TOP>コラム>発達期における咬合の変化 その11 乳歯列から永久歯列における口蓋の変化

コラム

発達期における咬合の変化 その11 乳歯列から永久歯列における口蓋の変化

発達期における咬合の変化 その11 乳歯列から永久歯列における口蓋の変化
発達期における咬合の変化 その11 乳歯列から永久歯列における口蓋の変化
切歯骨について調べたら、第1大臼歯・前歯部交換期以降には成長量が極めて少ないとの文献があった。(参考1)
この点について簡単に触れる。
まず歯牙の萌出状況により上顎歯列を5段階に分ける。(図1)


Ⅰ:乳歯列期   Ⅱ:第1大臼歯萌出期  Ⅲ:中・側切歯の萌出期
Ⅳ:混合歯列・永久歯列で第2大臼歯の萌出期  Ⅴ:第3大臼歯の萌出期

次に口蓋に基準点を設けて計測する。(図2・3)



その結果は、以下の通りである。
1) 切歯骨口蓋部の長さは、ほとんど変化しない(Ⅰ~Ⅴ期間の成長率1.01倍)。
2) 口蓋突起の長さは、大臼歯の萌出と伴に大きく増加(成長率1.55倍)。
3)  前方口蓋の幅(左右乳犬歯・犬歯の舌側)は、変化が少ない(成長率1.08倍)。
4)  後方口蓋の幅(左右の第2乳臼歯・第1大臼歯の舌側)は、中程度に増加(成長率1.26倍)。
このように口蓋は部位によりⅠ~Ⅴ期の成長率が異なる。
最も成長率が低いのは、口蓋骨の長さ(i-im間 1.01倍)、前方口蓋の幅(C-C間 1.08倍)であり、切歯縫合より前方部である。
Ⅰ期においては、すでに切歯縫合より前方の成長は終了していると考えられる。
一方、後方の上顎骨口蓋突起は成長率が大きく(im-tm間 1.55倍)、大臼歯の萌出により口蓋の長さが増加した。
さらに、口蓋後方の幅は(M-M間 1.26倍)で中程度に増加した。
このことから口蓋の成長は、混合歯列期以降に大きく、長さが幅に勝るため歯列弓は前後に長くなるとの結論であった。

確かに混合歯列期の標本を見ると、切歯縫合が不明瞭となっている。(図4)


切歯骨の成長は、乳歯列完成期に終了するのであれば、より早期からの取り組みが必要だ。
これが口腔機能から見た、前歯部の配列の鍵となる。
おそらく、その一つが乳前歯による食物の“かじり取り”であろう。
この刺激により歯根周囲の骨添加が促される。(図5)


しかし最近、小児が食べやすい様に小さく切って与えることが増えた。
これでは十分な切歯骨の成長は期待できない。
そして、もう一つ考えられるのが舌筋の発達の問題だ。

続く

参考 祐川励起ら:頭蓋における口蓋の成長変化について.Jpn. J.Oral Biol.,30:156-163,1988.




著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事