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2020年6月のピックアップ書籍

2020/5/26 歯科NEWS

『0歳からの口腔機能と歯列の育て方』

このたび、"凄い!"本が出版された。 それが本書である。凄い!と書いた理由その1は、発売前から予約注文が殺到したことで、すでに第2刷の印刷に取り掛かったことである。"凄い!"その2は、歯が生える前のからのアプローチについて書かれていることだ。一般的に、歯が生える前に歯科医院を訪れる患者さんは、まずいない。保護者が赤ちゃんを連れてきたら、多くの歯科医院では何を話せばよいか見当がつかないだろう。 しかし、よく考えてほしい。そもそも乳児は、歯が生える前から、舌や口唇を使い、食物をなめ、しゃぶり、そして食べている。だから、この時期に口唇や舌を発達させる取り組みをしておかないと、歯が生えてからよく噛めるわけがない。おりしも昨年、「口腔機能発達不全症」が保険診療に導入された。口腔機能の発達不全は、将来の不正咬合のみならず、お口ポカン、さらに閉塞性睡眠時無呼吸など、重大な問題の予備群となる。これらの問題を突き詰めると、歯が生える前から、いかに機能を高めるかが重要なポイントとなる。そんな意味においても、本書は時代を先取りした1冊といえる。 さて著者の益子正範先生は、茨城県つくば市で開業されている。もともと岡山大学歯学部の出身で、入学当初からの付き合いであった。そんな関係もあり、小児歯科の臨床実習ではインストラクターを務めた。学生時代から、小児の口腔機能の低下の問題について話し合ってきた背景がある。そんな経緯もあり、卒業時には小児歯科専門医で評者の師匠の1人である石田房枝先生を紹介させていただいた。先生は、「子どもは、お母さんのお腹のなかからみるべきだ」という信念のもと、2005年より産婦人科医師・助産師などの保育関係者とともに「赤ちゃん歯科」の勉強会を立ち上げられ、現在は"赤ちゃん歯科ネットワーク"の代表として活躍されている。 ここには"赤ちゃん歯科ネットワーク"の15年にわたる活動のエキスが見事にまとめられている。歯科医療従事者が勉強するだけでなく、これから母親になる人、さらには出産のお祝いにプレゼントしたい1冊である。 本書が契機となり、子どもたちの口腔機能への関心が高まり、歯が生えてくる前から歯科医院を訪れる乳児が増えてくれることを望んでいる。 評者:岡崎好秀 (国立モンゴル医学科学大学客員教授・元岡山大学病院スペシャルニーズ歯科診療講師) 益子正範・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,000円(税別)

ビジュアル歯科臨床解剖─基礎から応用まで

「なるほど」、「面白い!」、「一気に読めた」。 歯科臨床解剖の名著の誕生である。「見えないもの・知らないものはだれだって怖い。まず知ることからはじめよう」から始まる本書。著者である岩永譲氏は、2016年より米国・Seattle Science Foundationを経て、現在Tulane University School of Medicineに在籍し、解剖学者として世界的な研究・教育に従事し、国際的な学術誌における編集査読委員も務める歯科医師である。 本書のもっとも注目すべき点は、多くの解剖写真が希少価値の高いフレッシュカダバーを用いられたものであること、そして骨や口腔内写真、パノラマエックス線、CT画像、鮮明なイラストとともに、口腔外科手術にかかわる解剖が多角的な視点からの画像で展開されている点である。また「患者の口腔内と同じ角度から見ること」を配慮した解剖写真は世界初であり、本書の最大の魅力である。岩永氏の文章は、移り変わる画像と連動してわれわれに語りかけ、まるでプレゼンテーションを視聴しているかのごとく容易に読み進めることができる。各チャプター内に余談的に散りばめられた「知っ得!コラム」や、切開線を入れる際の解剖的なランドマークの紹介などとても有意義であり、「ただやみくもに怖がるのではなく、何に気をつけるか具体的に考えながら治療計画を立て手術に望むことが重要である」、「何よりも大事なのは、解剖、バリエーションを知る、その上で画像を読影するなどの基本に立ち返ることである」という言葉が強く印象に残った。 世界の数多くの研究データを基に、岩永氏らの研究した新たな知見も加えて解説される本書は、われわれが認識している以上に個体差やバリエーションに幅があることを改めて知らされた。なかでも岩永氏の大きな転機となった「舌神経」については、舌の動きに合わせて舌神経の位置が変化することについて、新鮮解剖写真によって明確に示されていて感銘を受けた。われわれ臨床家にとっての解剖とは何なのか?たとえるならば、旅人にとっての「道」であり、「地図を知る」ことであるように思われる。本書の冒頭部分「まず知ることからはじめよう」は、われわれの明日からの日常臨床に役立つ道標となることを願う岩永氏の祈りのように思えた。明日の臨床のために。 評者:高橋恭久 (東京都・高橋スマイル歯科) 岩永 譲・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:10,000円(税別)

the Quintessence別冊『インプラントYEARBOOK 2020』

2002年から発刊されている『インプラントYEARBOOK』であるが、この『インプラントYEARBOOK 2020』からは公益社団法人日本口腔インプラント学会(以下、日本口腔インプラント学会と略)が監修することとなった。これにともない、日本口腔インプラント学会の宮﨑隆理事長が巻頭言を寄せられた。その文末は、「多くの臨床歯科医師が本書を活用して、新しい情報を入手し、日々の臨床に還元し、国民の健康回復に貢献されますように祈念いたします」と結ばれている。まさに、本書の目的がそこに述べられているのである。また、巻頭言の次ページには日本口腔インプラント学会の歴史と現在の活動、そして今後の展望も紹介されている。 『インプラントYEARBOOK』の巻頭には毎年、特集が組まれ、その年々のトピックなどが掲載されている。昨年はデジタルデンティストリーの未来予測であったが、この『インプラントYEARBOOK 2020』では、「疑問に答える!インプラントの研究倫理Q&A」と題する特集が掲載されている。ここでは、学会などにおける研究発表(症例報告も含む)や投稿にかかわる倫理申請について、日本口腔インプラント学会の倫理委員会への問い合わせが多い24の質問項目に対して、同学会倫理委員会の馬場俊介委員長と医学倫理審査委員会の戸田伊紀委員長が非常にわかりやすく回答されている。今後、臨床研究のみならず、症例報告を予定されている先生には非常に有用な巻頭特集となっている。 さて、なんといっても『インプラントYEARBOOK』には、国内で薬事承認を受け、販売されているインプラントシステムとその臨床応用がメーカー別(五十音順)に掲載されている。今年は27社(昨年は28社)がそれぞれのインプラントシステムの概要と特徴を紹介しているが、新しいシステムが導入されていなければ、基本的には前年とほぼ同じ内容となっている。しかし、その臨床応用は毎年新しい症例が報告されており、さまざまな術式や工夫が紹介されているのでぜひ参考にしていただきたい。とくに、ここ数年はデジタルワークフローをベースにした症例が増えてきているのが特徴となっている。したがって、今後、新たなインプラントシステムやデジタルワークフローの導入を検討されている先生、あるいはテクニックのアップデートにも本書は欠かせない1冊なのである。 評者:松野智宣 (日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座) 公益社団法人日本口腔インプラント学会・監修 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,800円(税別)