歯科医院の準備から開業にはさまざまなステップがあります。 中でも特に重要なのが物件の立地選定です。 立地次第で歯科医院の患者数や売り上げは変わるため、開業時には慎重に精査する必要があります。 今回は、立地の種類や立地を選ぶ基準・ポイント、誤った選び方について解説します。 感覚ではなく、明確な根拠に基づき、最適な立地を見つけましょう。歯科医院開業に最も大切な要素は「立地」
厚生労働省発表の「平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告」によると、全国の歯科医院数は平成27年で約68,000軒以上にのぼっています。 1993年時点では約55,900軒だったことをことを鑑みると、歯科医院が乱立していることが分かります。 しかし、歯科診療の医療費は1990年代の約2兆円から現代までほとんど変わりません。 2兆円という限られた市場規模の中で、歯科医院の数だけが増え、熾烈な集患競争となっているということです。 一方で、同省の発表した「医療施設動態調査(平成 30 年 2 月末概数)」によると、歯科医院は関東地方や近畿地方の都市部に集中し、地方では1,000軒以下の都道府県がほとんどです。 開業する都道府県やその地域によって、競合となる歯科医院の数も異なります。 つまり、歯科医院を開業するにあたって最も重要な要素は、物件の立地であるといえます。 歯科医院の特徴を活かして、最大限に集患するためには、最適な立地条件を満たさなければなりません。開業する立地の種類
歯科医院の立地は、大きく分けて4種類です。オフィス街
オフィス街に位置する歯科医院は、基本的にオフィスに勤務するビジネスマンの利用が多くなります。 勤務時間や働き方などによって、通院できる時間も変わるでしょう。 日中の通院が難しければ、仕事終わりの夜間診療を希望する方も多くなります。駅前
駅前は、人の流れが多く歯科医院の存在を認知されやすい立地です。 時間帯や曜日にかかわらず集患しやすい一方で、賃料が高い傾向にあります。 賃料をカバーできる売り上げを出さなければなりません。商業立地・商業施設
ショッピングモールなどのテナント、商業施設内にある歯科医院は、土日の買い物客を患者さんとして取り込めます。 場所次第で、平日より土日に来院数が多くなることもあるでしょう。 ただし、スタッフは土日に勤務することとなるため、求人の条件として不利になる可能性があります。住宅街
住宅街にある歯科医院は、周辺地域の住民が主に利用します。 患者層は子供や主婦、高齢者までさまざまです。 自費診療を主軸とする歯科医院では、その地域の平均世帯収入が受診率に影響を及ぼすことを想定しておくべきでしょう。 駅前やオフィス街、商業施設に比べると集患力は強くありませんが、自然な口コミから集患へとつながります。歯科医院開業の立地を選ぶ基準・ポイント
歯科医院にとって最適な立地を選ぶ基準やポイントを解説します。メインの診療科目
メインの診療科目は、歯科医院の強みとなります。 その診療科目を求めている患者層がアクセスしやすい立地を選びましょう。 例えば、審美なら女性が来院しやすい駅ビルやおしゃれな街を、義歯なら高齢者が1人でも通いやすいバス停近くや駅ビルを、小児なら幼稚園や保育園、住宅地周辺を選ぶといった具合です。 どれだけ技術に優れていても、その治療を求める患者さんの母数が少なければ来院数は下がります。日常行動線
地域には、住民の多くが通勤・通学で日常的に利用する道路や公共交通機関、施設などがあります。 それらを結んだ動線を「日常行動線」と呼びます。 開業する場所が日常行動線から外れていると、潜在的な患者さんが多くいても来院につながりません。 「仕事帰りに通える」「買い物のついでに通える」など、住民の日常行動線に沿った立地を選びましょう。競合の歯科医院
前述の通り、歯科医院数は平成27年で約68,000軒以上です。 開業を検討している診療圏で競合となる歯科医院の数を調べておきましょう。 患者数の多いエリアは激戦区となりやすく、競合との差別化戦略を立てる必要があります。 競争を避けるために、郊外を選択肢に考えてもよいでしょう。地域の将来性
地域の将来性を予測することも大切です。 診療圏における患者数の今後5年、10年の増減予測を立てましょう。 行政のホームページや都市計画担当課で確認できる「都市開発計画」や、地場産業の動向を参考にしてください。都市機能や事業所、工場の移転などにより、患者数の減る恐れがあれば、立地を変えた方が良いかもしれません。歯科医院開業でNGな立地の選定方法
最後に、誤った立地選定方法についてポイントを解説します。診療圏調査をしていない
診療圏調査をせずに立地を決めることは避けましょう。 診療圏調査とは、診療圏内での人口密度や競合の歯科医院、地域の特徴、診療科目などの観点から、開業に適している立地であるかを調べることです。 診療圏の範囲は立地で異なります。 例えば、都市部なら半径500m~1km、郊外なら半径3kmを目安として考えましょう。 最悪のケースは、診療圏調査をせず、院長や家族の都合で「自分たちが住みたい地域」や「生活インフラの整った地域」「子供に通わせたい地域」といった条件で立地を選ぶことです。 患者さんを無視した立地では、いくら広告宣伝費に予算を割いても来院につながりません。 明確な根拠に基づく診療圏調査を行い、最適な開業地を選びましょう。 【関連】見込み集患数が分かる「診療圏」とは?歯科医院の開業における正しい活用方法を解説!患者層を意識していない
診療圏調査を行う際には、患者層を決めておきましょう。 来院してもらいたい患者層があいまいである場合、開業場所を絞ることができません。 メインの診療科目と照らし合わせてターゲットの絞り込みを行い、獲得したい患者層を意識した立地を選びましょう。 患者層を意識せずに立地を選ぶと、人通りの多い場所でも集患につながらない恐れがあります。 例えば、高齢者の患者さんが多いエリアで、若い患者さん向けの審美歯科を出しても集患につながりません。 このような場合は義歯や予防歯科が高齢者の求めている歯科治療になり、集患につながるでしょう。現地調査をしていない
診療圏調査を行い、開業コンサルタントと綿密な打ち合わせをしたにもかかわらず、上手く集患できない・・・といった事態に陥ることも。 こういったケースに多いことは、データを根拠とするマーケティングばかりで、現地調査をしていないことが原因として考えられます。 例えば、前述した日常行動線は、現地に実際に足を運ばないと分からない情報が多くあります。 「繁華街でも人通りの少ない路地」や「ターゲットの主婦にとって不便な場所」といった情報です。 患者さんの立場に立ち、通勤・通学や買い物といった目的で街中を歩くと、データ上では見つからなかった発見があるかもしれません。 開業予定の現地調査の際には、「人の集まりやすい場所か」「どんな人(性別/年齢層)が通るか」「時間帯によって人通りが変化するか」「アクセスの分かりやすい場所か」などをチェックしましょう。最適な立地で歯科医院の開業を目指す
歯科医院経営を左右するのは立地です。 今回解説した立地の種類や選ぶ基準・ポイント、誤った選び方を踏まえ、最適な場所を選びましょう。 ただし、時間がかかっていつまでも開業できない・・・という事態に陥らないために、期限を決めて、計画的に準備を進めることをおすすめします。 【歯科開業支援コンテンツ】OneToOne Club