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発達期における咬合の変化 その8 第2世代の乳歯列

発達期における咬合の変化 その8 第2世代の乳歯列
発達期における咬合の変化 その8 第2世代の乳歯列
筆者は、時系列的に乳歯列の変化を第1世代から第4世代に分けた。

まず第1世代は、乳前歯の被蓋の浅い“空隙歯列弓”である。
その後、第2世代として“閉鎖型歯列弓”が増加した。
さらに第2世代は、Ⅰ“下顎のみ閉鎖型歯列”からⅡ“上下顎における閉鎖型歯列”が増加した様に感じる。 
また同時期にⅢ“乳前歯の近遠心幅径の増大”も気になり始めた。

これは、食生活などの外的要因の変化に基づくのだろう。
例えば、前歯部で咬み切り、引きちぎることが多い食生活は、おのずと被蓋が浅くなる。
同時に、上下前歯の切端が当たる力で、歯槽骨が添加され空隙歯列弓になりやすい。

一方、食物を小さく切って与えると、乳前歯で咬み切る必要がない。
これが、閉鎖型歯列弓の増加要因の一つと考えられる。
元来、脳頭蓋の成長は遺伝的要因が大きいが、顔面頭蓋には環境的要因が大きい。

捕食・咀嚼・嚥下に関わる運動は、顔面頭蓋の正常な発育を促すのである。

さて、閉鎖型歯列弓の増加は、嚥下圧とも関係が深い。
舌圧が口蓋の成長に影響を及ぼすためである。
我々は、歯列の内側の口蓋を見て、高口蓋の有無を判断してきた。
しかし、乳歯が萌出する前から口蓋は存在するのだ。
ヒトは、乳児期から一日に何度も嚥下を行う。
その数、1日に約600回。注1
単純に考えると、生後1年で約21万6000回、乳歯列の完成期する3歳では約65万回となる。
この力が、口蓋の成長に影響しないはずがない。
 
さて、小児歯科医の石田房枝先生は、赤ちゃん歯科ネットワークを設立し、
新生児期から口腔内の印象を採り、口蓋の変化について調べてこられた。注2
生後3目と3か月の上顎を見ると、口蓋が急速に大きくなるらしい。

この変化は、生後3か月までが著明であり、その後の成長に与える影響も大きいという。
続く

注1 嚥下回数:覚醒時350回、食事時200回、睡眠時50回 合計600回
Lear CSC, et al:AOB 10:83-89,1965.
注2“赤ちゃん歯科ネットワーク”ホームページ:https://www.babydnet.org/

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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