秋が深まるとともに、全国で新型コロナウイルス感染症が急増している。 しかも、同時にインフルエンザも流行する季節である。 今年の冬は、両者のパンデミックが起こらないか心配だ。 さて2017年の冬から春にかけて、21世紀に入りもっともインフルエンザが流行った年であった。 そして、2018年の冬からは、前年よりさらに流行した。 そんな背景もあり2019年の冬は、それ以上に流行る可能性があると予想した。 そこで本連載で「インフルエンザ考」と題し、2018年に14回(スマイル+第244号~257号)に渡りインフルエンザについて書き綴っていた。 注:詳しく知りたい方は,以下よりご覧いただきたい。 スマイル+ インフルエンザ考 その1 https://www3.dental-plaza.com/archives/10704 ところが2019年の冬は、新型コロナウイルス感染症が大流行したのである。 さて筆者は、インフルエンザ予防の延長に新型コロナウイルス感染症の予防があると考えている。 何故なら、インフルエンザと新型コロナは別のウイルスだが、感染予防には共通点が多い。 まず、ウイルスの拡散には気温と湿度が大きく関係する。 そのためにも鼻呼吸による、空気の加温と加湿は重要な要素となる。 また、三密を避けること、マスクの使用も重要だ。 これは一般の方々も周知しているだろう。 しかし、まだまだ知られていないことがある。 それが"口腔ケア"である。 我々は、"何故、それがウイルス感染の予防になるのか?"という疑問に対し、もっと一般の方々に "わかりやく伝える"必要があると思う。 さて先日、長崎県の某保育園園長と校医の歯科医師から相談を受けた。 保育園長は、「歯科健診で口の中に汚れが多い子ども達ほど、インフルエンザに罹患しているような気がしてならない」と言うのである。 そこで、過去3年間のインフルエンザの罹患状態と口腔内状態を集計し、統計処理を行った。 すると驚くべき結果が得られたのである。 まず、インフルエンザと歯垢の付着状態である。 インフルエンザ群の歯垢付着児は21.5%に対し、非罹患者群ではわずか2.8%であった。 次に、齲蝕との関係についても調べてみた。 インフルエンザ群の齲蝕罹患率は41.8%に対し、非罹患者群では28.2%であった。 さらに、歯垢付着と齲蝕罹患者を合わせた。 すると、インフルエンザ群では歯垢付着・齲蝕者率は63.3%、非罹患者群では31.0%となった。 もちろんこれは統計学的にも有意(p<0.001)であった。 保育園園長の"勘"は当たっていたのだ。 高齢者において、インフルエンザと口腔ケアについての研究はあるが、小児でも同じことが示されたのである。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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