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2020年11月のピックアップ書籍

2020/10/29 歯科NEWS

チェアサイドに1冊置いておきたい「舌の痛み」の完全対応ガイド『「舌が痛い!」という患者さんが歯科医院に来院した時に読む本』

近年、メディアなどの影響もあり、患者さんは少しの不安でも歯科医院を訪れるようになった。歯科医師は、日々の診療でう蝕や歯周病などの痛みを扱い、その多くで原因を突き止め対処している。 だが、患者さんが舌の痛みを訴えた場合はどうであろうか?その訴えを聞き、舌の粘膜に色や形態などの変化を見つけても、それが疾患なのか否か、またその状態が舌の痛みと関連するものなのかどうかを判断するのは難しい。 さらに、舌の疾患の病態は多様かつ複雑であり、舌の解剖学的特徴や症状、疾患の知識が必要となる。加えて、主訴に見合う客観的所見が見当たらない場合には、中枢神経(脳や脊髄)の問題、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛あるいは原因が特定できない(原因不明)痛みについても考えなければならない。このように考えていくと、わからないものは早期に高次医療機関を紹介したくなるのは当然である。 しかし、たとえばその舌の痛みが自身の歯科治療後に生じたもの、あるいは何年もメインテナンスで通院されている患者さんだとしたらどうであろうか。高次医療機関へ紹介する必要があったとしても、その前に適切な初期対応、すなわち舌の痛みに対する基礎知識を踏まえた適切な医療面接(問診)、診察と検査、そして診断が行えることは、一般歯科開業医にも必要であり、その対応をスムーズに行うことが、良好な患者-歯科医師関係を構築するために求められている。そして、実際には一般歯科開業医が適切な治療を行えることも少なくないのである。 以上のことは正論であり、誰もがそうありたいと思っている。ただ、そうはいっても舌の痛みの基礎知識を身につけ、適切な対応を行うことは簡単ではない。でも大丈夫。舌の痛みに対峙する一般歯科開業医に、強い味方が登場したのである。 今回、上梓された本書は、舌の痛みを訴える患者さんを診るときに必要な"痛みの分類やメカニズム、舌の疾患や全身疾患、歯科医院・高次医療機関での治療および医療連携"などについて口腔外科学、口腔顔面痛学、歯科心身医学、口腔神経機能学の各専門家、そこに精神科医も加わり総力を挙げてまとめられている。 痛みに対する基礎知識から始まり、医療面接、視診・触診、検査時に必要な舌の痛みの特徴と病態の基礎知識、舌の状態および粘膜疾患アトラス、必要な検査、歯科医院で行える治療、高次医療機関での治療と連携法、そして症例と、具体的に事細かに解説されており、舌の痛みだけでなく、その系統立った考え方は日常臨床のレベルアップにもつながる。 とくに豊富な舌の疾患の症例写真は、チェアサイドに置いておくことで一般歯科開業医の心強い味方となることであろう。自身の歯科臨床が確実にアップデートされ、患者さんの信頼度を高めることは間違いない。ぜひ手元に置き、日常臨床で活用されることをお勧めする。 評者:島田 淳 (東京都・医療法人社団グリーンデンタルクリニック) 和気裕之/依田哲也・監著 澁谷智明/中久木康一/ 宮地英雄/和気 創・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:8,800円(税別)・136頁

