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2021年6月のピックアップ書籍

2021/5/28 歯科NEWS

他のシステムによる新しい治療法や術式、コンセプトを学べる
別冊ザ・クインテッセンス『インプラントYEARBOOK 2021 認定専門医資格取得までの道筋とこれからの専門医制度』

毎年この時期になると風物詩のごとく歯科商店から届けられるのがインプラントYEARBOOKである。評者がインプラント治療を始めて相当な年月になるが、当初に掲載されていたインプラントメーカーは、それほど多いものではなかったと記憶している。当時は、各メーカー間でインプラントシステムや性能にそれほど大きな違いや特色があったのかというと疑問である。ただ、当時の状況を鑑みるとそれぞれのメーカーの存在自体を広く認知してもらうことが、主目的であったように思える。 2021年を迎えた現在では、1冊の書籍にまとめるのが困難なほど、千紫万紅のインプラントメーカーが存在する。さらに、各インンプラントメーカーが、独自の特色を打ちだしているだけではなく、数種類のインプラントシステムをもち合わせているメーカーも多くなってきた。具体的に述べれば、抜歯即時インプラント埋入に適したもの、即時荷重に適したもの、ショートインプラントシステム、サージカルガイドやデジタルシステムと呼応しているもの、オーバーデンチャーに特化したもの、ドリルやフィクスチャーに特徴を有するものなど多岐にわたり、それぞれにユニークな機能を有している。 表面性状に関してもすでに行き着くところまで開発が進んでおり、これ以上の進化がありえるのかと思っていたが、想像を超える新たな発見があり、メーカーの開発力と尽力には頭の下がる思いである。本書では、多くのシステムを幅広く網羅しており、そのシステムを使用した治療や術式の流れが、詳細に記載されている。読者にとっては、現在使用しているシステムのアップデートの確認だけでなく、他のシステムによる新しい治療法や術式、コンセプトを合わせて学ぶことが可能である。 さらに、これからインプラント治療を導入しようと考えている若い先生にとっては、これからの歯科医師人生において、長く付き合えるインプラントメーカー・システムを選択すべきで、その点でも、非常に読み応えのある書籍である。自身が車や時計、装飾品等を選ぶときに、熱意をもって勉強するのと同じである。長く同じメーカーのインプラントシステムに慣れ、ぬるま湯につかっていると、知らない間に時代に取り残されてしまう。つねにアンテナを張っておくことが重要である。 最後になったが、本書は日本口腔インプラント学会監修のもとに発刊されており、当会の認定専門医取得までの道筋と、2018年に発足した日本歯科専門医機構による専門医制度に対する展望も記載されている。まず厚労省が認定している広告可能な5学会(日本口腔外科学会、日本歯周病学会、日本歯科麻酔学会、日本小児歯科学会、日本歯科放射線学会)から専門医制度のスタートを考えているようである。つぎに専門医制度の設立が急務とされるのが、国民から要望の高いインプラント治療と矯正治療ではないかと思われる。今後の進捗情報が待ち望まれる。 評者:高井康博 (広島県・高井歯科医院) 公益社団法人 日本口腔インプラント学会・監修 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:7,480円(本体6,800円+税10%)・368頁

本書を手に取った歯科衛生士の自身だけの充実した訪問歯科マニュアルができあがっていく?
『今からはじめる歯科衛生士のための訪問歯科マニュアル』

自分が訪問診療を始めたのはおそらく20年くらい前のことであったが、その当時には参考にする図書もなければ、身の回りに先達がいなかったので、本当に手探りだったのを覚えている。卒前では普通に外来に来ることができる患者さんの歯科治療の仕方しか基本的には習わないし、病気といっても生活機能を低下させる疾患というよりも観血的処置をするときに気を付ける病気のことくらいしか事実上習うことはなかった。仕方がないので、というと表現はおかしいかもしれないが、関連するような専門書、たとえば内科や神経内科、リハビリや生活支援の本をかいつまんで読んだりしていた。しかし、触れたことがない分野の本はまずどこから読むべきなのか、どの部分が自分にとって大事な情報なのかをみつけることも大変で、目の前にいる患者さんにどの情報を適用すべきかというのがつながってくるまでにはそれなりに時間がかかった。 本書を読んで、今の歯科医師、歯科衛生士の人たちはこのような図書に恵まれて本当に幸せだと思う。よい意味で詳しすぎず、多彩な症例写真やイラストもふんだんに使われていてとてもわかりやすく読める。同様の書籍はより詳しくつくることは可能ではあろうが、豊富な臨床経験から必要なことに内容を絞り込んでいるように感じた。それこそこれから訪問診療を始めたいというクリニックがあったら、最初の勉強用のテキストにも向いているし、訪問自体は行う予定はなくても高齢の人への対応を勉強するのにもよいので、クリニックでの院内教育用にも適している。まず本書を手に取ることで、外来の患者さんと違ってどこから手を付けたらよいのかわからないという疑問は多く解決できると思われるし、かゆいところに手が届くような確認テストもついているので、ここは飛ばさずに自身の知識の再確認をしてほしい。 悪い歯を治そう、入れ歯がないから入れようではなく、口をきれいにするならその目的を意識するだけでも介入の心持ちが違うと思われる。歯周病菌が炎症性サイトカインを産生して身体に悪影響を及ぼすので、口から全身を健康にするのを目的として口をきれいにするというのも重要な視点であるし、歯の本数は足りないけども顎の動きはよいのでミキサー食ではなくて食形態を上げられるかみてみようなどと考えていくこともとても大事である。 また、臨床経験が増えていくと本書では調べがつかなかった部分にもっと興味がでてきて掘り下げたくなることもあるかもしれない。そのようなときには、本書のメモ欄や空欄部分などに自身で調べたことをどんどん書き込んでいくとよい。そうやっていくことで、本書を手に取った歯科衛生士の自身だけの充実した訪問歯科マニュアルができあがっていくことと思われる。 評者:戸原 玄 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野) 松尾浩一郎/荒井昌海・監修 田口知実・著 クインテッセンス出版 問合先:03‐5842‐2272(営業部) 定価:5,940円(本体5,400円+税10%)・96頁