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2022年11月のピックアップ書籍

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ディシジョンツリーと症例を用いて、「歯周病の新分類」を徹底解説! 日本の新分類にも対応! 「歯周病の新分類」読本 その意思決定法、わからないことわかりやすく教えます!

辻 翔太・監著 阿部健一郎/新井宗秀/辻 香織/鶴田温美/橋爪弥生/星 嵩/前川祥吾/山浦泰明・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,800円(本体8,000円+税10%)・128頁 評 者 吉野宏幸 (埼玉県・吉野歯科医院) 辻翔太先生が米国に留学するまでの数年間、評者の医院に毎週見学に来ており、いろいろなことをともに学んだ。辻先生は卒後数年目にもかかわらず臨床スキルが高く、さらに物事を整理する能力に長けていて、いつも感心していたのを覚えている。 本書は、そのような辻先生の才能が存分に垣間見られ、あらためて感心させられた。 歯周病の新分類(以下、新分類)は2018年にAAP/EFPによって公表されたが、旧分類の歯周炎の診断名は慢性歯周炎と侵襲性歯周炎の2つに分類していた(日本では現在も継続して併記)。急速なアタッチメントロスと家族内集積が認められる場合は侵襲性歯周炎と診断し、そうでないものを慢性歯周炎と診断していたため、診断として不十分な点はあるものの、診断に必要な資料が少なく、診断しやすいメリットはあった。 新分類は、CALが診断の主体となり、さらにさまざまな要因を考慮してグレードとステージに分類する。しかし、これがやや難解であり、新分類の翻訳に携わった評者ですら最初は分類するのに苦労した。その点、本書ではディシジョンツリーでわかりやすく整理されている。 さらに、最後のページにあるディシジョンツリーシートを切り取れるようになっているので、それをコピーしてラミネートなどで保存しておけば、チェアサイドに置くこともできて便利である。本書は歯科衛生士の方も執筆に加わっており、歯科衛生士でも診断に困らないようにわかりやすく解説されている。 また、AAP/EFPが新分類を公表したことにともない、翌年には日本歯周病学会もそれにおおむね準拠した新分類を公表した。本書ではそれについても解説されており、歯周病専門医、認定歯科衛生士を目指す方にとって非常に有用である。 本書は、新分類で注目された用語の変更(フェノタイプ、骨縁上組織付着)、そして歯肉退縮の新分類(Cairoの分類)、さらに、NCCLに関してもわかりやすく解説されている。とくに、NCCLは非生理的な咬合によるものであるという科学的根拠がないことを、新分類で明記していることについても触れている。科学的根拠がない事実を知らない歯科医師や歯科衛生士には必読である。 最後の第5章では、新分類に加えて、Dr. Langらが、提唱している歯周炎とインプラント周囲炎のリスク診断(PRAとIDRA)についてわかりやすく解説されている。メインテナンス期間を決定するうえで、リスク診断が明確なエビデンスにはなっていないため、評者は、Dr. Langらのデータも参考にした自院のルールで決定している。 本書では、その点についても症例を通してわかりやすく解説されているため、歯科衛生士の方はもとより、歯科医師には本書の一読をお勧めするとともに、ディシジョンツリーシートを日常臨床で活用してもらいたい。

医院経営に卓越した著者陣の経験とMID-Gのコースが凝縮された1冊 マニュアルとスタッフ教育で時代の波に乗る シン・歯科のブルーオーシャン経営

荒井昌海・監修 瓜生和彦/栗林研治/武知幸久/立浪康晴/ 和田匡史・監著 鬼頭広章/呉本勝隆/白﨑 俊/松浦宏彰/ 山井裕生・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・204頁 評 者 片山明彦 (東京都・有楽町デンタルオフィス) 10年の時を経て、『歯科のブルーオーシャン経営』のリニューアル版が荒井昌海先生監修のもと出版された。荒井先生は個人的に付き合いが深いが、非常に聡明なかたで、雑談中にも斬新なアイデアや診療に対するヒントを多くいただき学んだ。そんな彼に率いられてMID-Gは全国的に大きなスタディグループに発展していったのではないかと感じている。このグループは「学術・教育・経営」を三本柱として、歯科医師、歯科医院の安定した診療活動を支えることをモットーに支持を集めている。 われわれ歯科医師は、大学教育で経営、財務、関係法規などの勉強をしないまま開業することが多く、開業後にさまざまな問題に直面する。それらを改善するために、多くの開業・経営セミナーを受講したり書籍を購入したりするが、すぐに解決に至らないこともある。本書は、そうした問題を実際に乗り越え歯科医院経営に卓越した著者陣の経験を、系統立ててEvidenceに基づき紐解いているところが特徴である。 サブタイトルにある「マニュアルとスタッフ教育」も医院経営において悩ましい問題であるが、本書ではどのようにマニュアルを作成しスタッフ教育を行うかについて、MID-Gのコースの内容を凝縮して述べられている。 第1章「マニュアルシステム(業務の標準化)」では、その考え方から導入、種類、アップデートに至り、これらの概念を文章化しわかりやすく解説している。第2章は、歯科医院の業務を「診療業務」と「診療外業務」の2つに分類しスターシステムの概念について詳細に記されており、導入までの具体的なノウハウも述べている。第3章は「就業規則・賃金の支給・労働時間・有給休暇・福利厚生・評価」に関する内容となっており、医院開業・運営にあたり院長にとって必要な知識が満載である。第4章では、求人広告からはじまり、面接、採用、応募者が重視することなどが述べられており採用戦略がまとめられている。第5章では、どのように歯科医師が患者に対して治療説明を行い、治療プログラムを立てるかという内容である。第6章は「財務分析と経理」で、これも医院開業・運営にあたり院長にとって必要な知識である。第7章は第6章までの内容を踏まえた実践事例の紹介で、読者が自分の歯科医院をどのような規模で展開していくかという指標となりえよう。 このように本書は、最高の歯科診療をするために必要な、診療に専念できる歯科医院の環境づくりについてのノウハウが凝縮されており、どの章もどの項目も欠かせない内容である。歯科医院経営において本書で述べられていることは通常なかなかオープンにしたくないと思うが、それらをこの書籍で惜しみなく公開してくれたMID-Gの先生方はやはり素晴らしい。これから開業する先生にも、現在開業している先生にも推挙したい1冊である。

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