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2020年2月のピックアップ書籍

2020/1/31 歯科NEWS

『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』

"口腔粘膜の変化を見逃さない"。重要なことと思いながら日常診療で少し引いている歯科医師・歯科衛生士にとって、本書は手放せなくなるだろう。これまで歯科医師、歯科衛生士はう蝕および歯周疾患の治療と予防に真摯に取り組み、口腔の健康維持・向上に大きな役割を果たしてきた。また、矯正歯科や審美歯科など、歯科疾患への対応だけでなく口腔環境の向上にも寄与している。しかし、これだけで歯科はよいのだろうか。 口腔粘膜は、歯や歯周組織と違って口腔では裏方であるが、口腔粘膜疾患にはアフタに代表される口内炎から全身的疾患にともなうもの、さらに口腔がんのように命を脅かすものまで多彩である。口腔疾患は自然治癒すると安心し、命を失う場合があることを知らない国民にとっては、歯科受診中に口腔粘膜疾患を見落とされると大きな問題になる。 口腔外科や口腔内科(オーラルメディシン)を専門的に学んでいない歯科医師・歯科衛生士が、どうすれば口腔粘膜疾患に取り組んでもらえるかを念頭に置き本書は構成されている。これまで口腔粘膜疾患についての多くの成書があるが、いずれにも近づき難いと感じる読者が多く、口腔粘膜疾患の理解には距離があったかもしれない。本書の編者はその点を十分承知しており、Part1では診察の流れに沿って口腔粘膜疾患の見分け方をわかりやすい図を示して記載している。まず形態や色調の変化をとらえることから始まり、それぞれについて考えられる疾患をそれぞれのスペシャリストが記載している。ここまでなら類似のものは出版されているが、本書の特徴はPart2としてQ&A方式の診断力テストを加えたことである。本書の読者層を広く考え、口腔粘膜疾患について自信がない先生もPart1で得た基本的な知識を元にPart2へ進める。もちろんPart2で症例の概要を把握し、その診断と治療方針を考えることは実地臨床に適している。これは口腔粘膜疾患への理解が進んだ読者にとっては、自分の診断力の向上を確認するためにも有用である。 本書の活用で粘膜の変化を視診と触診でチェックし、それらの変化の解剖学的・病理学的根拠を理解して、さらにひとつでも多くの診断名を知っておけば鑑別診断が容易になり興味も増す。あいまいな知識は専門書で確認し、本書をチェアサイドで活用すれば診断力と対応力はさらに向上するであろう。 評者:山根源之 (東京歯科大学名誉教授) 岩渕博史・編著 伊東大典/井上吉登/上野繭美/ 小澤重幸/片倉 朗/上川善昭/ 木本茂成/神部芳則/角田和之/ 松野智宣/矢郷 香/山本一彦/ 横山三菜・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:7,000円(税別)

