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2022年6月のピックアップ書籍

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2022年6月のピックアップ書籍

ラミネートベニアのバイブルとしてぜひ読み切ってほしい! 『ラミネートベニア スマイルデザインのレシピ20』

Stefen Koubi・著 大河雅之・監訳 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 49,500円(本体45,000円+税10%)・704頁 評 者 山﨑長郎 (東京都・原宿デンタルオフィス/日本臨床歯科学会理事長) 本書の著者であるKoubi先生と評者は、イタリア・ドイツなどで何度かいっしょに講演したことがあり、そのたびに卓越した知識・技術に感動してきた。そこで、われわれの学会(日本臨床歯科学会)が例年行っている海外セミナーをフランスのパリ市内で開催する折にはぜひ登壇していただきたいとお願いし、2019年9月に実際にレクチャーを行っていただくことができた。実はその時点で本書はヨーロッパで上梓されており、私たちはそこで「日本語訳本をぜひ制作しよう」と互いに約束した。そして今回、大河雅之先生が快く監訳を引き受けてくださり、素晴らしい訳本が完成した。このように、Koubi先生とわれわれとの間に浅からぬ関係があったことが、この度の訳本が登場した経緯である。 さて、この「ラミネートベニア スマイルデザインのレシピ20(“レシピ20”がいかにもフランス的で面白い)」は、他の書ではみられないような、臨床で遭遇するありとあらゆる症例を基本からアドバンスまで網羅していて非常に臨床的である。また、必要な治療が拒否された症例や妥協的な症例、そして失敗例までも正直に示されており、まったく多種多様である。もうひとつ特筆すべきこととしては、マテリアルの選択が妥当でその理由も明確である点が挙げられる。そのマテリアルについての解説はもちろん、技工操作についても事細かに、順序立てて説明してある。それがまた大きな写真の列挙によりわかりやすく見やすい。このようにセットアップされた書籍はほかに例がなく、単なる写真集とは違い理論的な内容も十分あり、Koubi先生の大学時代の研究が役立っている。 本書の内容は、副題のとおり「20のレシピ」から構成されている。レシピ1~3はラミネートベニアの基本である審美の概論、マテリアルの適切な選択基準そして理論的背景である。レシピ4~8は、臨床で遭遇するさまざまな問題を有した症例(傾斜歯、捻転歯、歯間空隙、ブラックトライアングルなど)の解決法を失敗例も含めて述べている。レシピ9~12は色調合わせが難しい変色歯への対応、レシピ13と14はペリオの問題を有している症例、レシピ15~17はラミネートベニアとクラウン、インプラント、デジタルの治療上の注意点、そしてレシピ18~20には摩耗歯、歯列の症例と解決法、詳細な治療ステップと技工ステップが記されている。今、世界の歯科の講演会においては摩耗歯に関するレクチャーが非常に多く、関心の高い分野である。この章もまさに圧巻の仕上がりである。 いずれにしても読み応え・見応えのある本であり、この1冊でラミネートベニアのすべてが把握できるであろう。写真が素晴らしいので、気楽にいつでも手にとって見ることができる。本書は日本におけるラミネートベニアのパイオニア的な1冊となること、間違いないと思う。ぜひ、バイブルとして読み切っていただきたい。

