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イートロス医学のススメ第2回:COVID-19について

イートロス医学のススメ第2回:COVID-19について
イートロス医学のススメ第2回:COVID-19について
皆さんこんにちは。米永一理(よねなが かずみち)です。
COVID-19の影響で、イートロス医学講座もひっそりとした船出となりましたが、先生方はいかがお過ごしでしょうか。

COVID-19の渦中にあらためて思い知らされているのが、「的確な情報」の重要性です。筆者も臨床医として、現時点での印象をさまざまもっていますが、それが「正しい情報」となるまでには、今しばらく時間がかかるでしょう。

そこで、今回は「医科歯科連携の実際」をお話しする予定でしたが、急遽予定を変更して、「COVID-19について」今わかっている情報をまとめます。
(*本文は2020年4月13日に筆者が把握している範囲で執筆しています。いずれもまだ報告途中の論文や学会報告からの引用であり、COVID-19に関しては今後情報が変わる可能性がおおいにあります。情報発信を優先しているため、確定情報ではありません。正しい情報は、学会ホームページなどで随時ご確認ください。また本文はあくまで歯科医療関係者向けに記載しています。一般向けではありませんのでご了承ください)

現在わかっていることは、感染から発症までの平均が約5日、発症から診断(PCR陽性)までが平均約6日、診断からPCR陰性までが平均16日ほどのようです(計30日弱)。感染者のうち60%が男性で、20歳~59歳の感染が70%弱、60歳以上の感染が30%弱です。そして、60歳以上であるか、糖尿病、高血圧、脂質異常症、がん、心血管疾患などであると肺炎、人工呼吸器管理、死亡のリスクが上がります。無症候病原体保有者がいることが感染拡大の一因となっていますが、無症候であっても約50%がその後発症し、そのうち5%程度が人工呼吸器管理となっています。一方で、死亡者は人口100万人あたり、スペインが約350人、米国が約60人なのに対し、日本は0.8人とされています。クラスターという言葉がよく出てきますが、これはCOVID-19の特徴的な感染形態によるところがあります。どういうことかというと、多くの感染者が誰にも感染させないのに対して、一部の感染者が、多くの人に感染させるため、クラスターを形成してしまうのです。さらに厄介なのは、無症候のときから感染源になる人がいることです。よって、本人が感染を自覚することなく感染を広げている可能性があるわけです。

臨床所見を見ていると、自覚症状がない、または感冒症状程度の軽症で軽快する方が多数です。一方、重症化する方は、バタバタと悪化し、肺がまるで凍っていくように肺炎像がサーっと広がっていきます(ICE Lung様でありこれを臨床的にはCrazy paving patternといいます)。前述のように、基礎疾患がある人は重症化しやすいですが、そう言ってしまうと、少し年配であれば多くの方が基礎疾患のある状態であり、先生方の多くもリスクがあることになるのではないでしょうか。一方で、COVID-19は感染制御下におけている場合には大規模な流行もつくらないこともわかってきており、盛んにいわれている3密(密閉・密集・密接)を避け、一般的な感染対策と、自身の免疫を下げない対策をしていれば、爆発的な感染拡大は防ぐことができそうです。

本稿で申し添えておきたいことは、現在COVID-19の最前線で多くの医療従事者が懸命に頑張っています。そして事実として、COVID-19を中心に診療している(感染対策をきちんとしている)医療従事者の感染率が高いわけではないにもかかわらず、一部医療者が感染者扱いを受ける風潮もあり、精神的にも追い詰められてきている方もいます。こういう時だからこそ、それぞれができることを最大限行い、お互いを思いやる心がほしいものです。

最後に歯科診療のご参考として、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の医療機関でのCOVID-19感染対策に関する記載から、医科の外来診療に関する箇所を抜粋し、まとめます。
・来院前に呼吸症状があるか確認
・外来トリアージステーション設置を検討
・患者に咳エチケットを実行させ、手指衛生環境を提供
・換気の良い、分離された場所で診察
・待機的手術や通常の外来診察は延期

今後の見込みですが、個人的見解も含めて述べると、理論上はワクチンや治療薬ができるか、ある一定数が既感染するまでは落ち着くことがなく、医療崩壊させないためにも、爆発的な感染を防ぐことが重要となります。

今回は、COVID-19のお話しをしました。今こそ医療職として、自分たちができることは何なのか考えたいものです。

今回の一言です。

「正しい情報がみんなを支える」

次回はイートロス医学を進めていくための実践として、今度こそは医科歯科連携の実際をお届けしようと思います。

ではまた来月お会いしましょう。ありがとうございました。

著者米永 一理

東京大学大学院医学系研究科イートロス医学講座特任准教授

略歴
  • 鹿児島大学歯学部・東海大学医学部卒業、博士(医学)(東京大学)。
  • 東京大学医学部附属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科助教、
  • 十和田市立中央病院総合内科医員、
  • JR東京総合病院総合診療科医長・地域医療連携相談センター長、
  • 十和田市立中央病院附属とわだ診療所院長を経て現職。
  • 現在、日本大学歯学部兼任講師、十和田市立中央病院総合内科兼任
  • 日本内科学会認定医、日本抗加齢医学会認定専門医、
  • 日本医師会認定産業医、日本再生医療学会認定医、
  • 日本口腔外科学会認定医、日本口腔科学会認定医、
  • 日本口腔内科学会指導医、口腔医科学会指導医/専門医、認知症サポート医、
  • 医師臨床研修指導医、歯科医師臨床研修指導歯科医など
米永 一理

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