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“先生、箸が折れちゃった!”

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口腔機能発達不全症 その6
“先生、箸が折れちゃった!”

口腔機能発達不全症 その6<br>“先生、箸が折れちゃった!”
口腔機能発達不全症 その6
“先生、箸が折れちゃった!”
ある保育園での話、新しく2歳の女児が入園した。
初めての給食の時、数名の友達と机を囲んで座り、"いただきます~!"の合図で、友達は一斉に食べ始めた。
しかし女児は、みんなの食べる様子を見ていたが、急に泣き出したという。



その理由・・。
A保育士は、"保護者がいないことに気がついた"と考えた。
B保育士は、"給食が家庭の味とは違う"と考えた。
C保育士は、"ピーマンなど苦手な食材のせい"と考えた。

しかし、これらはすべて違っていた。
この理由、この女児は"食べ物を前にし、どうして良いのかわからなかった"のだ。
どうやら家庭では、いつも保護者に食べさせて貰っていたらしい・・。
そう!自分でスプーンを持って、食べた経験がなかったのである。



そこで保育園では、食べ物を手で持たせ口に運ぶことから教えたという。
最近このようなケースは、珍しくないらしい。



現在、保護者が"離乳食を口に入れ、食べさせてあげる"ことが普通の与え方になっている。
手づかみ食べをすると、"周りが汚れる"と言ってさせることもない。
"何をどれだけ食べさせるか"に気を取られ、それが愛情だと勘違いしている。
これでは、食べる意欲が育たない。
"噛まない"・"いつまでも飲み込まない"などの背景には、育児環境の変化も大きな要因である。

さて先日、ある保育所に食べる様子を見に行った。
5歳児の食事風景を見学していると、後ろで"パチン"という音がした。
振り返ると、女児が「先生!箸が折れちゃった」と言う。



その日の献立は、"レンコンのはさみ揚げ"。
レンコンの間に、ひき肉をしっかりはさみ揚げたものである。

ふつう我々は、まず箸ではさんで前歯でかじって食べる。
しかしこの女児、その方法がわからない。
そこで、プラスチックの箸を1本ずつ両手に持ち、レンコンの穴に入れて引っ張った。
これが折れた原因だ。
喉につめないよう・・食べやすいよう・・小さく切って与える。
この女児は、前歯で咬みきることを知らなかったのだ。
これでは、口の機能が育つわけがない。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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