ウイズコロナの時代と対策 その13
なぜ口腔細菌がタンパク質分解酵素を持つのか?
2020/12/16 デンタル〇〇デザイン

インフルエンザウイルスは、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)がなければ体内に侵入できない。しかし、歯周病菌のP.g.菌(Porphyromonas gingivails)などを始め、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌などの細菌もこの酵素を持つ。 (注:黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌なども持っている) そのため、口腔内が不潔であるとインフルエンザに罹患しやすい。 現在、新型コロナウイルス感染症も同様に考えられている。 ではどうして、口腔細菌がこの酵素を持っているのだろう?
この理由について考えてみよう。 さて、"酵素パワー"いうと、テレビの洗剤のCMを思い浮かべる。 これについて簡単に説明しょう。 今、汗をかいてタオルで体を拭いたとする。 タオルには、汗や汚れの他に垢が付着している。 垢は、皮膚のタンパク質からなり、中には細菌やウイルスが潜んでいる。 しかし、垢は、水洗いだけでは取れない。 そこでたんぱく分解酵素で、垢を溶かし中の細菌も退治する。
また、義歯洗浄剤のポリデントなどにも含まれている。 義歯にも食物残渣や歯垢が付着するので当然といえる。 そう言えば、小動物の骨格標本を作る時、ポリデントが役に立つ。 これはマニアの間では有名だ。 箱の裏には「タンパク質分解酵素がニオイの原因プラークをとります」と書かれてある。 もちろん肉の塊が溶けるほどではない。 小動物の筋肉をできるだけ取り除いておき、残った部分を溶かすのだ。
さて我々が、ビーフステーキを食べると、胃から分泌される"ペプシン"によって消化される。 しかし、小さな細菌は巨大な肉を食べることができない。 そこで細菌は、タンパク質消化酵素を分泌し溶かす。これが腐敗だ。 このような理由から、口腔細菌もこの酵素を持っているのである。 さて、ミュ-タンス連鎖球菌など齲蝕原生菌は、酸を産生し齲蝕の原因となる。 一方、歯周病菌は、タンパク質分解酵素により歯周組織を溶解し歯周病を引き起こす。 P.gingivailsは、ジンジパイン(gingipain)という酵素を出す。 このジンジ(gingi)は歯肉の意味であるが、パパイン(papain)は果実のパパイヤに由来する。 ビーフステーキには、パイナップルやパパイヤ、タマネギ、大根おろしが添えられている。 これらの果物や野菜も、タンパク質分解酵素を持っている。 このおかげで、肉が軟らかくなり消化を助け、胃もたれを防いでいるのだ。
続く