」
ガンチャン:
「せいか〜い。あたった子には、シールあげよな。じゃあ次の問題です。健康な歯ならびのために、良い呼吸の仕方は、次のどれでしょうか? ①口呼吸 ②鼻呼吸 ③えら呼吸 ④しり呼吸」
子どもたち:
「しり呼吸なんか無理やろ(笑)!」「2番の鼻呼吸!」
正解した人には、ガンチャン特製のオリジナルシールがもらえるとあって、みんな勢い良く手を上げます。
■紙芝居「歯ならび歯たろう」で子どもたちに伝えたいこと
場の雰囲気もすっかりほぐれたところで……、ガンチャンが拍子木をカチカチと勢いよく鳴らし、いよいよ本編の紙芝居の始まりです。
今日のお話は、ジャジャーン! 「歯ならび歯たろう」です
ガンチャン:昔々のお話です。あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。ある日のこと、お婆さんが川で洗濯をしています。
さあ、ここでまた問題です。山で芝刈りをしていたのは、誰でしょうか?
子どもたち:はいはいはい! お爺さん!
ガンチャン:ざーんねん! 山で芝刈りも・・・お婆さんがしていました〜。
「えっほえっほ、今日も頑張るぞー!」
なんでどっちもお婆さんがしているかというと、お爺さんは・・・家で元気なく寝ていました。なぜなら、
「ワシの歯並びガタガタで、歯もボロボロじゃ〜」。
そう、歯が悪すぎて、元気がなかったからです。
そんなある日、
「ハハハハハハハハハハ!」
どこからか高らかな笑い声が聞こえ、
「ジャジャジャジャーン!」
突然、奇妙な物体が飛びだしてきました。
「トゥース!俺っちの名前は歯ならび歯たろう、よろしくな!」
「どっひゃー、たまげた。変なのが来よったぞー」
「歯の化け物じゃー」
「さっそくだけど、お婆さん。俺っちと一緒にタイムトラベルに出かけよう!」
「この歯型タイムマシーン『タイム歯シーン』で!」
「お爺さんが子どもだった、歯の悪くない時代へタイムスリーップ!」
歯ならび歯たろうとお婆さんはお爺さんが子どもだった時代へタイムスリップしてきました。
「あれがお爺さんが子どもの頃住んでた家だ、さっそく見てみよう」
「いたいた、子どもの頃のおじいさん。寝てる。また横向きに寝てるな。寝ぞうが悪いなー」
しかも、いつも頬杖ついてるなあー。猫背で姿勢も悪いぞー。
口もポカーンとあいている。
「うっわー・・・ひっどいなー・・・このままじゃまた、歯ならびボロボロや」
「おいらにまかせるんだワン!!」
そこへムキムキマッチョの犬が登場しました〜!
「ワンワンワワワンワーン」
お爺さんが頬杖をついたら、犬はすぐ吠えます。
「ひえー!もう頬杖つかないよー」
「猫背解消、今度は僕に、まかせるニャー」
今度は、ムキムキマッチョの猫が登場しました!
お爺さんの姿勢が猫背に丸まっていると、
「にゃにゃにゃんにゃにゃにゃん」
猫必殺、猫背解消スペシャル炸裂。
「あたたたた、猫背はもうこりごり」
「おまかせあれあれ」
ポカン口なおし隊登場!
赤 → 歯磨き矯正レッド
黄色 → 咬合矯正イエロー
ピンク → 呼吸矯正ピンク
紫 → ベロベロパープル
みんなで一緒に、「あいうべ体操」をしよう!
一緒に楽しく、あいうべ体操をやるぞ〜。
大きく口をあけて「あー」
口を横に開けて「いー」
口をとがらせ「うー」
ベロを伸ばして「ベーーー」
ポカン口と、悪い寝ぞうもこれでおさらばだ〜。
「頬杖つかない、正しい姿勢、あいうべ体操、毎日続けるんだよ〜」
「わかりました〜」
「さよーならー」
歯ならび歯たろうとお婆さんは、子どもの頃のお爺さんと別れて、元の時代に戻っていきます。
「元の時代へタイムスリーップ!」
さあ、お爺さんはどうなってるかな。
子どもたち:歯ならび良くなってる!
元の時代に帰ってくると、そこに1人の人影。
「おかえり、婆さん」
「その声は!もしかして……」
「お爺さ〜ん!」
なんということでしょう。お爺さんがイケメン、細マッチョボディに大変身してました!
子どもたち:あははは、めっちゃマッチョになってる。
「お爺さん、素敵〜」
そして、それから数年後。
お爺さんとお婆さんの間には、桃太郎という可愛い子どもが産まれ、
犬、猿、キジのペットと一緒に、健康な歯で楽しい毎日を暮らしました。
めでたしめでたし。カチカチカチ。
ー実際の紙芝居の様子はこちらー
紙芝居を見た子どもたちに、歯ならび良くするのに、どうすればいいかを聞いてみました。
子どもたち:
「頬杖しない、猫背にならない、ポカン口をしない!」
「野菜をたくさん食べる!」
「それはなかったやろ笑」
どうやら、みんなきちんと不正咬合を防ぐための生活上の注意について、紙芝居で学んだようです。
■紙芝居上演の場をご提供いただいた村松先生のご感想
今回、紙芝居上演会の場をご提供いただいた、むらまつ歯科の村松学先生に、ガンチャンの紙芝居についてのご感想をいただきました。
やはりプロの紙芝居屋さんは、プレゼンテーション力がすごいですね。子どもたちの心を一瞬にわしづかみにするのを見て、感心しました。私は、12〜13年ほど前から、近隣の小学校の歯科検診を毎年担当していますが、最近、歯ならびに関する親御さんからの相談が非常に多いと感じています。
実際、食生活の変化などで、歯が顎に入り切らなかったり、反対咬合のお子さんは増えています。「子どもの将来の歯ならびが心配だけれど、矯正治療は費用もかかるし、敷居が高い」と感じている方は少なくありません。また、子ども時代に将来に備えて矯正をしても、数年後に、後戻りしてしまうお子さんも沢山います。そうした不正咬合や後戻りを防ぐためにも、今日の紙芝居のテーマである口腔筋機能療法(MFT)や、姿勢を正しくすることに、子どものときから気をつけるのはとても大切です。
今日、紙芝居を見た子どもたちは、「頬杖や猫背、ポカン口はダメなんだ」というメッセージが刷り込まれたと思います。
40代、50代の大人でも、正しい歯ならびが口腔衛生だけでなく、全身の健康にとっても大切であることを知らない方は、まだまだいます。歯ならびや歯の健康に良いことを、子どもたち自身が理解できるやり方で伝える紙芝居という手法は、とても有効だと感じます。
■紙芝居「歯ならび歯たろう」をぜひご活用ください
DLDでは、今回の紙芝居を、PDFで無料ダウンロードできるようにして、全国の歯科医院の皆さまにご利用いただくことにいたします。
ぜひ紙芝居『歯ならび歯たろう』を、子どもたちの不正咬合防止にお役立てください。
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「歯ならび歯たろう」
小佐々晴夫先生監修
小佐々歯科診療所
http://www.kosasa.jp/