圧巻のボリュームと充実の内容をそなえた、過去に例を見ないベニアの専門書! イノベーション・オブ・ラミネートベニア 20年の臨床と研究が示す価値
大河雅之・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 44,000円(本体40,000円+税10%)・464頁 評 者 山﨑長郎 (東京都・原宿デンタルオフィス) 圧巻のボリュームと充実の内容をそなえた、過去に例を見ない書籍が完成した。この種の書籍としてはおそらく唯一無二であることは間違いなく、著者が長い間取り組んできたラミネートベニアのまさに集大成と言えるだろう。 とくに、内容もさることながら、臨床例の各ステップおよび最終修復装置の美しさに目を惹かれる。接着技術やマテリアルの開発とともに、この分野は世界的にブームであり、MI治療として広く応用されている。日本においても徐々にMI治療に対する理解と実践が行われてきつつある昨今、まさにタイムリーな内容で素晴らしい参考書となるだろう。 世界的潮流として、歯科界の方向は最小必要限度の治療により最高の治療成果を挙げるMIのコンセプトが主流となっており、審美歯科治療はまさにその先駆けとなっているが、この書籍はその指導書とも言えるであろう。この書籍を読むにあたり簡単に内容とその順序を解読して、より良い流れを理解してもらいたい。 本書は7つのChapterから構成されている、Chapter1はプロローグとして本書の根幹である接着・MIを用いた従来の比較的初期のベニアの安定性とバイオミメティック・プリンシパルを、著者の最高の糸口として述べている。Chapter2は、Chapter1から続く従来のラミネートベニアの中長期的症例を、数多い臨床例を示しながら個々の症例の特徴を踏まえて見事に解説している。Chapter3はChapter1および2のまとめとして、そこに適応症である酸蝕症を加えて全顎的要素を取り込んで解説している、Chapter4ではラミネートベニアのデジタル化への推移を段階ごとに述べている。とくにIOSとの関係には、注目すべき見解が含まれている。Chapter5は、圧巻の前歯部ラミネートベニア形成の分類と数多い症例群である。この章は著者がもっとも得意とする分野であり、多くの文献を網羅するとともに支台歯形成および器具(ダイヤモンドバーと電着チップ)のディテールを丁寧にわかりやすく解説している。とくに、前歯部ラミネートベニアの分類の症例に注目していただきたい。Chapter6ではChapter5に続き臼歯部ラミネートベニアの分類と症例を提示しており、こちらもバイオミメティックの中心である形成の分類に注目しながら形成から装着までをじっくり解説している。Chapter7はMIコンセプトに基づいた咬合再構成であり、本書を締めくくる内容。基礎資料から治療終了時までさまざまな写真・資料を呈示して解説している。 すべてのChapterにわたり、膨大な資料と症例で圧倒されるが、Chapterごとに順不同に読んでいけるため、それほど難解ではない。いずれにしても読み方は自由で、読者諸氏には自己の臨床に切り取って生かしていただきたい。これだけの書籍を上梓した筆者に対し、心から賞賛と感謝を申し上げたいと思う。NCCLを正しく学べる唯一無二の解説書 黒江研究の集大成 なぜ起きる? どう対応する? 非う蝕性歯頸部歯質欠損NCCL
黒江敏史・監著 青島徹児/井上 和/築山鉄平・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 16,500円(本体15,000円+税10%)・248頁 評 者 斎田寛之 (埼玉県・斉田歯科医院) 待望の書籍が遂に刊行された。多くの人に衝撃を与えた本誌での特集「NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)Update 2019」から早5年、この時までは何を隠そう評者もアブフラクション説を盲信していた。 NCCLを見つけては、違和感を覚えながらもアブフラクションの発生機序の絵を患者さんに何度描いたことか。評者は本特集に目を覚まされたようだったが、同じような感覚をもった方も多いのではないか。 ある1人の研究者の発想(アブフラクション説)から始まった世紀の盲信劇から、今ようやく真実を取り返したという一連の流れ、アブフラクション説の誕生から検証、真実解明までのストーリーをさまざまな角度から深く理解できるのが本書の何より面白いところだ。 