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歯科医師の退職金はどのくらい?
スタッフの退職金の決め方もあわせて解説

2020/7/21 歯科医院経営

歯科医院の福利厚生の一つである、退職金制度。
求職者にとっての魅力ともなり得ますが、その金額や給付条件は歯科医院側にゆだねられます。

今回は、退職金の定義や税金、労使それぞれの立場における退職金について解説します。
労働者側の立場で「予定していた退職金を受け取れなかった」、または使用者側の立場で「退職金の支給でスタッフとトラブルになった」といった事態を防ぐために、ポイントを押さえておきましょう。

歯科医院における退職金について

退職金とは、歯科医院を退職した従業員に対して支払う「退職手当」のことです。

退職金の支給は義務なのか?

日本において、退職金の支給は法律で義務化されていません。 就業規則に退職金を支給する旨を定めていなければ、勤続年数にかかわらず、退職金を支払う必要はありません。 退職金の支給額についても同様に法律では定められてはいません。 ただし、就業規則に定めていなくとも、慣習的に退職金を渡している場合は、原則として退職金を支払う必要があります。 こちらの判断は、次の3条件を満たす場合に成立する「労使慣行」に基づきます。 1.同種の行為または事実が長期間反復継続して行われていること 2.当事者がこれに従うことを明示的に排斥していないこと 3.当該労働条件について、その内容を決定し得る権限を有し、またはその取り扱いについて一定の裁量権を有する者がこれに従うことを当然(規範)としていること 上記の労使慣行に該当する場合は、原則として、今後の退職者に対しても退職金を支払う必要があります。 また、歯科医院が中退共(中小企業退職金共済事業部)と退職金共済契約を結び、掛け金を毎月支払っていると、退職時に中退共から従業員へ退職金が支払われます。 中退共への加入は任意ですが、加入している場合は退職者本人に退職金を支払いましょう。

退職金にかかる税金

退職金には、所得税と住民税がかかります。 これらは、「年間の所得額(=収入–必要経費)」に法定の税率をかけて計算します。 課税方法は、退職金の受け取り方によって異なります(下記参照)。 税金の計算方法は複雑で、納税者の状況によっても税額は異なるため、どちらの方法が良いとは一概にはいえません。

【勤務医向け】歯科医師自身の退職金

次に、歯科医師の退職金について勤務医向けに解説します。

歯科医師の退職金の相場

歯科医師の退職金の相場は、特に決まっていません。 前述の通り、法律で定められておらず、歯科医院ごとの就業規則や労使慣行によるからです。 参考までに、歯科医院に限らず、一般企業の退職金相場について紹介します。 ▼若年層・勤続年数10年・大卒・東京都内の中小企業の相場 自己都合:121万円 会社都合:157万円 ▼ミドル層・勤続年数20年以上・高校卒・全国調査の相場 自己都合:1079万円 会社都合:1969万円 ▼ミドル層・勤続年数20年以上・大卒・全国調査の相場 自己都合:1519万円 会社都合:2156万円 ▼定年退職・勤続年数35年〜・大卒・全国調査の相場 2173万円 【参考】 ・若年層『中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)|東京都産業労働局-図表8-1』 ・ミドル層・定年退職『平成30年 就労条件総合調査(退職給付(一時金・年金)の支給実態)|厚生労働省 -第23表および第24表

歯科医師が退職金を受け取れる条件

退職金に関しては、歯科医院ごとに定められた条件に従う必要があります。 「勤続年数○年以上」といった退職金の支給条件などを、就業規則や労使慣行(口頭)で事前に確認しておきましょう。 退職金を支払うタイミングも同様に、歯科医院ごとで異なります。 一般的には退職の1〜2ヶ月後ですが、支払いの厳しい歯科医院では3ヶ月〜半年後となる可能性もあります。 退職金を受け取るまでに必要な生活費を事前に計算しておく必要があるでしょう。

【開業医向け】スタッフへの退職金

一方で、使用者側の立場である開業医向けに、スタッフへの退職金について解説します。

スタッフの退職金の相場

スタッフの退職金の相場は、特に決まっていません。 前述の通り、退職金を支払う義務はありませんが、退職金の有無で「求職者の福利厚生に対する評価」や「長く勤務しようとするスタッフのモチベーション」などに影響します。 法定でないため、「勤務者への感謝の気持ち」として退職金を支払うこともあり、歯科医院側の意思決定にゆだねられます。 人件費削減のために安易に退職金制度を廃すのではなく、総合的な歯科医院経営から判断しましょう。

スタッフの退職金の決め方

退職金の金額を決める方式は、一般的に次の3つです。 ・連続勤務年数に応じて退職金額を決める方式 ・退職時の基本給や連続勤務年数、退職理由によって決める方式 ・役職や職務、給与を評価し、ポイント制などで決める方式 これら以外に、普段の勤務態度や歯科医院への貢献度合いを踏まえて退職金を支払うこともあります。

歯科医院の退職金に関する注意点

最後に、労働者である勤務医と使用者である開業医、それぞれの立場での注意点を解説します。

勤務医の注意点

・退職金共済に加入しているのに退職金を受け取れない 歯科医院が中退共(中小企業退職金共済事業部)に加入し、毎月の掛け金を支払っているにもかかわらず、勤務先である歯科医院から退職金の支払いが行われなかった場合は、勤務先に請求してみましょう。 退職金は、中退共から歯科医院に直接支払われているため、退職金を受け取れるはずです。 ・勤務先が倒産して退職金が受け取れない 医院の経営不振や倒産といった理由で退職した場合、「未払賃金立替払制度」を利用しましょう。 全国の労働基準監督署および独立行政法人労働者健康安全機構で実施している制度です。 この制度を利用すると、未払いの退職金の一部を立替払いしてもらえます。

開業医の注意点

・一方的な退職金の打ち切りは難しい 労使慣行のようにこれまで退職金を支払っていた場合、歯科医院側の一方的な都合で退職金の支給を打ち切ることはできません。 経営悪化など、相当の理由がある場合は、スタッフに説明し、同意を得る必要があるでしょう。 ・退職金の減額にも合理的な理由がいる 給付基準を定めている退職金の減額を行う場合についても、スタッフが納得できる合理的な理由が必要となります。 給付基準を定めておらず、これまでの退職金より著しく減額になった場合は、これまでと同じ基準で給付すべきであると判断される可能性もあるでしょう。 歯科医院の裁量にゆだねられる一方で、急な廃止・減額にはリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

退職金制度の導入・変更は慎重な判断を/条件のチェックを

退職金制度は、良いスタッフを集め、スタッフの定着率を高めるための福利厚生の一環になり得ます。 しかし、一度明文化もしくは慣行化すると、業績にかかわらず支給する必要があるため、慎重な判断をすべきです。 また、求職者側は、事前に退職金制度の有無や経営の安定性について応募時にチェックしておきましょう。