前回のインタビューで、中川先生が口腔外科を選んだきっかけやオペでの器具の選び方について教えていただきました。 口腔外科に進んだことがなく、どういう症状の患者さんを実際に診察しているのかわからない歯科医師の先生もいらっしゃるのではないでしょうか? 中川先生の経験に基づき、口腔外科はどういう経緯や症状で来られる患者さんが多いのか、また患者さんとのエピソードについて紹介します。 口腔外科とは、“口腔(こうくう:口のなか)、顎(がく:あご)、顔面ならびにその隣接組織に現れる先天性および後天性の疾患を扱う診療科です” 【引用】公益社団法人 日本口腔外科学会 ※本インタビューは研修医や独立を考えている方、歯科医師としての今後のキャリアを考えている方を対象としています。口腔外科は『紹介』で来院する患者さんが多い
インタビュアー 口腔外科は一般の患者さんにもあまり知られていないイメージがあります。病院の口腔外科に来られる患者さんはどういう経緯で来られる方が多いですか? 中川先生 街の歯科医院の歯科医師が、口腔内でも歯以外の部分、舌や頰の裏側などに何か疾患がありそうだと判断して、送られてくる患者さんが多いです。 紹介患者さんしか診ない病院もありますが、私が働いていた病院では地域の飛び入り患者さんも診ていました。口腔内の癌治療は行っていない病院だったため、癌以外の治療をしていました。 インタビュアー 確かに口腔内の疾患は患者自身が気付きにくいですよね。前回のインタビューで仰っていた歯以外の知識や治療経験の経験も必要という意味がわかります。口腔外科で診る入院患者さんの症状
インタビュアー 『口腔外科』はどういう症状の患者さんを治療することが多いですか? 中川先生 他科の入院患者さんも診るため、消化器外科・脳外科・婦人科などに入院していて化学療法を始めた患者さんが多いですね。放射線治療している患者さんが「口の中調子悪い」と言うと、入院している間はかかりつけの歯科医院に行けないため、口腔外科が診療します。 薬を複数飲んでいたり、化学療法をしてる患者さんは抵抗力が低下して口内炎の症状が治りにくい方が多く、口内炎は化学療法の影響が強いんだなと実感しました。 インタビュアー なるほど。口腔外科は総合病院や患者さんにとって、必要不可欠な科なんですね。入院患者さんから頂いた言葉
インタビュアー 最期に治療した患者さんの中で印象に残った患者さんとのエピソードを教えてください。 中川先生 他科で入院中の患者さんの訴えで1番多かったことは「入れ歯があっていないから、ご飯が食べれない」という相談でした。 多くの患者さんの入れ歯調整を行いましたが、「ご飯食べれるようになった」と言って頂くのがとても嬉しかったです。 しっかりとご飯を食べて、栄養を十分に摂り、元気になっていく姿を見て、毎回治療してよかったと思います。退院される患者さんには「定期的なメインテナンスは大切なので、退院しても町の歯科医院へ通ってくださいね」といつも話しています。まとめ
口腔外科では、街の歯科医院の紹介で来院される患者さんが多い一方で、他科の入院患者さんの口腔内を診察することもあり、オペの手技だけでなく、口腔内のさまざまな疾患に対する知識も必要です。 また、中川先生と患者様のエピソードをお聞きすると、「口腔外科を通じて、患者さんにとっての嬉しいことが再発見できた」という中川先生が貴重な経験を積まれていることがわかりました。 歯科医師を目指す方や口腔外科の興味がある研修医の方、独立を考えている方は、患者様の気持ちを知る上でも中川先生のインタビューは参考になるかと思います。