現時点で開業医が知っておくべきMRONJの知識が、本書1冊に凝縮! 『MRONJのリスクがある患者の歯科治療を行う時に読む本』

黒嶋伸一郎/澤瀬 隆/米田俊之・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,500円(本体5,000円+税10%)・72頁 評 者 丸尾勝一郎 (東京都・三軒茶屋・恵比寿マルオ歯科) 高齢化の進む日本では、歯科医院来院患者もまた、年々高齢化している。その高齢患者がなんらかの薬剤を服用している確率は非常に高く、そのなかには歯科治療において重篤な副作用を呈するものが含まれる。 それらの副作用のなかで、可能な限り未然に防ぎたい疾患の1つが顎骨壊死ではないだろうか。顎骨壊死は、一度発症すると個人の歯科医院レベルで対応するのが非常に困難で、大学病院に紹介せざるをえない。しかし、明確な治療方法が確立されていないため、重篤な場合、患者の身体的な負担は非常に大きくなる。 そんな厄介な歯科治療による顎骨壊死について、われわれ開業医が知っておきたい情報がつまった、格好の1冊が上梓された。それが本書である。 ひと昔前、顎骨壊死といえば骨粗鬆症薬であるビスホスホネート製剤(BP製剤)の服用に起因するビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死、いわゆるBRONJであった。しかし現在では、顎骨壊死を惹起させる可能性がある薬剤はBP製剤だけではなく、デノスマブに代表される血管新生阻害薬など“さまざまな薬剤”が報告されている。そのため、その総称はBRONJからMRONJ(Medication-related osteonecrosis of the jawの略)へと変わった。本書ではまず、このことが詳細に解説されている。そしてその“さまざまな薬剤”のなかには、われわれ歯科医師が見過ごしてしまうような薬剤が含まれていることを、本書を読まれて意外に思われるかもしれない。 本書第1章は、このようなわれわれ開業医がMRONJについて知っておくべき卑近な疑問が、18問からなるQ&A方式で、最新の科学的情報と知見を基にわかりやすく解説されている。具体的には、MRONJの定義、発症リスクのある原因薬剤、発症頻度、診断、リスク因子、休薬の可否、さらに抜歯、インプラント治療ほかの一般歯科治療とMRONJとの関連性、その治療の是非、対処法などである。第2章は新型コロナウイルス感染症治療薬とMRONJとの関連性、医科との医療連携や医科側のMRONJの捉え方、さらに歯科治療を行う患者に対するMRONJの説明例などが、臨床現場でそのまま使えるように、提示されている。 本書は全72ページの薄い本で、その第1章のほとんどは2~4ページ程度(最大7ページ)、第2章はすべて見開き2ページの項で構成されている。しかし、情報不足ということはまったくなく、むしろ開業医に本当に必要なMRONJの情報だけが選りすぐられていると感じる。MRONJはまだ未解明の部分も多いと聞くが、現時点で開業医が知っておくべき知識のすべてが、本書1冊に凝縮されているといっても過言ではない。私も執筆に携わることがあるが、本書のように読者目線で情報を絞り、必要最小限にして必要十分に書を纏め上げることは実は容易ではない。著者の方々に脱帽である。

各インプラントシステムの概要とエックス線画像が満載、添付文書へのアクセスがこの1冊で 別冊ザ・クインテッセンス 『インプラントYEARBOOK 2022 臨床医が知っておくべきインプラントーアバットメントコネクションの知識』

公益社団法人 日本口腔インプラント学会・監修 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,480円(本体6,800円+税10%)・380頁 評 者 樋口大輔 (松本歯科大学歯科補綴学講座) 1990年代よりこれまで、国内では約200種類(日本歯科インプラント器材協議会加盟企業32社の取り扱いとして)の骨内インプラントが発売されてきた。今回は、これら多くのインプラントシステムのなかから、臨床家が日々の臨床で経験する可能性が高い26社のインプラントシステムを日本口腔インプラント学会が監修して紹介している。 まず巻頭特集としては、サブタイトルにあるように「臨床医が知っておくべきインプラント-アバットメントコネクションの知識」と題して、松崎達哉先生、鮎川保則先生(九大)が、近年複雑化している接続形態の特徴について、マイクロギャップと辺縁骨吸収との関係に注目しながら解説している。とくにインターナルコネクションのインプラントシステムでは、印象採得や連結冠の装着で難儀することを経験するが、この対処法についても触れており、大変参考になる。 なお、このインプラント-アバットメントコネクションについては、2022年1月に行われた第115回歯科医師国家試験にも出題された。基本的ではあるが、辺縁骨の吸収など、予後にも影響するため、若手歯科医師に限らず、多くの臨床家に重要な内容といえよう。 つぎに26社のインプラントシステムのそれぞれの特徴を基本構造から臨床例までを提示し、紹介している。近年、デジタル技術のインプラント治療への応用は急速に進んでおり、ガイデッドサージェリーや光学印象が広く行われるようになってきた。そこで本書では、各インプラントシステムにおけるガイデッドサージェリーや光学印象への対応状況を参照することができる。 さらに、巻末には本書に掲載された製品の薬事承認番号一覧が添付されており、この情報をもとに、添付文章を参照することが可能である。 具体的には、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページ(https://www.pmda.go.jp/search_index.html)から医療機器検索をクリックし、そしてここに本書に掲載されている承認番号を入力すると、添付文書が簡単にダウンロードできる。いうまでもなく、この添付文章にはメーカー指定の使用方法や使用上の注意なども記載されていることから、各メーカーに問い合わせることなく、自ら調べることも可能である。 インプラントYEARBOOKは2002の発刊以来、本書“2022”は節目の20冊目(2004-2005は合併号)であり、日本口腔インプラント学会が監修として携わるようになって3冊目となった。インプラントの進歩は日進月歩であり、これらに対応するためには、日々の精進だけでなく、つねに新しい知識をアップデートする必要がある。 2022年現在のインプラントシステムを理解するため、ぜひこの1冊を手にとっていただきたい。

