TOP>コラム>発達期における咬合の変化 その10 頭蓋部における年齢の推定  

コラム

発達期における咬合の変化 その10 頭蓋部における年齢の推定  

発達期における咬合の変化 その10 頭蓋部における年齢の推定  
発達期における咬合の変化 その10 頭蓋部における年齢の推定  
乳歯列期は、口蓋を横切るように切歯縫合が走っている。

前方の切歯骨から上顎4前歯、後方の上顎骨から犬歯および臼歯が萌出する。
従って、切歯骨の発達不全は、永久前歯の歯列不正の原因の一つとなる。
そこで重要なのが舌圧であり、嚥下時にスポットに当たる力が切歯骨の成長を促す。
しかし・・・である。
切歯骨は、徐々に上顎骨と癒合し縫合は失われる。
単一骨になると、切歯骨の発育は期待できない。
従って、癒合する前からの取り組みが重要だ。
それは何歳頃だろう?

そこでまず、法歯学から頭蓋部における年齢の推定法について調べてみた。
まず上下顎骨があれば、加齢による咬耗により年齢の推定が可能である。

Ⅰ:咬耗度(天野の分類):主として下顎前歯を用いる。

注:残存歯数・咬合状態により左右される。発表は1958年であり、近年の急激な食生活の変化により大きな影響を受けていることが想定される。

また、X線装置やCTがあれば、歯髄腔の狭窄度から推定が可能である。

Ⅱ:歯髄腔の狭窄の程度(藤本の分類):歯牙全体の歯髄腔を占める割合。

注:咬耗度と同様1958年に発表された。

両者とも古典的な推定法であり、現在では実用的な方法とは言い難い。
また、歯牙が脱落している場合は利用できない。

ところで、頭蓋骨には多くの縫合があるが、年齢とともに癒合が進み消失する。
そこでⅢ:頭蓋骨の癒合状態からも推定が可能である。
主な縫合には、次のものがある。
①頭蓋冠縫合:冠状縫合・矢状縫合・ラムダ縫合

注:頭蓋の内側からの方が信頼度は高い。個人差が大きい。

②蝶前頭縫合(眼窩部)

注:蝶形骨と前頭骨の癒合部。教科書では触れていないことがある。

③口蓋部骨縫合:切歯縫合・正中口蓋縫合(上顎骨部)正中口蓋縫合(口蓋骨部)・横口蓋縫合


これらの癒合状態から、推定年齢をまとめてみた。

しかし実際、これらの方法も個人差が大きいようだ。
ただ、切歯縫合だけは、20歳代までに癒合し消失が始まるという。
完全に癒合していれば、30歳以上と推定できる。

それでは切歯縫合の癒合は、何歳頃から始まるのだろう?
続く

参考:法医学ブログ https://houigaku.blog/article/269.html

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事