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勤務態度等に問題のある社員の対応方法①
~解雇できるのはどのような場合か~

2021/1/23 歯科医院経営

はじめまして。弁護士の佐賀寛厚と申します。歯科医院などのヘルスケア分野の人事・労務分野に、経営者側の立場で数多く携わっている弁護士の立場からコラムを書かせていただきます。

まず、歯科医院の経営者の方々が一番頭を悩ます「勤務態度等に問題のある社員(問題社員)の対応方法」というトピックについて書かせていただきます。このトピックについては、色々なパターンがありますので、何回かに分けてご説明します。

【目次】
 1無期契約社員(正社員など)の場合
 (1)解雇できるのはどのような場合か
 (2)退職勧奨をする場合の注意点
 (3)問題社員を退職させることができない場合の対応方法
 (4)具体的な問題社員のパターンごとの対応方法
 2有期契約社員(契約社員やパート社員など)の場合

●解雇とは
解雇とは、従業員の同意を得ることなく、使用者の一方的な意思表示により雇用契約を終了させることをいいます。

●30日前に予告すれば解雇できるのか
経営者の方から「正社員であっても30日前に予告をしたら自由に解雇できるんでしょう?」という質問をされることがありますが、これは大きな間違いです。たしかに、労働基準法では、「使用者が、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。」と定めています(第20条1項本文第1文)。しかし、これは解雇をする場合の手続的な要件を定めたものにすぎず、解雇の実質的な要件を満たさない場合には、30日前に予告をしても解雇は無効となってしまいます。

●解雇の実質的な要件とは
まず、雇用契約書(労働条件通知書)や就業規則などに、どのような場合に解雇するか(解雇事由)が記載されていると思いますが、この解雇事由に該当しない限り解雇ができないという考え方が有力です(なお、雇用契約書や労働条件通知書を作成していない場合、労働基準法に定める労働条件の書面による明示義務(第15条1項)に違反しますので、直ちに整備が必要です。)。次に、雇用契約書や就業規則に定められた解雇事由に該当した場合であっても、当該解雇が「客観的合理性」と「社会的相当性」の両方を満たさない限り、解雇は無効となってしまいます(労働契約法第16条)。そして、一般的には、解雇の事由が重大な程度に達しており、他に解雇を回避する手段がなく、かつ従業員にとって宥恕すべき事由がほとんどない場合でないと、解雇は無効となってしまうと考えられています。

●解雇が無効となった場合のリスク
解雇が無効となった場合には、解雇をした従業員との雇用契約が、解雇日以降もずっと存続していることとなります。そうすると、まず、解雇をした従業員が、職場に戻ってきてしまいます。その結果、当該従業員と職場で毎日顔を合わせることとなるので、経営者はもちろん他の役職員にとっても非常にストレスとなるうえ、当該従業員が増長し、解雇以前よりも勤務態度が悪くなる可能性が高いです。また、問題のある従業員を職場復帰させたうえ、当該従業員の増長を止められない結果、他の役職員に対しても悪影響を及ぼし、職場内の秩序が乱れることも多いです。さらに、当該従業員に対して、当該従業員が勤務していない期間分(通常、解雇日から職場復帰するまでの期間分)の賃金を支払う必要があります(民法第536条2項。上記期間中、別で働いていた場合の計算は若干複雑ですので省略します。)。例えば、解雇後の1年後に解雇が無効であるという判決がされ、その結果、当該従業員が職場復帰した場合、当該従業員が働いてもいないのに、解雇後の1年分の賃金を支払う必要があるのです(もちろん、職場復帰後は、それまでと同様に毎月の賃金を支払わないといけません。)。

●まとめ
以上のとおり、解雇が有効となる要件は非常に厳しいうえ、解雇が無効となった場合のリスクは経済的にも精神的にも非常に大きなものとなります。そのため、問題社員を退職させたいと考えた場合には、紛争に強い専門家に事前に相談され、慎重に対応する必要があるといえます。次回は、解雇できない場合、退職勧奨をする際の注意点についてご説明いたします。