赤ちゃん歯科ネットワークが、新生児の印象を採って調査した。 その結果、乳児の口蓋は生後3か月頃までに著明に変化し、その後の成長に与える影響大きいとのこと。(図1) これには授乳状態が深く関係する。 授乳時、乳輪まで深くくわえて飲む“深飲み”をさせる。 すると乳首は吸啜窩まで入り、舌や顎が大きく動く。 その際、舌圧が乳首に伝わり、さらには口蓋を押し広げる力となる。(図2) 舌は、口蓋の成長に大きく関わるのだ。 では、幼児期ではどうだろうか? これは乳歯列期の口蓋であるが、横切るように切歯縫合が走っている。(図3) これは、胎生期の一次口蓋(切歯骨)と口蓋突起(上顎骨)の癒合の名残である。 そして前方の切歯骨から上顎4前歯が、後方の上顎骨から犬歯・小臼歯・大臼歯が萌出する。 ちなみにゾウの牙は、側切歯とされるのは上顎骨から生えるためである。(図4) さて切歯骨を見ると、上顎の乳側切歯の口蓋側には、永久側切歯の歯胚切端が見える。 ここから、切歯骨の成長に伴って正常な位置に萌出する。 これが不十分だと側切歯の捻転や舌側転位が起こると考えられる。 では、切歯骨の成長を促す要因はどんなものがあるだろう? ここでも舌圧が考えられる。 嚥下の際、舌尖はスポットに当たる。 これが切歯骨の前方への成長を促す力につながる。 骨格標本においても側切歯は、歯軸を変えながら萌出している(図5)。 乳歯列の側切歯の歯胚も、この力により正常な位置に萌出するのだろう。 ダウン症児の特徴として上顎骨の劣成長があげられる。 おそらく舌の低緊張のため、切歯骨に十分な力をかけられないことが考えられる(図6)。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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