歯周病学とインプラント学の分野での基礎医学と臨床医学の隙間を埋める『基礎と臨床がつながる歯周解剖歯周病専門医が語る"目からウロコ"のペリオ&インプラント』

夏の日差しは高い。ふと時計を見上げるとすでに午後5時15分を指していた。「あと2人で今日は終診」とうれしさが思わず口をついた。夕食後に1日の診療を振り返ってみた。前歯CR充填1例(Ⅳ級マルチレイヤー法)、小臼歯CR充填1例(Ⅱ級トンネル法)、大臼歯CR充填5例(フィッシャーシーラントに近いⅠ級窩洞)、前歯麻酔抜髄即日根充2例、インレー形成2例、アンレー形成1例、大臼歯のエンド2例、智歯水平埋伏抜歯2例、MTM1例、そして下顎大臼歯フラップ手術1例などである。当院のフラップ手術の頻度は少ないが、今日は心なしかいつもより短時間で終わった。牧草氏の著書を読了した直後だからだろう。歯周解剖学という基礎知識があれば、自信をもってより楽しく、そして短時間で臨床ができることを再認識した。 歯周治療に携わるうえでもっとも大切なことは、歯肉溝で起こるイベントを知ることである。われわれの身体は上皮で被われ、上皮は生体の内と外を分け、水分の保全と感染の防護を担っている。やけどで全身の上皮を失えば、死を意味することになる。身体で唯一上皮が欠落している部分が歯の萌出部位である。しかし、外胚葉性間葉から派生したエナメル質は上皮が進化したものと考えられないこともなく、硬くて水分も細菌も通過させないエナメル質は上皮の役割を補って余りある。ただし、エナメル質周囲には歯肉溝という生体の内と外の交通路が存在し、ここでは絶えず迫りくる口腔内細菌と生体の防護が拮抗している。この防護の最前線にいるのが付着上皮である。付着上皮がなければ、歯のある動物はすべて感染症で死滅するはずである。インプラント治療を受けている人ではなおさらである。神がつくったこの約1~数mmの組織の役割は神秘的で、驚異的である。 付着上皮は、発生学的には退縮エナメル上皮が移行したものであるが、後天的には口腔粘膜上皮の化身である。しかし、口腔粘膜上皮が付着上皮になるためには、付着する相手が滑沢で無毒であることに加え、付着上皮がある程度の圧をもって相手に接するという条件が必要である。これには、付着上皮をバックアップするための結合組織や結合組織付着が必要となる。歯周治療のゴールはまさに付着上皮の機能を助けることにある。根面を滑沢にして付着上皮化を促すこと、炎症を消退させてコラーゲン線維の量と質を改善することである。ときには歯肉移植が強い味方になる。補綴装置の材質や形態も手助けになる。インプラントでは、フィクスチャーとアバットメントの連結部付近の形態(ex.プラットフォームスイッチング)と表面性状が感染防護の予後を決定する。 牧草氏の30年間にわたる歯周病学と解剖学の研究、15年あまりの卒後教育に携わってきた経験をもとに、「歯周病学とインプラント学の分野での基礎医学と臨床医学の隙間を埋める」ために書かれたものである。まさに目からウロコの連続である。 評者:月星光博 (愛知県・月星歯科クリニック) 牧草一人・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:13,000円(税別)・188頁

歯周組織再生をめざすすべての歯科医師にとって必携の1冊『FGF-2と歯周組織再生療法 リグロス®の効果、手術のポイント、応用例』

「再生治療を受けたいのです」。昨今、そんな言葉を患者からいただくことが多くなってきたように感じる。iPS細胞やES細胞という学術的な用語の世間への浸透と、それを用いた医科領域での臨床研究の報告も相まって、歯周治療の分野でも再生治療へのニーズは年々高まっているといえよう。FGF-2による歯周組織中に内在する多能性幹細胞の活性化とそれによる歯周組織再生のエビデンスと臨床でのエッセンスが、この1冊にはすべて詰まっている。 本書は、3つのパートから構成されており、「リグロス®の原理とベーシック」、「リグロス®の臨床・テクニック」、「リグロス®の臨床例と術後経過」と基礎研究から臨床応用へと道筋を立てて解説され、読者を飽きさせない豊富な写真と図が用いられており、さすがはクインテッセンス出版の歯学書というところである。 PART1「リグロス®の原理とベーシック」では、FGF-2に注目するに至った経緯や、イヌやサルを使った組織学的解析から、細胞を使った分化能と分泌タンパクの証明をする過程、そして治験による安全性と有効性の評価までを開発者である村上先生ご自身が執筆されている。骨移植やGTR法、エムドゲイン®との比較も交えながら、歯周組織再生療法のなかでのリグロス®の立ち位置が基礎的な見地からも明快に解説されており、リグロス®がいかにしっかりとした科学的根拠のうえに開発されたのかがよくわかる。 PART2「リグロス®の臨床・テクニック」では、リグロス®の適応症例から、用意する器具、歯周組織再生療法における局所麻酔のかけ方・切開デザイン・縫合・術後管理までをわかりやすい図と写真を交えながら解説されている。これさえ読めば初めてのリグロス®を用いた歯周外科でも迷うことなく施術可能であろう。多くの成書では術後管理はおろそかにされがちであるが、一目瞭然のスケジュール表は患者への説明にも使えそうなほど明快である。 PART3では、多くの先生の素晴らしい症例が供覧されている。基礎的なリグロス®の使用から、かなり応用的な用法まで実に幅広い症例がていねいなステップ写真とともに紹介されている。担当した先生の臨床実感まで考察されていた点は実に感服である。 基礎研究から臨床研究へ、そして実用化へと繋げる道のりは長く険しい。だからこそ、長年の研究成果を社会に還元することはわれわれ研究者にとって大きなロマンであり、リグロス®はまさにその成功例である。本書は、村上先生を筆頭として、多くの研究者・臨床家の先生の25年が詰まった1冊である。検証と経験に基づいた本物の知識とノウハウがぎっしりと詰まっており、FGF-2を用いた歯周組織再生療法の基礎から臨床までを網羅し、大変理解しやすい構成となっている。歯周病専門医のみならず、歯周組織再生をめざすすべての歯科医師にとって必携の1冊となることは自明である。 評者:岩田隆紀 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野) 村上伸也・監著 北村正博・編著 岩崎正一郎/浦野 智/王 穎/小方頼昌/ 齋藤 淳/鈴川雅彦/鈴木瑛一/高山真一/ 瀧野裕行/二宮雅美/野崎剛徳/橋本鮎美/ 水上哲也・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:8,500円(税別)・148頁