本書の内容を少し紹介していく。第1章はNCCLにまつわる用語の整理から始まる。その後,NCCLが包含されるTooth wearについてフローチャートや豊富な症例とともにその概論が展開される。続いて、NCCLのさまざまな臨床像と病因論を、歴史的変遷やアブフラクション説と絡めながら理解できる。さらに、21世紀に入って再検証された摩耗、NCCLのトリガーとされる歯肉退縮、象牙質知覚過敏との関係など、NCCLを知るうえで大切な基本情報がまとめられている。 また、第1章の最後では井上和氏、青島徹児氏、築山鉄平氏によりNCCLの臨床対応を紹介している。 井上氏は、現場でNCCLのコントロールを任される歯科衛生士として、原因を知るうえで大切な食事やブラッシング習慣のインタビューや指導のポイントを解説している。 青島氏は、一般的に脱離しやすいとされるNCCLへのコンポジットレジンでの修復について豊富な写真とともに解説している。 築山氏は、歯肉退縮をともなうNCCLの対応でしばしば話題になる根面被覆について、豊富な症例とともに手術テクニックにおけるポイントを解説している。 第2章は,黒江氏によるNCCLの前向き研究の一部始終である。圧巻の24症例はこれまで何度も聞いた黒江氏の講演から大幅にアップデートされている。これらはNCCLの真相を解明するための貴重な資料である。 第3章は、アブフラクション説の元となったGrippoやMcCoyの論文をはじめ、20世紀に話題になった論文が1つひとつ解説され、歴史的変遷をさらに詳しく学べる。その後は再検証に至った21世紀の重要論文、メインの学会の見解などが細かく紹介されている。ところどころに挟まれたコラムも非常に興味深い。 本書は、NCCLに関する世紀の誤認劇の一部始終を正しく深く学べる唯一無二の解説書であり,黒江氏の現時点での集大成,世界的にも到達点と言えるのではないか。 時代を先取りした日本発のNCCL解説書を手に取り、ぜひその感動を味わってもらいたい。歯科界で生き抜くための情報が簡潔にまとまったオススメの一冊! Dr.マルオの歯科大学では教えてくれない ヒト・モノ・カネ・情報 若手歯科医師がキャリアに悩んだときに読む本
丸尾勝一郎・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・136頁 評 者 牧 圭一郎 (東京科学大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻口腔機能再構築学講座歯髄生物学分野) 評者は現在歯科大学で教員をしており、歯内療法専門医として活動している。そんな評者が、「なぜ丸尾勝一郎先生のこの著書の書評を?」と思われる先生方も多いのではないだろうか。評者は丸尾先生が主催されたセミナーである0Young Dentist Academy「歯科大学では教えてくれない、武器を身につけよう」を歯科医師7年目の時に受講した。当時、自分の将来に漠然とした不安があった私にとっては非常に刺激的な内容であり、このセミナーを受講してから自分がすべきことが明確になり、将来のビジョンが少しずつ見えてきた。したがって、「現在の自分があるのは丸尾先生のセミナーのお陰」といっても過言ではない。本書は1年で学ぶセミナーの内容を1冊にまとめたものであり、評者として当時のことを振り返りながら拝読させていただいた。 本書は大きく3つのチャプターに分かれている。Chapter1では歯科医師としての生き方の選択肢、およびそのために必要なことが記されている。そのなかでも、私がもっとも刺激を受けたことは「プレゼンテーションをすることの重要性」である。丸尾先生のプレゼンテーションを初めて拝聴した時の感想は、「圧巻」の一言であった。「自分の考えをいかに正確に論理立てて相手に伝えるか」を意識することの重要性を深く学ぶことができ、現在の評者のプレゼンテーションにも大きな影響を与えた内容である。実際にプレゼンテーションを通じてできた人脈により,、多くのチャンスを与えていただいたことも事実である。 Chapter2ではなかなか教わる場の少ない、歯科医師のお金の話が学べる。歯科医師も当然のことながら社会人であり、開業した場合はプレイヤーでありながら経営者の立場になる以上、お金の話を避けてはとおれない。