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超高齢時代に役立つ 歯科に必要な全身疾患の基礎知識
―病気をもった患者さんが歯科医院に来たらどうする?―
第4回:糖尿病の患者さんへの対応

2021/2/6 臨床ライブラリ

前回までは、病気をもつ高齢者が歯科医院に来た場合の初期対応について解説してきました。今回からは疾患別に注意すべき点を解説していきたいと思います。一般歯科診療所にはさまざまな疾患を有する患者さんが受診されると思いますが、今回は糖尿病患者さんが歯科を受診された際の対応について取り上げます。

糖尿病の分類と治療の流れ

糖尿病は、インスリン分泌の作用不足による慢性的な高血糖状態を呈する代謝疾患群の総称で、慢性的な高血糖はさまざまな全身合併症の原因となることから、歯科治療に際しては注意が必要です。その分類は、インスリン依存型(1型)とインスリン非依存型(2型)、他の疾患や薬剤に起因するその他の糖尿病、妊娠糖尿病の4つに分けられます。日本の糖尿病患者は、約90%がメタボリックシンドロームに起因する2型糖尿病患者とされています。2型糖尿病の治療はまず食事療法、運動療法から開始され、血糖コントロールが得られない場合は経口血糖降下薬、その後はインスリン治療が行われます。 糖尿病の基礎知識として、重要なのが合併症に関する知識です。糖尿病はさまざまな合併症をともなうことが知られています。三大合併症として、網膜症や腎症、神経障害があり、その他にも大血管合併症として脳卒中や虚血性心疾患が知られています。また、免疫細胞の機能低下による易感染性や、動脈硬化による血流障害、神経障害による皮膚のバリア機能低下による創傷治癒遅延についても注意が必要です。

糖尿病患者さんの歯科治療はここに注意!

糖尿病の患者さんの歯科治療に際しては、現在どのような糖尿病治療を受けているか、糖尿病の合併症がないかを問診し、糖尿病の重症度やコントロール状況を推測することが重要です。当院の問診では、いつから糖尿病治療を受けているか、合併症として腎機能障害や大血管障害がないかどうかを確認するようにしています。 抜歯や歯周外科などの観血的治療の可否は、処置の内容や合併症の程度によって判断されますので一概には言えませんが、目安としては、「空腹時血糖値150mg/ml以下」「HbA1c 7.0%以下」「低血糖症状を認めない」「糖尿病性ケトアシドーシスがない」などが挙げられます。そのうえで、精神的ストレスや疼痛を可及的に抑え、内因性カテコラミンによる血糖値上昇をできるだけ抑える必要があります。局所麻酔薬に含まれる血管収縮薬は、肝臓の嫌気的解糖を促進するため血糖値を上昇させると言われていますが、一般歯科診療所で通常使用される程度の量であれば大きな問題にはならないとされています。 なかでも特に重要と考えているのが易感染性、創傷治癒不全への対応です。治療前に十分に消炎をしておくこと、術前後の抗菌薬投与を心がけましょう。腎機能に合わせて投与量を調整する必要がありますので、投与量については糖尿病治療を担当する医師に相談が必要です。また、局所麻酔の刺入部位に潰瘍を形成することがありますので、麻酔針の刺入回数はできるだけ少なくすることが望ましいと考えます。 さらに、重症低血糖は認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクともなり得るため、高齢の糖尿病患者では特に注意が必要とされています。インスリン注射やスルホニルウレア薬(SU薬)、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)を使用されている場合は特にリスクが高く、これらの薬剤を使用している糖尿病患者さんに対しては歯科治療前にきちんと食事を摂取してもらうこと、歯科治療により食事摂取が困難になることが予想される場合はその旨を医科主治医へ連絡し、「シックデイ」の対応をとってもらうことが重要です。 次回は抗血栓療法患者さんの歯科治療時の注意点についてご紹介します。