周術期等口腔機能管理を始めようとしている初心者にも、十分な経験を積んだ臨床家にも有用な書『周術期等口腔機能管理の実際がよくわかる本』

周術期口腔機能管理については、さまざまな効果が学会や論文で報告されているが、その内容についてはそうだろうと素直にうなずけるものもあれば、容易には信じがたいものもある。 2012年に周術期口腔機能管理料が保険収載されたとき、一歯科医師として正直よかったと思う反面、実際にこの周術期口腔機能管理をきちんとできる人がどれだけいるのかが疑問であった。なにしろ多岐にわたる原疾患に対する医学的知識、また、その原疾患が口腔に及ぼす病態の理解に加えて、口腔機能管理が全身に及ぼす影響についての冷静な分析がいるだろうと懸念していたからである。これまで、周術期口腔機能管理に関していくつかの書籍が上梓されたが、本書のように評者のこの懸念をここまできれいに払拭してくれるものは見当たらなかった。 本書は冒頭、編著者である梅田正博先生の辛口の文章で始まり、読者はいきなり口腔機能管理の現場へと招かれる。「第1章 周術期等口腔機能管理の基礎知識」では、概要、効果、対象患者、開始時期などの基本事項から、関連する臨床研究報告、医科歯科連携やチーム医療の必要性、地域の開業歯科医院における歯科医師・歯科衛生士のかかわり方まで、計20のQ&Aで簡潔にわかりやすく解説されている。 ウォーミングアップがすむと、ちょうどよいタイミングで「第2章 周術期等口腔機能管理の実際」に入り、がん、心臓病、脳卒中、臓器移植、人工関節手術患者や、がん放射線治療、がん薬物療法、人工呼吸器関連肺炎、顎骨壊死、がん終末期の患者における口腔機能管理の実際を知ることになる。 つづいて「第3章 周術期等口腔機能管理システムの構築」では、適切な周術期等口腔機能管理を、どのようにシステムとしてつくり上げればよいのかという疑問に、待ってましたとばかりに実際のシステムづくりのノウハウが細かく書かれている。 また「第4章 周術期等口腔機能管理に役立つ製品等」における関連製品の紹介、巻末の医科歯科間の診療情報提供や患者への説明に活用できる「サンプル書式集」も、具体的で口腔機能管理の実践に大いに役に立つと思われる。 本書の大きな特徴は基礎疾患の十分な情報を読者に提供したうえで、その基本的な対応を現場感覚で見事に描きだしていることである。本文の文章も平易で参照している図表もわかりやすい。本書はこれから周術期等口腔機能管理を始めようとしている初心者にも、十分な経験を積んだ臨床家にも有用な書としておすすめしたい。 読者は本書を読みすすめるうちに、いつの日か多くのエビデンスが集積され、口腔機能管理が全身に及ぼす影響を明らかにしたいという願いが徐々に大きくなり、明日の診療への大きな希望が胸に灯るのを感じるだろう。 評者:鄭 漢忠 (北海道大学大学院歯学研究院口腔顎顔面外科学教室) 梅田正博/五月女さき子・編著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:8,000円(税別)・128頁