丸尾先生のような歯科医院を開業し、分院展開もされている先生の話は、まだ将来開業するかを決めていない先生方にとってもとても参考になるのではないだろうか。 Chapter3では歯科界でリーダーシップをとるために重要なことが記されている。「自分の好きなこと・得意なことを突き詰めていき、『○○の牧』を目指す」という考え方は、丸尾先生のお言葉の中でもっとも評者の心に突き刺さった言葉の1つである。自分の苦手分野を克服することも大切であるが、好きや得意なことに熱中することで、道がひらけてくるということである。評者自身もこの考え方で研鑽を積み、自分が目指すべきビジョンが明確になってきたと実感している。 「自分の将来のビジョンが定まっていない」「なりたい自分になるために何をしたらいいかわからない」そんな先生方にとっては、その解決のヒントになるきっかけがたくさん詰まった書籍であることは間違いない。丸尾先生とは専門分野も立場も異なるが、評者のメンターの一人としてこれからも多くのことを学ばせていただきたいと思っている。段英語文献を読まない先生でも気兼ねなく最新文献に親しめる一冊 別冊ザ・クインテッセンス PRD YEARBOOK 2024 GBRの有効性および可能性とその評価
岩田健男/山﨑長郎/和泉雄一・主席編集 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,480円(本体6,800円+税10%)・192頁 評 者 増田英人 (大阪府・ますだ歯科医院) 1年に一度発行される本書には前年に発表された英語版PRD(International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry、以下IJPRDと略)の約100論文から「歯周病学」「補綴」「外科」「インプラント」「新材料・テクニック」の5分野で厳選された10論文が全文日本語訳のうえで掲載されている。 IJPRDは新術式のケースレポートやケースシリーズも多く掲載されて、日々の臨床の参考や刺激になるため、筆者が定期的にチェックしているジャーナルの1つであるが、日本の著名な編集委員の先生方がどの論文をピックアップされるのかも含め、日本語版PRDの発刊を毎年とても楽しみにしている。 本年度では、小川雄大先生が重度歯周炎罹患歯に対して唇・口蓋側それぞれに異なる乳頭温存型のフラップデザインを用い、rhFGF-2の特性を応用して、歯槽骨縁上の歯周硬・軟組織再建を行った圧巻のケースレポートを筆頭に、この数年ホットトピックスになってきていると感じる「インプラントの粘膜貫通部の形態」や「前歯部インプラントにおける唇側/乳頭部軟組織退縮に対する治療法」「サイナスリフトで修復不可能な洞粘膜損傷を起こした場合の再手術タイミングに関する考察」「根面被覆術の新術式」「矯正的挺出を簡便・短期間に行うための新手法」など非常にバラエティーに富んだ文献を、編集委員の先生方の論文解説とともに読むことができる。普段読む書籍はどうしても自分の興味のあるテーマに偏りがちであるが、さまざまな分野の世界的な潮流を短時間で効率よく学ぶことができるのも本書の特徴である。 英語文献を読むことは、筆者も含め大学に所属しない/研究をしたことのない一般開業医にとって非常にハードルの高いものだと感じるが、現時点で最良だと考えられる正しい臨床判断をするためにはとても重要だと思っている。 普段英語文献を読むことがない先生にとっても最新文献を読むことの楽しさを知る足がかりとなる書といえるであろう。 そのほか、世界最新テクニック&マテリアルとして。「GBRの有効性および可能性とその評価」と題した日本発の論文も掲載されており、なかでも垂直GBRの20年経過時の予後評価はたいへん貴重な論文でGBRに興味のある先生にとっては必読の書となっている。 さて2025年6月12日〜15日には米国・ボストンにて3年に一度のISPRDが開催される。ボストンは治安もよく、食事もおいしく、また開催時期は非常に過ごしやすい気候でもある。たとえ英語が不得意でもスライドによって内容をある程度理解できるし、その場で知り合う日本人の先生方とはスタディグループの垣根を越えて仲良くなれ、刺激を受けることができるのも海外研修の良さである。 本書を読まれたうえで、ISPRD2025にて最新の知見を学ばれることをお勧めしたい。