習慣性口呼吸の原因を大きく5つに分けた。今回から、軟組織の問題 3:口輪筋について考えてみる。 出生直後の新生児は、母乳を飲みやすい様にさまざまな特徴がある。 まず口蓋中央部に"吸啜窩"(くぼみ)がある。これで乳首の取り囲みを容易にする。 そして、上下の歯グキの間には"顎間空隙"。
これは母親の乳首を傷つけないためのものだ。 また頬には、"ビシャの脂肪床"(脂肪組織)がある。このため、頬が膨らみ丸っぽい。 これらのおかげで、乳首は周りの組織に密着し隙間がない。 そこでわずかの舌の動きで母乳が飲める。 この際、口唇は乳房に接しているだけだ。 この時期、口唇閉鎖力の発達は十分ではない。 さて乳児期の口唇は、厚く全体的に丸く上口唇は凸型をしている。 そして口唇閉鎖力・嚥下力が高まると横長に見える。
すなわち口唇の形態は、口腔機能を現す"ものさし"の一つといえる。 そこで保育園児を対象に、年齢による口唇の形態の変化について調べた。 まず園児がリラックスしている状態で口唇を撮影する。 そして、写真上で口唇を計測しその縦/横比を求めてみた。 数値が大きければ丸く、低ければ横長の口唇となる。 この割合に応じて1/2型、1/3型、1/4型の三段階に分類した。
0歳・1歳ではすべて1/2型であり、2歳児では67%であった。
3歳児になると、1/2型は63.3%、1/3型23.3%、1/4型13.3%であるが、 4歳児では、1/2型は37.53%と減少し、1/3型・1/4型が増加した。
5歳児では1/4型が増加したが、1/2型は4歳児と大差なかった。 以上のように、小児の口唇の形態は、年齢とともに横長になるケースが増加した。
口唇の形態の変化は、捕食や嚥下力の向上と関係が深いはずである。 4・5歳児の1/2型は、口腔機能発達不全症のハイリスクにつながるかもしれぬ。 遅くとも、この時期からの取り組みが必要だ。 続く

著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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