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2021年3月のピックアップ書籍

2021年3月のピックアップ書籍
2021年3月のピックアップ書籍

明日からのCR修復に新しい何かをもたらしてくれる1冊
別冊 YEARBOOK 2021『CR修復の臨床最前線 臨床家15人の最新適応基準,コンサルテーション,治療テクニックとマテリアル』

昨今、評者の歯科医院には「"ダイレクトボンディング"で"すきっ歯"を治してほしい」といって来院する患者がいる。近年の接着歯学の飛躍的発展によるコンポジットレジン(以下、CRと略)修復の臨床応用範囲の拡大が、歯科医師はもちろん、世間一般にも広く知られ、求められる時代になってきたということだろう。本別冊は、そのような患者の希望に応えるための格好の参考書である。 本別冊は,Part1とPart2の2部構成である。まず、Part1では、斯界を代表する秋本尚武先生が、「コンポジットレジン修復アップデート─これまでの10年とこれからの10年─」と題して、CR修復材料や技術の変遷と現在地をコンパクトに、かつ過不足なくまとめられている。秋本先生は同論文で「いくら材料が進歩してもそれを使う歯科医師の考え方と技術が追いついてこなければせっかくのすばらしい材料と治療法が患者に提供されることはない。歯科医師の接着修復に対する捉え方と考え方、そして治療技術の進歩が大切である」と書かれているが、本別冊では、まさにこの「接着修復に対する捉え方と考え方」をPart2「私のCR修復の現在の臨床的位置づけと最新ケースプレゼンテーション」で学ぶことができる。 Part2は、①CR修復の適応、②コンサルテーション、③臨床例、④臨床(材料)のテクニック、⑤使用材料、を15人の気鋭臨床家がそれぞれ解説していく論文構成となっている。多くの場合、歯科臨床の治療法は患者(性格、職業、経済状況、居住地、医療観等)と歯科医師(性格、開業地、診療方針、医療観、技術、経験等)が個々に有するさまざまな要素が掛け合わさって決定されるもので、その正解は1つではないと評者は考えている。それゆえ、本別冊でも、①と②は十人十色の内容なのが興味深い。ちなみに、評者は自院の開業時、自身の専門性(保存修復科の大学院を卒業)と照らして、どのような診療スタイルとするかで相当悩んだ。それゆえ、とりわけ②のコンサルテーションで各著者が詳述しているa.治療法の説明の仕方、b.保険か自費かなどの料金体系、c.予知性の考え方とその補償内容、d.メインテナンス等は、共感したり、斬新な考えに驚いたり、非常に楽しく読めた。 ③の臨床例は、CR修復のトップランナーが著者なので見ごたえ十分。5人の著者は、臨床例の一部を動画を交えて解説されており、その理解の大きな助けとなっている。③のすばらしい臨床例を生み出す技術や材料、器具についても、④や⑤で紹介されている。これからCR修復に本格的に取り組もうという読者諸氏は、本別冊を手に取り、まずは気になる著者、あるいは目標とするCR臨床像を見つけられて、その材料、器具を"完コピ"してみるところから始めてはいかがだろうか。 いずれにしても、本別冊が読者諸氏の明日からのCR修復に新しい何かをもたらしてくれることは間違いないだろう。 評者:品川淳一 (東京都/上野品川歯科・矯正歯科) 青島徹児/秋本尚武/天川由美子/飯田真也/ 泉 英之/大谷一紀/須崎 明/高田光彦/ 田代浩史/樋口克彦/泥谷高博/辺見浩一/ 三橋 純/八木洋二郎/吉田健二・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,400円(税別)・214頁

