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歯科医院のスタッフ解雇における注意点
〜違法・不当解雇にならないために〜

2020/8/17 歯科医院経営

昨今のコロナ禍で、経営状況が悪化し、スタッフの解雇を検討している歯科医院も少なくないのではないでしょうか。
ただし、むやみやたらに解雇を行うと、不当解雇や違法解雇とみなされ、スタッフとのトラブルや訴訟・裁判などにつながる恐れがあります。

この記事では、不当解雇の定義や解雇の種類、コロナに伴う解雇の可否について解説します。

不当解雇とは

不当解雇とは、歯科医院の一方的な都合によりスタッフ・従業員を解雇することです。 解雇は、労働基準法や各医院で定める就業規則に則って行われる必要がありますが、不当解雇はこれらの規定を守らずに行われる解雇を指します。

不当解雇とみなされる条件・解雇理由

不当解雇となる条件や解雇理由の一例として、主に以下のような条件・理由が挙げられます。 ・スタッフの国籍や信条、身分を理由にして行う解雇 ・業務に伴う負傷や疾病の療養期間とその後30日以内の解雇 ・産前産後休暇期間とその後30日以内の解雇 ・解雇予告なしの解雇 ・解雇予告手当てを支払うことなく行われる即時の解雇 ・労働組合に加入していることを理由とする解雇 ・不法労働行為を労働委員会などの各種機関や組織に申し立てをしたことを理由とする解雇 ・性別を理由とした解雇 など 上記のような条件・理由での解雇は不当解雇とみなされ、解雇自体が認められません。

不当解雇以外の解雇とその条件

『解雇』と一言で言っても、その種類は以下のように3種類に分かれます。 ・普通解雇 ・整理解雇 ・懲戒解雇 ここでは、これら3つの解雇についてそれぞれ解説します。

普通解雇とは

普通解雇とは、当該スタッフの労働能力や適性、勤務態度などスタッフ自身に起因する理由によって行われる解雇のことです。 後述する整理解雇や懲戒解雇とは区別されるもので、一般的に解雇というと、この普通解雇を意味します。 なお、普通解雇を行う場合、以下のように解雇を行う際の条件が法律によって定められています。 ・解雇に関する事項と解雇事由が就業規則に記載されていること ・解雇の理由が客観的・合理的と認められること 普通解雇を行う場合には、解雇に関する事項が事前に就業規則へ記載されていなければなりません。 そのため、現在解雇を検討している歯科医院の方は、まず就業規則を確認してみてください。 また、客観的・合理的な理由とは以下のような理由が該当します。 ・勤務態度の不良 ・怪我や病気 ・職務上の不正行為 ・継続的な暴力・暴言 など ただし、上記の条件が当てはまれば必ず解雇できるわけではありません。 例えば勤務態度の不良の場合、その事実が存在しているだけでは解雇は認められません。 歯科医院がそのスタッフに対して注意や指導を行なったにも関わらず状況が改善されない場合に、解雇が有効になります。 また、怪我や病気で働けなくなった場合に関しても、歯科医院側に怪我・病気の原因がある場合や回復の可能性がある場合、配置転換ができる場合などは認められません。

整理解雇とは

整理解雇とは、歯科医院の経営上の理由によって、従業員数を削減する必要性がある場合に行われる解雇のことです。 解雇の理由はあくまでも歯科医院側にあり、スタッフに何かしらの問題があるというわけではありません。 整理解雇を行う場合、以下のような点を考慮する必要があります。 ・人員を削減する必要性があること ・整理解雇を回避するために努力していること ・解雇されるスタッフの選定基準や選定が合理的であること ・スタッフに対して事前に説明し、整理解雇に協力してもらうように尽くしていること 上記が無視された整理解雇は、無効とされる可能性があります。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、企業内での秩序を乱すような行為に対し、懲戒処分として行われる解雇のことです。 ただし、これまでの2つの解雇と同じように、歯科医院側が自由に懲戒解雇を実行できるわけではありません。 懲戒解雇を行う場合は、労働契約法でも定められているとおり、以下の要件を満たす必要があります。 ・懲戒事由等を定める合理的な規定があること ・規定に該当するような懲戒事由が実際にあること ・適正な手続きを行なっていること ・法律などの規則に反していないこと なお、1点目に関しては、就業規則などに懲戒事由と懲戒の種類が明記されていること、それがスタッフに周知されていることも必要です。 さらに、手続きに関しては、手続きの規定があればそれに沿う形で行う必要があり、規定がない場合でも、懲戒解雇の対象となるスタッフに対して弁明できる機会を与える必要があります。

