TOP>臨床情報>閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療のための睡眠歯科講座 第2回:睡眠時無呼吸患者はどう見つける?

臨床情報

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療のための睡眠歯科講座 第2回:睡眠時無呼吸患者はどう見つける?

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療のための睡眠歯科講座 第2回:睡眠時無呼吸患者はどう見つける?
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療のための睡眠歯科講座 第2回:睡眠時無呼吸患者はどう見つける?
歯科治療中に、患者さんがデンタルチェアでいびきをかいて寝てしまった、という経験をしたことはありますか?

現在、睡眠時無呼吸患者のうち、80%は医療機関を受診していない未診断とされています。いびきや日中の眠気などの症状があったとしても、それを病気と捉えず放置している患者さんや、自覚症状がなくても昼間うっかり寝てしまうという人も多いのが現状です。睡眠時無呼吸を放置してしまうと、合併症の発症や生活の質(QOL)の低下、突然死などにつながる恐れもあります。

したがって、歯科を受診する一般患者の中から潜在性の睡眠時無呼吸患者を見つけ出し、その検査診断と治療が必要であることを伝えることは、歯科医師にとって重要な責務でといえます。

そのためには、睡眠時無呼吸患者の症状と特徴を理解し、チェアサイドで迅速にその兆候を見抜くことが必要となります。

まずは、問診票の記入です。通常の問診票に「いびきや無呼吸を指摘されましたか?」という項目を挿入し、全身疾患の欄にも「睡眠時無呼吸」の項目を追加すると良いでしょう。もし、それらの項目にチェックがついている場合、歯科に関する主訴の他に、睡眠関連呼吸障害(SRBD)をスクリーニングするための問診を行います。

問診では、全身状態の確認と睡眠時無呼吸の一般症状について質問と聴取を行います。体格指数(BMI)が35より大きい、高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、2型糖尿病等の睡眠時無呼吸の合併症がみられる、またそれらに関係する薬を服用している、いびきや日中の眠気などの睡眠時無呼吸の一般症状を有する場合は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を疑います。

次に外見的特徴の確認です。成人のSRBD、特にOSA患者の顎顔面に見られる外見的特徴には、太く短い首回り(もしくは細く長い首回り)、小さな下顎、平坦な鼻などがあります(図1)。また、頭蓋顔面奇形、小顎症、下顎後退、巨舌などの顎顔面形態異常もOSAのリスク因子となります。

これまでOSAは、太った大柄の男性に多いイメージでしたが、近年、痩せ型の若い女性にも多いことがわかってきており、注意が必要です。

図1 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者の顎顔面に見られる外見的特徴。参考文献1より引用。

また、睡眠に関連した医科と歯科で共通化されている質問票記入を依頼することも有効です。代表的な質問票には、STOP-Bangテスト、エプワース眠気尺度(ESS)テスト、ベルリン質問票のほか、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)などがあります。これらの質問票を使用することの利点として、睡眠時無呼吸のリスクや主観的な日中の眠気を点数化できること、また、医科へ対診をとる場合、診療情報提供書に記載できることが挙げられます。

次に口腔内検査では、OSA患者の口腔内に見られる特徴を確認します。具体的には、舌の肥大、舌圧痕、咬耗などです。小児の場合は、歯列異常、不正咬合(過蓋咬合など)、口蓋扁桃肥大などがみられることが多くなります(図2)。

図2 OSA患者の口腔内に見られる特徴。参考文献1より引用。

また、気道の閉塞の有無を予測するために、患者さんに発声をさせず大きく開口してもらい、口蓋垂や口蓋扁桃の見え方を確認します。このときよく使用されるのが、マランパチ分類、フリードマン分類、ブロドスキー分類などの指標です。

そのほかに、SRBDのスクリーニングとして、一晩計測できるパルスオキシメータを使用するのも有効です(図3)。夜間に酸素の低下が見られないかを確認し、酸素低下の頻度が多い場合は睡眠時無呼吸を疑いましょう。

これらのスクリーニングにより睡眠時無呼吸が疑われた場合、その診断のための睡眠時無呼吸検査に進みます。明日からの診療にぜひ活用してみてください。


図3 血中酸素濃度と脈拍数が計測できるリング型のパルスオキシメータ(三栄メディシス社)。


参考文献
1.宮地舞.歯科医師のための睡眠時無呼吸治療.東京:クインテッセンス出版,2022.

著者宮地 舞

DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA
歯科成増デンタルクリニック
東京医科歯科大学病院 快眠歯科(いびき・無呼吸)外来 非常勤講師

2015年、東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業。2020年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)口腔顔面痛・睡眠歯科医学専門医コース修了。現在、DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA および歯科成増デンタルクリニック勤務。東京医科歯科大学病院 快眠歯科(いびき・無呼吸)外来 非常勤講師。 米国口腔顔面痛学会および米国睡眠歯科医学会専門医。主な著書に『歯科医師のための睡眠時無呼吸治療 その基礎知識と口腔内装置治療の実践』(クインテッセンス出版刊)がある。第9回日本国際歯科大会に登壇予定。

宮地 舞

tags

関連記事