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医科歯科ボーダレスな診療を目指して
エピソード2:専門医につなぐ大切さ

2021/7/2 デンタル〇〇デザイン

「医科歯科ボーダレスな診療を目指して」というタイトルで6回の連載をさせていただきましたが、続編を書かせていただくことになりました。今回からのエピソードでは、より具体的な内容に迫ってみたいと思います。

医科歯科を問わず、医学・医療は専門分化していく方向性と、統合的にみていく方向性があります。私はその両方が大切であると考えています。

今回は歯科口腔領域ではありませんが、歯科医師や歯科衛生士の皆さん方にも知っておいていただきたいことをご紹介し、専門外の領域に関わり専門医につなぐことの大切さについて述べてみたいと思います。

苺状血管腫ってご存じですか?生後1か月ほどの乳児の皮膚に生じる赤く盛り上がったデキモノです。歯科診療室でもご経験があるのではないでしょうか。苺状血管腫は良性腫瘍であり、成長とともに縮小し消失していくと言われていますが、全部がきれいに治るわけではなく、少数ですが瘢痕が残ることもあります。

2011年3月、開業して間もないある日、ベビーカーを押した1人の女性患者さんが来院されました。その方の主訴は胃痛や胃もたれなど消化器症状だったのですが、問診・視診・触診などののち、食生活の指導と内服薬の処方を行いました。

診察室に入ってこられた時に気づいていたのですが、ベビーカーに乗っている1歳半くらいの赤ちゃんの額には皮膚腫瘤がありました。そこで診察の終盤に、「お子さんの額にあるのは、おそらく苺状血管腫でしょうか?皮膚科か形成外科の専門医に診てもらったことはありますか?」とお尋ねしました。

すると、「皮膚科や形成外科の診察は受けていません。ワクチンなどで受診している小児科の先生に、お子さんがもう少し大きくなってから受診したら良いと言われました」とお返事いただきました。

「そうですか、私は専門でありませんが、乳幼児の苺状血管腫は、治療が必要なら小さいうちにした方が良いと専門医にうかがったことがあります。良かったら私のよく知っている形成外科専門医のFクリニックに聞いてみましょうか?」と提案したところ快諾されましたので、診察室からそのFクリニックへ電話しました。同院の看護師さんが応対していただき事情をお話して、何歳くらいに受診すると良いかなどお尋ねしました。するとお返事は、「すぐにいらしてください、早い方が良いですよ」と言っていただきました。

Fクリニックは私の以前の勤務先と同じビルにあり、ベビーカーのお子さんが大勢受診されていることを良く知っていました。

この患者さん(お母さん)はその後もたまに受診され、お子さんも何度か連れてこられました。Fクリニックでの治療で額の苺状血管腫は綺麗に治っていて、本当に喜んでおられました。

乳幼児の顔面の苺状血管腫の治療は、少しでも早くから専門医に相談した方が良い理由があります。その理由を5つに分けて説明します。

①本人に顔にデキモノがあるという経験・記憶を残さない。
②瘢痕が残ってしまうと、それが悪性のものでなかったとしても精神的に苦痛となることがある。
③苺状血管腫は瘢痕が残らないようにと乳幼児のうちからレーザー治療などが行われることが一般的である。
④苺状血管腫は生後半年~1年くらいまでに急速に増大する時期があるため、治療が必要な顔面などでは、様子をみることをせずになるべく早く治療を開始すべきと考えられている。
⑤痛みをともなう治療は、お子さんには辛いものです。痛くて辛い治療は、記憶に残りにくい3歳くらいまでに行う方が良いという考え方もあります。

以前は外科手術が主でしたが、「パルス色素レーザー」という機器は生後間もない赤ちゃんにも使用することができます。切除する手術と異なり、表面からは針を刺すだけなので大きな傷をつくることなく治療が可能ですが、薬の副作用もあるため慎重に行う必要があります。 

苺状血管腫の治療方針はアップデートされています。最新の知見を基に最適な治療が受けられるよう専門医に繋ぐことが、その分野の専門ではない医療者の務めだと思います。なお、苺状血管腫の治療の新しい話題として、2016年から発売されたヘマンジオルシロップ(一般名:プロプラノロール塩酸塩)があります。これは苺状血管腫に対する初の飲み薬の治療薬であり、今まで手術やレーザー治療しかなかった苺状血管腫に対して、新しい治療の道を開いたお薬になります。

歯科医院で小さいお子さんの顔に苺状血管腫を見かけたら、このコラムを思い出して、ちょっとお声をかけてみてください。専門外のものを診療するわけではないですが、ちょっと知っておいて適切な専門医へつなぐということ、それが患者さんのお役に立つことがきっとあります。これも医療連携ですね。