『成功の方程式 図解! 歯周外科を用いた歯肉縁下う蝕の治療手順』

すばらしい本が出版された。本書は超高齢社会に突入した日本を支える歯科医療従事者にとって必読の本である。 超高齢社会を快適に過ごすために、誰もが健康で笑顔の絶えない生活を望んでいる。そのためには自分の歯で美味しい食事ができることが一番である。口腔の健康が全身の健康に密接にかかわっていることが科学的に解明されつつある現在、われわれ歯科医療従事者にとって、口腔を健康に保ち、美味しく食事ができることを叶え、健康長寿を支えることが重要な仕事である。 歯を失う2大疾患のひとつであるう蝕によって歯が失われるケースは、多くの場合、不適合修復物の歯肉縁下に及んだ二次う蝕や、う蝕によって歯髄が失われて根管治療の行われた歯の破折である。 本書の第2章に記載されている「歯肉縁下う蝕処置前に行うべき7つのポイント」では、再治療を行ううえで必要なテクニックがていねいに紹介されている。そして、第3章の「歯肉縁下う蝕に対する治療法」の冒頭に記載されている歯肉縁下う蝕の治療フローチャートは非常に有用で、このフローチャートは世界で初めてのものであろう。歯肉縁下う蝕の治療法の根幹は歯周外科治療を基本とし、そのテクニックをstep by stepで非常にわかりやすく解説されている。最後の部分では、著者らの深い臨床経験に裏打ちされた豊富な症例が目白押しである。本書を読み進めていくと歯肉縁下う蝕を治療するうえで、歯周外科治療の技術、手技、知識が必須であることがひしひしと伝わってくる。これまで歯周外科治療に取り組みにくいために歯周治療が難しいと考えていた先生にとって、本書を熟読することにより、歯周治療や歯周外科治療をマスターするハードルが低くなるのではないだろうか。 本書を手に取った先生が歯を失う2大歯科疾患のもうひとつである歯周病に取り組み、う蝕と歯周病の治療が大半を占める日常臨床のなかで診療体制の拡大につなぐことができれば、多くの歯を残すことが可能になる。本書の冒頭で「1本でも多くの"savetooth"に寄与できれば幸いである」と記載されているが、これは非常に印象的で本書の真髄であろう。 本書を熟読し、1本でも多く患者自身の歯を残す歯科治療を実践する臨床家が増えれば、自分の歯でしっかり食事ができ、健康寿命の延伸を実現する患者が増えることを確信する。 評者:和泉雄一 (総合南東北病院オーラルケア・ペリオセンター長、東京医科歯科大学名誉教授) 佐々木 猛・監修 水野秀治/小谷洋平/筒井 佑・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:9,000円(税別)

『新版 開業医のための摂食嚥下機能改善と装置の作り方』

「PAP」と聞いて、その対象・検査・診断・治療が体系的にイメージできる歯科医師はどれくらいいるだろうか。評者も摂食嚥下リハビリテーションに関する講演会や実習コースを担当することがあるが、もっとも注目が集まるのが摂食嚥下障害を有する患者に対するPAPや義歯のつくり方である。どんな検査が必要なのか、どんな形態がよいのか、具体的にどんな材料をどこに盛るのか等、非常に細かいところまで質問を受けることが多い。本書はそんな現場のニーズを受けて、摂食嚥下障害と摂食機能療法の基本、そして摂食嚥下リハビリテーションにおけるPAPや義歯のつくり方をQ&A方式でまとめた1冊である。 PAPとは舌接触補助床といい、摂食嚥下の口腔期の舌接触を補助する装置である。舌がん術後などの舌の可動域や筋力が器質的に障害された場合に用いるが、近年、脳卒中などの運動障害性に生じた舌機能低下に対しても有効性が示唆されている。そのためには、PAPの基本となる「義歯」が適切に装着されている必要があるが、残念ながら在宅や病院における現場ではまだこれからという状態である。その背景には、摂食嚥下機能に対する理解が不十分なことが想定される。 チームアプローチが基本となる摂食嚥下リハビリテーションでは、PAPや義歯などの補綴装置を含めた口腔機能管理は歯科の本務である。そのためには、摂食嚥下リハビリテーションに関する共通言語を十分に理解すると同時に、その枠組みのなかでPAPや義歯に関する高い専門性を有する必要がある。また近年、オーラルフレイル(ささいな口腔機能の低下から摂食嚥下障害へとつながる一連の口腔機能低下を意味する)がフレイルや要介護の原因であることが解明され、地域における口腔機能管理が重要視されている。その観点からは、地域の開業医の先生による歯科治療を含めた地域住民の口腔機能低下症の管理こそが摂食嚥下障害への対応の第一歩である。 外来と訪問はひと続きである。地域の最前線でこれから口腔機能管理を外来と訪問で行うために必要な具体的な答えをこの1冊にみつけることができるだろう。 評者:古屋純一 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科地域・福祉口腔機能管理学分野) 小野高裕/阪井丘芳・監著 前田芳信/堀 一浩/野原幹司/ 小谷泰子/中島純子/朝倉勇美・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,000円(税別)