永続性のある治療の成功の可否を決めるエンド治療に「楽しく」取り組むための1冊
『驚くほど臨床が楽しくなる! こだわりエンドサブノート』

日々臨床に携わり、悩めるすべての臨床歯科医師にとって待望の書が出版された。GPによってGPのために書き下ろされた、臨床で実践できるヒントが満載の本書『驚くほど臨床が楽しくなる!こだわりエンドサブノート』である。評者が嫉妬を覚えるほどの充実したすばらしい内容であることは間違いない。 評者は2018年に『こだわりペリオサブノート』を上梓している。サブタイトルを「驚くほど臨床が変わる!」としたが、今回は何とそれが「驚くほど臨床が楽しくなる!」にアップグレードされているではないか。そこには著者のひとりである吉川宏一先生の「臨床にとって大切なエンドを心から好きになってもらい、ひとりでも『エンド大好き』な先生が増えることで、ひいては『臨床大好きな先生』が増えてほしい」という思いが込められている。そんな吉川先生のもとに集まったJIADSエンドコースの講師陣の福地康生先生、栗原仁先生、渥美克幸先生が、マイクロエンド・接着支台築造・ニッケルチタンファイル・エンドサージェリーなど、それぞれの得意分野を活かして多角的観点からエンドに向き合っており、4人が絶妙なハーモニーを奏で最高のパフォーマンスを発揮している。 この「エンド4(カルテット)」の講師陣によってまとめられた本書は、若手からベテランまで臨床家が「ここが聞きたい」と思うポイントを網羅しており、歯内療法の基本的な考え方から、診断、治療法、イレギュラーなトラブルまで、すべてを解決してくれる。評者も引き込まれるように読み終え、改めて歯科治療の根幹をなすのは根管であるということを痛感させられた。 歯内療法は、歯科医師の責務ともいえる永続性のある治療の成功の可否を決める重要な要素の1つであることはいうまでもない。しかし若手の先生のなかには、その成功の判断基準が根管充填後のエックス線写真の写り方や根尖病巣の再発の有無などであったり、疑問を抱えたまま過ごされている先生も多いのではないだろうか。歯内療法は病因を除去し、自己免疫により病巣を治すという治癒過程であり、治療における実感を得がたく治療結果がすぐにでないため、技術の向上が後回しになり苦手意識をもちやすいのかもしれない。 本書は実践に即した内容でエンドの悩みを1つひとつ解決することができ、成功への明確な道標となるであろう。また、こだわりシリーズの特徴でもある、手軽に読めて日常臨床にいつも寄り添えるサブノートという役割もしっかり引き継がれている。著者らの歯内療法に対するこだわりや熱意を感じることができ、読者の歯内療法へのモチベーションも上げてくれると確信している。ぜひ、若手からベテランの先生まで本書を手にしてじっくり目をとおしていただき、エンドをより楽しいものにし、予知性の高い治療を実践して永続性のある治療を提供するという歯科医師の責務をまっとうしてほしい。 評者:瀧野裕行 (京都府・タキノ歯科医院) 吉川宏一/福地康生/栗原 仁/渥美克幸・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:10,000円(税別)・152頁

審美修復を極めたい歯科医師と歯科技工士がイメージを共有できるバイブル
『Dental EstheticConcept─歯科技工士とともにつくる前歯部審美修復』

『歯科技工士とともにつくる前歯部審美修復』と副題にあるように、審美修復の成功の鍵は歯科医師と歯科技工士がそのコンセプトを共有し、互いの懐をよく理解することが重要である。歯科医師による歯科医師のための審美修復の成書は多数あるが、歯科技工士による執筆のものは非常に貴重な存在であるといえよう。 本書は4章で構成されており、第1章ではすばらしい症例提示とともにその重要なコンセプトが紹介されている。審美的・機能的な要件を満たす治療ゴールのポイントを単独歯、複数歯、欠損症例に沿って解説している。また、われわれ歯科医師が迷いやすいマテリアル選択も詳細な基準とステップが製作者側の目線で述べられているので、歯科医師サイドでも適切なマテリアルが選択できるガイドラインとなっている。 第2章では歯冠審美の獲得と題して、理想的な歯の形態・配置などの基準・指標から始まり、支台歯の色調を考慮した各種マテリアルのレイヤリング・ステインテクニックなど、普段みられない技工サイドの製作工程が豊富に示されている。とくに明度のコントロールのコンセプトは色調を合わせる困難さを解決してしまう目から鱗の内容となっている。 また、一方でいくら歯科技工士が審美的な補綴装置を製作しても、装着される歯の周囲組織が健康かつ審美的な状態でないとベストとはいえない。とくに欠損症例は軟・硬組織の状態が理想的でないため、より審美的な結果をめざすためには、歯肉審美の獲得は必須となる。そこで第3章、第4章は歯肉審美の獲得とインプラント審美と題して歯周組織と補綴装置を調和させるためのノウハウが満載となっている。第3章での特筆すべき内容は、従来の成書では抽象的な表現で述べられていた"サブジンジバルカントゥアの設定"についてである。歴史的な背景を紐解きながら膨大な論文データを読み解き、よく整理された理論展開となっており、かつ著者の臨床経験を交えた考察も示されている。この部分は非常に体現しにくいところなのでぜひ参考にしてほしい。第4章では、何よりも症例提供していただいている歯科医師サイドのインプラント周囲組織のマネージメントのレベルの高さが秀逸であり、その環境下でのインプラント補綴における基本的な設計コンセプトやテクニックがしっかりと反映された都築氏の補綴装置の完成度は目を見張るものがある。 以上、簡単な抜粋であるが、前歯部審美修復の単独歯からインプラント補綴までマスターするためには必読な内容となっている。書籍では伝わりにくい技工作業の動画閲覧サービスもボリュームがあり、一見の価値があるのでご覧いただきたい。 最後となるが、本書は世界的にも著名である都築氏の執筆のため、歯科技工士に向けの内容と思われるが、審美修復を極めるならば歯科医師も手に取っていただき、ともにイメージが共有できるバイブルとして推奨したい1冊である。 評者:山﨑長郎/山﨑 治 (東京都・原宿デンタルオフィス) 都築優治・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:14,500円(税別)・220頁

