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イートロス医学のススメ第6回:COVID-19からイートロスまで

イートロス医学のススメ第6回:COVID-19からイートロスまで
イートロス医学のススメ第6回:COVID-19からイートロスまで
皆さんこんにちは。米永一理(よねなが かずみち)です。
4月からお届けしているこのコラムも、今回が最終回です。

この間に、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)による緊急事態宣言を経験し、ウィズコロナ、アフターコロナ、ポストコロナ体制に向けて、新しい生活様式、新しい診療様式に向けた準備に取りかかっているかと思います。

歯科医院においては、感染対策をどう徹底させてクラスターを発生させないかだけでなく、安定的な医療体制を維持するために、どのような経営をしていくか悩まれている声を多くお聞きします。

特に歯科診療は、いつからが不要不急でなくなるのかがわからない状況が、医療者側も、患者側にもあるかと思います。

感染対策を十分にすることはもはや当たり前ですが、患者・家族が安心できるように、どんな感染対策をしているか明らかにすることも重要となってきました。人が不安を感じるのは、原因がわからないことが一因となっています。よって、不安を少しでも取り除く方法は、取り組んでいることを「見える化」することです。

そのためには、
①歯科医院に来た時に、積極的に(アレルギーがないか確認したうえで)手指消毒をすすめる
②マスク、手袋、フェイスシールド、場合によっては防御着などきちんと装着する
③患者毎にチェアーおよび周辺をきちんと消毒・清掃している様子を見せる
④文書(紙)や金銭などの手渡しは最低限にする
⑤感染対策に取り組んでいる内容の院内掲示をしたり、ホームページに掲載する
⑥もし感染が発生したときはどう対応するか従業員とシミュレーションをしておく
 (もし従業員が感染したら労災保険の給付対象となります)
⑦こんなときだからこそ、かかりつけ患者の状態確認や分析を行う
ことなどがポイントとなります。

そして安定的な医療提供を行うためには、続々と出来てきている制度を上手く利用することも重要です。具体的に、歯科医療機関関連の項目を下記にまとめます。

(注:本文は2020年6月7日に執筆しています。今後情報が変わる可能性があります。またあくまで概要のみを記載しております。詳細は、経済産業省ホームページなどで随時ご確認ください。またこの他にも各都道府県や区市町村の制度がある場合があります)

返済不要
①持続化給付金
 対象 前年同月比50%以上の減収の事業者
 助成額 法人200万円 個人100万円
②雇用調整助成金の特例処置(申請期限8月30日)
 対象 前年同月比5%以上の減収の事業者で、パートを含む労働者に対し、雇用維持を図った場合
 助成額 6月30日までの休業手当の80%助成(要件によって90-100%)など
③小学校休業等対応助成金(申請期限9月30日)
 対象 子供の世話を行うことが必要となった労働者に対し、対応を行った事業者
 助成額 6月30日までに1日あたり8,330円/人を限度として休暇取得者に払った賃金相当額

実質無利子・無担保
④福祉医療機構による医療事業者に対する無利子・無担保等の優遇融資
 償還期間15年以内(5年以内は据置期間)
 限度額 診療所4,000万円、病院7.2億円(無担保貸付は3億円)
 ただし保証人が必要(保証人がいない場合は0.15%利率上乗せ)
 ⑤との併用は不可
⑤日本政策金融公庫による新型コロナウイルス感染症特別貸付
 償還期間15年または20年以内(5年以内は据置期間)
 限度額 6,000万円
 当初3年は0.46%(さらに利子補給があるため実質無利子)
⑥民間金融機関による実質無利子無担保融資
 融資期間 10年以内(5年以内は据置期間)
 限度額 3,000万円

その他
⑦社会保険料・税金の猶予特例
 2021年1月31日までの支払いの納付が1年間猶予
⑧事業用不動産に関わる賃料相当額の支払猶予関連法規(6月17日までに成立か)
 家賃支援給付金(①と併用可能)

結局、本シリーズでは、ほぼイートロスのご紹介ができないままとなってしまいましたが、講座開設後2か月が経過し、少しずつですが研究成果も出てきております。COVID-19においても、栄養管理の重要性が報告されています 1)。つまり、ウィズコロナの時も含めて、今まで以上にイートロス(食べられない状態が続くこと)をいかに防ぐことができるかが課題の1つとなります。あらためて、今後の歯科の課題である「食べる」をしっかりと科学し、歯科からもさらに「食べる」ことを支えることができるように取り組んでいきたいと思います。

このたびはご拝読いただき、誠にありがとうございました。
先生方にまたどこかでお会いできます日を楽しみにしております。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します(了)。

参考文献:
1.Barazzoni R,Bischoff SC,Breda J,Wickramasinghe K,Krznaric Z,Nitzan D,Pirlich M,Singer P.ESPEN expert statements and practical guidance for nutritional management of individuals with SARS-CoV-2 infection.Clin Nutr 2020;39(6):1631-1638.

著者米永 一理

東京大学大学院医学系研究科イートロス医学講座特任准教授

略歴
  • 鹿児島大学歯学部・東海大学医学部卒業、博士(医学)(東京大学)。
  • 東京大学医学部附属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科助教、
  • 十和田市立中央病院総合内科医員、
  • JR東京総合病院総合診療科医長・地域医療連携相談センター長、
  • 十和田市立中央病院附属とわだ診療所院長を経て現職。
  • 現在、日本大学歯学部兼任講師、十和田市立中央病院総合内科兼任
  • 日本内科学会認定医、日本抗加齢医学会認定専門医、
  • 日本医師会認定産業医、日本再生医療学会認定医、
  • 日本口腔外科学会認定医、日本口腔科学会認定医、
  • 日本口腔内科学会指導医、口腔医科学会指導医/専門医、認知症サポート医、
  • 医師臨床研修指導医、歯科医師臨床研修指導歯科医など
米永 一理

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