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口腔機能発達不全症 その21
脳の刈り込み現象

2021/8/31 デンタル〇〇デザイン

口腔機能発達不全に関して、もう一つ理解を深めておきたいことがある。
それは、乳児期の"感覚運動"の統合についてである。
この点について脳神経の発達的な観点から考えてみよう。


さて新生児の吸啜運動や味覚感受性などは、そのまま生命に直結する。
そのためには、胎児期から口腔領域の筋肉や神経系の発達が不可欠である。
脳は、ニューロン(神経細胞)とグリア細胞(神経膠細胞)から構成される。
前者は情報伝達を行ない、後者はニューロンを支えるなどの働きがある。
ニューロンは、信号を受け取る樹状突起と伝達する軸索がある。
軸索は、髄鞘化により伝達のスピードが著しく早くなる。
これは、胎生5~6か月頃から生後2歳頃まで、もっとも活発に行われる。
なかでも、大脳皮質で最初に起こるのは、運動野と感覚野である。




筆者は、神経系のシナプス数は、出生後から年齢とともに増加すると学んできた。


しかし現在、この説は大きく覆っている。
1990年代、シカゴ大学のハッテンロッカーは、胎生期から成人期までの視覚野のシナプス数を調べた。
その結果、シナプスは生後2~4カ月で急に増え、6~8カ月でピークに達する。
しかしその後、大人と同じレベルになるまで減少することがわかった。



どうして、このような現象が起こるのだろう?


神経回路を道路に例えてみると、まず脳はたくさんの道路を作る。
そして、車の通過量の多い道路は、設備を向上し高速道路に格上げする。
その後、使わない道路を廃止する。
これが"シナプスの刈り込み"であり、廃止の期限を"臨界期"という。




すなわち、無駄な神経伝達を減らすことで、神経伝達の効率を向上させる。
これによりシナプス同士の結合が強化される。




この現象は他の部位でも起こるが、その時期は異なり感覚運動皮質がもっとも早い。



臨界期は、視覚・聴覚・触覚など五感にも大きく関わる。
眼の臨界期にある、子ネコの眼を数日~1週間程度塞ぐと弱視になる。
また縦線しかない部屋に閉じ込めておくと、横線が見えなくなる。
これは"刈り込み現象"により、光や横線に視覚が反応しなくなったのだ。
ネコの視覚は、その後回復することはないという。


ちなみにヒトにおける視覚の臨界期は2~5年である。
また日本人が英語の「R」と「L」の発音を聞き分けることが苦手なのは、聴覚野における臨界期の問題である。
五感に対する臨界期は、かくも重要であることがわかる。


続く