50年に及ぶ臨床経験からの「こだわり」の術式や治療に対する考え方が学べる名著
『長期経過症例から紐解く根尖病変と骨縁下欠損その傾向と対策』

下川公一先生の『長期経過症例から紐解く根尖病変と骨縁下欠損』が上梓された。遺作となったことは非常に残念ではあるが、50年に及ぶ臨床経験から生まれた「こだわり」の術式や治療に対する考え方からメインテナンスまでを、長年監著者を支えた一番弟子の倉富覚先生が渾身の思いで綴った書籍である。 『治療の永続性のカギとなるのが、歯内療法と歯周治療である。これらの基本治療をないがしろにして、いかによい補綴装置を製作できたとしても、それは砂上の楼閣に過ぎない』。よく聞かされた言葉であり、歯の保存に対する強い熱意がうかがわれる。監著者は全国的に知られた名医であるが、講演のうまさは群を抜いて目を見張るものがあり、本書もこれをうまく反映している。 「Prologue:臨床医としての出発点」では、監著者が臨床医をめざしながら、病理学教室に通う経緯が紹介されている。そこで、何度根管治療を試みても「治らない症例」から教科書とは違う臨床上の現実に直面し、あらためて歯の保存に対する決意が記されている。つぎの「ChapterⅠ:根尖病変と骨縁下欠損の病理組織学的概念」では、監著者の真骨頂である発生学、病理組織学、免疫学の知識から、口腔周囲組織の特異性や炎症の原因と生体防御のメカニズム、根尖病変と骨縁下欠損の治癒の違いなどが解説されている。「ChapterⅡ:根尖病変の治し方」では、国際レベルで確立している歯内療法の術式のさまざまな疑問点と問題点を抽出し、症例をとおしてその対応を解説している。とくに一般的に否定されているオーバー根充やオーバーインスツルメーションが必要なケースが提示されており、熟読してほしい。「ChapterⅢ:骨縁下欠損発症の原因とその対応」では、「歯周疾患症例において治療終了後、経時的に生じるトラブルが術者の頭痛の種である」と臨床家が共有する悩みを吐露されている。その問題に対して、骨縁下欠損症例にフォーカスが当てられている。「ChapterⅣ:エンド・ぺリオ病変」では、感染ルートの違う根尖性と辺縁性歯周組織炎が混在している難治性のエンド・ぺリオ病変を、エンド由来なのかペリオ由来なのか、両者が複合しているものかを分類し、それぞれの病態の違いや治療の手順が示されている。最後は「ChapterⅤ:メインテナンスと経過観察の重要性」である。患者さんが望む歯科治療は「より美しく、何でも噛めて、快適に、丈夫で、長持ち」である。これは術者の願いでもあるが、現実的にはそんなに甘いものではなく、形あるものはいつか壊れる。そのときに無用なトラブルを避けるべく、実際の事例やメインテナンスのインフォームドコンセント、チェック項目などをぜひとも参考にしてほしい。 13のColumnのなかに「歯科人生は終生研鑽なり」と記述されている。読者にとって治療の幅やレベルアップに繋がることは明らかで、歯科人生観をも変えうる名著となっている。 評者:上田秀朗 (福岡県・うえだ歯科 北九州歯学研究会会長) 下川公一・監著 倉富 覚、・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:26,000円(税別)・336頁

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