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発達期における咬合の変化 その23 診療時の姿位と呼吸

発達期における咬合の変化 その23 診療時の姿位と呼吸
発達期における咬合の変化 その23 診療時の姿位と呼吸
筆者は、多くの重度の脳性麻痺児の歯科診療に携わってきた。
Bさん(5歳)もその1人、チェアーに寝かせると、呼吸困難となり、激しく咳き込み顔が真っ赤になる。
数十秒も仰臥位をとれないので、無理をすると大きなトラブルを引き起こしかねない。(図1)


ふと元岡山大学歯学部 行動小児歯科の下野 勉教授から聞いた言葉を思い出した。
「1970年代、全身麻酔でダウン症児の歯科治療を行なったが、蘇生のため抜管しても自発呼吸が見られない。困っていたら、看護師長が“この子は、いつも横向いて寝ている”と指摘したので、側臥位にしたら蘇生した」というのである。
多くのダウン症児や重度脳性麻痺児は筋力が弱い。
そのため仰臥位では、舌根が沈下し自発呼吸に至らなかったのである。(図2)


そこでB君を側臥位にすると、呼吸が楽になり診療を行なうことができた。(図3)


この様に重度の脳性麻痺児は、口腔機能に深刻な問題があるだけでなく、舌や下顎が重力に負けるため、開咬や下顎の後退位をとる。(図4)


これが歯科治療におけるトラブルの原因となる。
そこで、体位や下顎の位置を工夫し、楽な呼吸にすることが、安全な診療を行なう上で不可欠である。
さて、この話題。
睡眠時の開咬や、第4世代の下顎の後退位等による閉塞性睡眠時無呼吸の問題と類似していないだろうか?

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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