これからは、口腔細菌コントロールで生活習慣病予防。病気にならないための新しい口腔ケア、「3DS 除菌外来」とは
口腔内細菌が血管に入り込んで増殖し、慢性的に悪い影響を及ぼす恐ろしい歯原性菌血症。その予防策として注目を集めている、「3DS除菌外来」をご存知ですか?除菌によって口腔内環境をコントロールし、全身疾患を予防することを目的とする専門外来を開設された鶴見大学歯学部教授の花田 信弘先生にお話を伺いました。 花田 信弘先生(右) 鶴見大学歯学部教授。 同大同部附属病院にて、3DS除菌で全身疾患予防にアプローチする専門外来を開設。 山田 秀則先生(左) 鶴見大学歯学部 探索菌講座助教。 同大同部附属病院の「3DS除菌外来」における臨床の責任者を務める。実用的で虫歯予防効果の高い「3DS除菌外来」とは
歯原性菌血症の予防には、PMTCによるバイオフィルム除去が不可欠ですが、それだけでは不十分です。1998年にイギリスで、PMTC後に口腔内の常在菌ミュータンスレンサ球菌を除菌する方法を示した論文が発表されました。我々はこの研究に着目。臨床追試験を行った結果、論文で示された方法よりも簡便に、外来でミュータンスレンサ球菌を除菌できる画期的なシステムを考案。それが「3DS除菌外来」です。病気にならないための診療として重要度を増す、「3DS除菌外来」
鶴見大学歯学部附属病院の「3DS除菌外来」は、生活習慣病が気になる60歳代の男性を中心に受診者が年々増加傾向にあります。虫歯菌や歯周病菌を除去して予防歯科へとつなげる治療を行いながら、患者さん自身が全身疾患予防に向けたセルフケアに取り組めるよう細やかな指導を行っています。歯の健康が全身疾患のリスク因子であることは明らか。だからこそ歯科医院で、こうした全身の健康指導が行われるべきだと考えています。「3DS除菌外来」とは?
「3DS除菌外来」は、口腔内のバイオフィルムを外来で物理的に取り除いたあと、患者さんが毎日、歯みがきのかわりに歯型からつくったトレーに薬剤を入れて塗布することを習慣化し、歯原性菌血症を予防する治療法です。 3DS除菌の方法 患者さんの歯型から作成した上下のトレーに薬剤(市販の抗菌薬や殺菌消毒薬)を入れる。 ↓ 歯にトレーを装着し口腔内細菌を除菌。無菌状態となった歯面に、口腔内細菌を含まない、常在菌によるバイオフィルムが形成される。 ↓ 歯原性菌血症を予防 ↓ 全身疾患の予防 3DS除菌により、う蝕・歯周病など歯の病気によって発生する細菌の体内への拡散が防げます。つまり、口腔内細菌に起因する生活習慣病の発症リスクを抑えることができます。鶴見大学附 属病院における「3DS除菌外来」の流れ
身体測定+ 改善 指導
①精密な機械を使って 身体の様子を細かく判定 血管の状態を検査するFMD検査 血管の内側の機能が低下していないかを細かくチェックして、心血管リスクを測定 体組成計で筋肉量や基礎代謝量などを測定 体の組成に関する様々な数値を測定しながら、担当医からのアドバイスも ②測定結果をもとに改 善のためのポイントを指導 血圧の詳細な測定や体の組成数値から、生活習慣病のリスク要因について理解を深めていただきます。さらに運動面・栄養面の改善アドバイスを提供し、セルフケアへの意識を高め、取り組みをサポートします。 3DS診療を提供する歯科診療所は、全国約200施設へと広がっています。病気にならないための診療は、医科・歯科連携において今後ますます重要な役割を果たしていくことは間違いありません。
著者花田 信弘
鶴見大学歯学部教授
- 1953年福岡県生れ。
- 福岡県立九州歯科大学歯学部卒業後、同大学院修了。
- 米国ノースウェスタン大学博士研究員、九州大学教授(厚生労働省併任)、
- 国立保健医療科学院部長を経て、
- 2008年より現職(鶴見大学歯学部探索歯学講座)。
- 同大同部附属病院にて、3DS除菌で全身疾患予防にアプローチする専門外来を開設。