斯界のトップランナーたちの経験や症例から学べる貴重なテキスト 別冊ザ・クインテッセンス 『マイクロデンティストリーYEARBOOK 2022歯科医師&歯科衛生士のためのマイクロスコープ活用法』

日本顕微鏡歯科学会・編集 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,050円(本体5,500円+税10%)・186頁 評 者 山口文誉 (神奈川県・山口歯科医院) 歯科用マイクロスコープの普及率は、年々右肩上がりに増えている。筆者は、本別冊を編集している日本顕微鏡歯科学会(JAMD)の第18回学術大会に4月末に出席したが、多くの参加者が直接会場に足を運ばれ、演者との熱いディスカッションを繰り広げており、マイクロデンティストリーの情熱をひしひしと肌で感じた。そして、MIな治療が加速するなか、各分野のエキスパートの先生方のディテールにこだわった発表は、これからの歯科治療を予言しているかのようで、とても興奮した。 では、本別冊について紹介しよう。本別冊は4つのPartに分かれており、Part1「New Topics」では、低侵襲な歯肉の切開をともなわない歯周外科治療という画期的な治療方法の提示や、歯科衛生士によるSRPのためのマイクロスコープ応用術やインスツルメントの紹介、CR修復や結合組織移植術の実際の臨床動画を見ることができる。 Part2「マイクロスコープUp-to-Date」では、各分野のスペシャリストの先生がたによる症例提示を通したモダンなテクニックの紹介や、JAMD第17回学術大会で大会長賞を受賞された表茂稔先生のすばらしい発表内容が収められている。また、「THE INTERNATIONAL JOURNAL OF MICRODENTISTRY」からCBCTに関する論文が3本、全訳掲載されている。 Part3「マイクロユーザーによるケースプレゼンテーション」では、さまざまな治療分野でのマイクロスコープの活用法が多くの症例とともに解説され、Part4「Products Information & Case presentation」では、4社のマイクロスコープの紹介と、ユーザーによる動画での症例提示やケースプレゼンテーションが掲載され、非常に濃い内容の1冊となっている。 筆者がマイクロスコープを使用しはじめて十数年経過したが、日々新しい発見がある。筆者のライフワークでもある「低侵襲歯周組織再生療法」もマイクロスコープなしには語ることができない。マイクロスコープを使用することにより、1つひとつの手技が精緻になり、臨床精度の飛躍的な向上を実感している。 もちろん、マイクロスコープを使うだけでは最良の結果を得ることはできない。重要なことは、「どのように使うか?」と「どんな場面で使うか?」である。「どのように使うか?」については、日々のトレーニングが不可欠となる。マイクロスコープの拡大視野下での器具操作は、肉眼や拡大鏡下での操作とは異なるため、それに応じた器具操作習得のための訓練が必須となる。 さらに重要となるのが「どんな場面で使うか?」である。そのヒントを得られるのが、本別冊の存在である。自分だけの知識や努力だけでは限界があるが、さまざまな分野や臨床場面での応用について、マイクロスコープのトップランナーたちの経験や症例から学ぶことのできる本別冊は、貴重なテキストといえる。

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