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口腔機能発達不全症 その12 小児の口唇形態の年齢的変化

口腔機能発達不全症 その12 小児の口唇形態の年齢的変化
口腔機能発達不全症 その12 小児の口唇形態の年齢的変化
習慣性口呼吸の原因を大きく5つに分けた。



今回から、軟組織の問題 3:口輪筋について考えてみる。


出生直後の新生児は、母乳を飲みやすい様にさまざまな特徴がある。
まず口蓋中央部に"吸啜窩"(くぼみ)がある。これで乳首の取り囲みを容易にする。
そして、上下の歯グキの間には"顎間空隙"。



これは母親の乳首を傷つけないためのものだ。
また頬には、"ビシャの脂肪床"(脂肪組織)がある。このため、頬が膨らみ丸っぽい。
これらのおかげで、乳首は周りの組織に密着し隙間がない。
そこでわずかの舌の動きで母乳が飲める。
この際、口唇は乳房に接しているだけだ。
この時期、口唇閉鎖力の発達は十分ではない。


さて乳児期の口唇は、厚く全体的に丸く上口唇は凸型をしている。
そして口唇閉鎖力・嚥下力が高まると横長に見える。



すなわち口唇の形態は、口腔機能を現す"ものさし"の一つといえる。


そこで保育園児を対象に、年齢による口唇の形態の変化について調べた。
まず園児がリラックスしている状態で口唇を撮影する。
そして、写真上で口唇を計測しその縦/横比を求めてみた。
数値が大きければ丸く、低ければ横長の口唇となる。
この割合に応じて1/2型、1/3型、1/4型の三段階に分類した。




0歳・1歳ではすべて1/2型であり、2歳児では67%であった。



3歳児になると、1/2型は63.3%、1/3型23.3%、1/4型13.3%であるが、
4歳児では、1/2型は37.53%と減少し、1/3型・1/4型が増加した。



5歳児では1/4型が増加したが、1/2型は4歳児と大差なかった。
以上のように、小児の口唇の形態は、年齢とともに横長になるケースが増加した。



口唇の形態の変化は、捕食や嚥下力の向上と関係が深いはずである。
4・5歳児の1/2型は、口腔機能発達不全症のハイリスクにつながるかもしれぬ。
遅くとも、この時期からの取り組みが必要だ。


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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岡崎 好秀

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