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粧うからお口の健康を考える 化粧療法とは 第2回:化粧と口腔ケアの共通点は何?

粧うからお口の健康を考える 化粧療法とは 第2回:化粧と口腔ケアの共通点は何?
粧うからお口の健康を考える 化粧療法とは 第2回:化粧と口腔ケアの共通点は何?
突然ですが、問題です。

問題1:仲間外れはどれ?(ヒント:化粧品ではないものが1つ混じっています)

①化粧水 ②薬用リップクリーム ③アイシャドウ
④歯磨き剤 ⑤日焼け止め ⑥香水

正解は、②薬用リップクリームです。法律上、医薬部外品に分類され、他はすべて化粧品です。実は、歯磨き剤も広義では化粧品に分類されます(化粧品の詳細な定義は、薬機法2条3項をご参照ください)

では、もう1問。当たり前ですが、化粧水や口紅などの化粧品を使って行う行為は「化粧」、そして歯磨き剤を使って行う行為は「歯磨き」です。

問題2:「化粧」と「歯磨き」という2つの行為をまとめて表現できる言葉は何?



答えは「整容」です。介護や看護の領域で、ADL(Activity of daily living 日常生活動作)の分類の中に「整容」という項目があります。整容とは、容姿(姿・形)など身だしなみを整えることを言い、具体的な項目としては、口腔ケア(歯磨き等)、手洗い、爪の手入れ、洗顔、整髪、髭剃り、化粧(スキンケア・メイク)になります。実は、口腔ケアも化粧も整容行為に分類されます。

過去に化粧療法を実施していた介護施設で、参加していた入居者が、化粧教室に参加するようになって、みずから「入れ歯を作りたい」との申し出がありました。その施設には訪問歯科が毎週来ていたのでいつでも作れる環境にあったのですが、義歯を製作していませんでした。「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉がありますが、「化粧をすると入れ歯を作る」という事例がありました。なぜこのようなことが起きたのでしょうか。詳細は前回ご紹介させていただいた拙著『「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法~エビデンスに基づく超高齢社会への多職種アプローチ~』(クインテッセンス出版)をご覧ください。ヒントは口唇です。



化粧と口腔ケアは非常に近い関係にあり、化粧をうまく活用することで、皆さんの日頃の活動のお役に立つ可能性を秘めています。

「8020」運動の成果もあり、2017年の厚生労働省の発表では8020達成者が5割を超えました。今後は、「食べる」「話す」「笑う」など口の機能を維持する取り組みが求められます。高齢者が口腔機能低下症にならないように「機能的口腔ケア」の需要が高まることは間違いありません。化粧療法は、口の外から口の機能を維持するケアとして期待できます。

そうはいっても、医療の現場で化粧?と思われるかもしれません。化粧というと口紅やファンデーションなどメイクをイメージする方が多いと思いますが、前述したように整容という視点で化粧を捉えてみると、介護や医療の現場でも受け入れることができると思います。整容は、身だしなみを整え、自分らしさを維持する行為でもあります。生きている限り年齢や身体機能に関係なく自分らしさは必要です。歯科に現場から高齢になっても自分らしさを維持できるサービスを提供してみてはいかがでしょうか?

最後に問題です。つぎの式の答えを考えてみてください。
問題3:スキンケア×唾液腺マッサージ=?

きっと現場で化粧療法を活用するヒントにつながると思います。
答えは次回お伝えします。

著者池山和幸

株式会社 資生堂 社会価値創造本部 マネージャー

略歴
  • 2005年、株式会社 資生堂入社。
  • 専門は老年化粧学、化粧療法学。
  • 京都大学大学院医学研究科にて学位(医学)取得。
  • 大学院在学中に介護福祉士の資格を取得。
  • 入社後、化粧療法研究に従事。
  • これまでに約200の高齢者施設で、高齢期の化粧を医学的観点・介護の視点で効果検証。
  • 2014年から研究知見をいかし、高齢者美容サービス開発にも携わる。
  • 高齢期の化粧・美容という視点で、高齢者の外出支援や健康寿命の延伸などの社会的課題解決に取り組む。
  • 「化粧療法研究室」内のブログで情報発信中。
  • 近著に『装いの心理学(北大路書房)』(分担執筆)がある。
池山和幸

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