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変わる世界を生き抜く、歯科イノベーションマインドのススメ第6回(最終回):理想が現実になるスピード

変わる世界を生き抜く、歯科イノベーションマインドのススメ第6回(最終回):理想が現実になるスピード
変わる世界を生き抜く、歯科イノベーションマインドのススメ第6回(最終回):理想が現実になるスピード
皆さんこんにちは、長縄です。本連載「変わる世界を生き抜く、歯科イノベーションマインドのススメ」では、皆さんの身近にあって当たり前になってしまっていること、当たり前に見えて実は違和感を感じていることに気づき、バイアスを外して課題を読み取る。さらにそれを解決するために自分で行動しよう!と伝えてきました。最終回の今回は、アドレナリンをダダ漏れさせながらアクションを起こした皆さんに、冷静にお伝えしたいことがあります。

新しいテクノロジーが当たり前になるには長い年月が必要

例えば、今では家庭でも目にすることのある自動血圧計です。元々は「診察室」で水銀血圧計を医師が患者さんに巻き、聴診器で音を聞きながらカフに手動で空気を入れていました。それから自動で血圧が測れるようになり、診療室から外に(廊下など)に出て、今当たり前に家庭にあります。新しいテクノロジーが長い年月をかけて徐々に浸透(変化)していった、また人が新しいテクノロジーに適応するには時間がかかるという典型例です。 現代においては、新しいテクノロジーが普及するのにこれほど時間は必要ないかもしれませんが、例えば新しいIoT歯ブラシを作ったから、一家に一台持ちましょう!というのは少し乱暴です。新しいデバイス、診療スタイルは、私たち歯科医師が患者さんに合わせて選択し、緩やかに普及させていく必要があります。 もう1つ、新しいテクノロジーを普及させるにあたり、よくある議論があります。それは使う人の教育が必要ですか?というもので、正しい血圧測定のやり方を患者さん自身が学ぶ必要があったり、看護師がそれをサポートする必要があったりするか?という話です。 例えば歯科オンライン診療を行うとして、患者さんに「オンライン診療のやり方」を教える必要があります。また在宅の訪問看護師にオンラインで口腔ケア指導を行うとしたら、オンライン診療のやり方だけでなく、オンラインでもコミュニケーションが成り立つように、基本的な歯科、口腔ケアの方法から指導する必要があります。オンラインでは言語的コミュニケーションに頼らざるを得ないシーンが多々あり、それを理解し実施できる知識と技術をもった医療スタッフが不可欠になります。

変化の過程を補う取り組みが必要

そのようなコミュニケーションのギャップを埋めるために、根本的な歯科、口腔ケア教育を行っています。一般社団法人訪問看護支援協会と協力し、オンライン診療、特に訪問診療の現場でも活躍できるような、基本的な歯科、口腔ケア知識をもった医療スタッフ(BOCプロバイダー)を育成しています。BOCプロバイダーは、2018年から世界の変化を見越して始めた取り組みですが、COVID-19によって急速に変化した世界に合わせ、さらなるスピードアップが求められます。幸いなことに、自治体や全国の病院、介護施設、訪問看護ステーションなどにご協力いただき、基本的な口腔ケアを行うことができる医療スタッフ、オンライン診療にも適応できるスタッフの数が増加しています。
『医療・介護の現場で役立つ ベーシックオーラルケアBOCプロバイダー入門』 (クインテッセンス出版刊)

選択肢が増えるだけ

オンライン診療が普及したとしても、これまでの外来、入院、在宅へ訪問して行う診療スタイルがなくなるとは思えません。これまでの診療スタイルに加えて、AI、ロボティクスを応用した診療、セルフメディケーション、デジタル医療機器を用いた自宅での検診など、選択肢が増えるだけです。例えば、新型コロナのPCR検査センターができるなら、インフルエンザに特化した検査センターもできますよね。私たち歯科医師は、これまでの外来診療を基盤に、新しい医療の提供方法を選択して、患者さんの状態や生活環境に合わせるだけです。

予想できた未来が早く来た

このようなたくさんの治療選択肢、診療スタイルから選択して医療を提供する未来がくることは誰にでも予想できることですが、「その変化のスピードが予想以上に早まった」というのが今回のCOVID-19がもたらした現実だと思います。変化する世界に適応しながらも、医療の本質を忘れず、情熱を持ちながらも冷静に、粛々と自分のやるべきことをやりましょう。最後までお付き合いいただきありがとうございました(了)。

著者長縄拓哉

歯科医師(医学博士)。ムツー株式会社代表取締役。

略歴
  • 東京歯科大学卒業。
  • 都内大学病院で口腔腫瘍、顎顔面外傷、口腔感染症治療に従事。
  • デンマーク・オーフス大学に留学し、口腔顔面領域の難治性疼痛(OFP)について研究。
  • 口腔顔面領域の感覚検査器を開発し、国際歯科研究学会議(IADR2015、ボストン)ニューロサイエンスアワードを受賞。
  • デンマークと日本の研究活動推進プロジェクトJD-Teletech日本代表。
  • (一社)訪問看護支援協会BOCプロバイダー認定資格講座総括医師。
  • 日本遠隔医療学会・歯科遠隔医療分科会長。
  • 日本口腔顔面痛学会評議員、同学会診療ガイドライン作成委員。
  • 日本口腔内科学会代議員。
  • 厚生労働省教育訓練プログラム開発事業 メディカルイノベーション戦略プログラム委員。
  • 千葉大学遠隔医療マネジメントプログラム委員。
長縄拓哉

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