補足:退職勧奨とは

解雇と混同しやすいものに、退職勧奨があります。 これは、解雇ではなく、スタッフに対して退職を勧めることです。 あくまでも勧めるだけなので、辞めるかどうかは当該スタッフ本人による判断となります。 退職勧奨に応じてスタッフが退職した場合でも特に問題とならないこと、退職勧奨に伴う退職は自己都合退職とはならないことが特徴です。 ただし、退職することを半ば強制するような退職勧奨は違法とみなされるため、注意してください。

コロナ禍における不当解雇

歯科医院の中には、昨今のコロナ禍により、スタッフの解雇を検討しているところもあるかもしれません。 しかし、先述の通り解雇をする場合は適切な理由がなければ無効となります。 これは、解雇の背景に新型コロナウィルスがあるとしても同じです。 また、新型コロナウィルスに関しては政府による各種支援策も実施されています。 中には雇用維持のための支援策もあるため、まずはそれらを利用するようにしましょう。 支援策を利用しない状態で解雇をすると、解雇退避の努力怠慢として、無効とされてしまう可能性があります。 支援策を利用しても解雇が免れない場合であれば、解雇が有効になるでしょう。 【関連】歯科医院のコロナ支援制度|給付金・助成金・補助金、返済猶予・軽減、融資まとめ

不当解雇と判断されたときの損害賠償や慰謝料

歯科医院による解雇が不当解雇であると判断された場合、以下のような各種金銭を支払わなければならないケースがあります。 ・バックペイ ・損害賠償(慰謝料) バックペイとは、不当解雇など解雇が無効であると判断された場合に、従業員に対して支払われなかった給与をさかのぼって支払うことを言います。 以下の計算式で求めることができます。 「解雇後給与を支払わなかった日数」×「解雇時点における1日あたりの給与額」 バックペイは給与を支払わなかった期間と1日あたりの給与額によって変動するため、一概にいくらと断言することはできません。 損害賠償に関しては、裁判の結果、バックペイとは別に支払いを命じられることがあります。 ただし、損害賠償の支払い命令が下されることは珍しく、バックペイのみの支払いとなるのが一般的です。 これは、慰謝料が解雇に伴う精神的苦痛に支払われるものと認識されているのに対して、精神的苦痛はバックペイの支払いにより解消されているという考えがあるためです。

歯科医院の解雇における注意点

歯科医院でスタッフの解雇を行う際は、通告のタイミングや書面の発行など、注意しておきたいポイントがいくつか存在します。

解雇通告のタイミング

解雇をする場合、解雇通告が必要となります。 解雇は歯科医院側が自由に行えるものではなく、少なくとも解雇の30日前に解雇する旨の予告を対象スタッフにしておく必要があるのです。 予告を行わなかった場合は、解雇予告手当として、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。 また、予告をしたものの、解雇までの日数が30日未満の場合は不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことになります。 いずれにしても、従業員が解雇された後の生活にスムーズに移行できるよう、解雇通告のタイミングには注意するようにしましょう。

解雇理由証明書の発行

解雇理由証明書とは、歯科医院がどのような理由によって当該スタッフを解雇したのかを証明する書類のことです。 この解雇理由通知書は、スタッフ側が請求した場合に限り、歯科医院に交付の義務が生じます。 請求がない場合は、特に作成する必要はありません。 解雇理由証明書は、解雇されたスタッフが解雇理由を確認して裁判で争うかどうかを判断するための材料にできるほか、実際に裁判になった時の資料としても活用可能です。

まとめ

今回は、スタッフの解雇に関して、解雇の種類から新型コロナウィルスに伴う解雇の可否、解雇に伴う損害賠償等の支払い、解雇を行う際の注意点などについて解説しました。 歯科医院がスタッフを解雇する場合でも、今回紹介したように歯科医院側で好き勝手に解雇ができるわけではありません。 明確な規定と合理的な理由、そして手順に沿った手続きなどが必要になります。 今後スタッフの解雇が発生しそうな場合は、今回の内容を参考にしてみてください。