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発達期における咬合の変化 その9 切歯骨の舌圧

発達期における咬合の変化 その9 切歯骨の舌圧
発達期における咬合の変化 その9 切歯骨の舌圧
赤ちゃん歯科ネットワークが、新生児の印象を採って調査した。
その結果、乳児の口蓋は生後3か月頃までに著明に変化し、その後の成長に与える影響大きいとのこと。(図1)

これには授乳状態が深く関係する。
授乳時、乳輪まで深くくわえて飲む“深飲み”をさせる。
すると乳首は吸啜窩まで入り、舌や顎が大きく動く。
その際、舌圧が乳首に伝わり、さらには口蓋を押し広げる力となる。(図2)

舌は、口蓋の成長に大きく関わるのだ。
では、幼児期ではどうだろうか?
これは乳歯列期の口蓋であるが、横切るように切歯縫合が走っている。(図3)

これは、胎生期の一次口蓋(切歯骨)と口蓋突起(上顎骨)の癒合の名残である。
そして前方の切歯骨から上顎4前歯が、後方の上顎骨から犬歯・小臼歯・大臼歯が萌出する。
ちなみにゾウの牙は、側切歯とされるのは上顎骨から生えるためである。(図4)

さて切歯骨を見ると、上顎の乳側切歯の口蓋側には、永久側切歯の歯胚切端が見える。
ここから、切歯骨の成長に伴って正常な位置に萌出する。
これが不十分だと側切歯の捻転や舌側転位が起こると考えられる。
では、切歯骨の成長を促す要因はどんなものがあるだろう?
ここでも舌圧が考えられる。
嚥下の際、舌尖はスポットに当たる。
これが切歯骨の前方への成長を促す力につながる。
 骨格標本においても側切歯は、歯軸を変えながら萌出している(図5)。

乳歯列の側切歯の歯胚も、この力により正常な位置に萌出するのだろう。
ダウン症児の特徴として上顎骨の劣成長があげられる。
おそらく舌の低緊張のため、切歯骨に十分な力をかけられないことが考えられる(図6)。


著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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