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発達期における咬合の変化 その28 斎藤保育で育った子ども達

発達期における咬合の変化 その28 斎藤保育で育った子ども達
発達期における咬合の変化 その28 斎藤保育で育った子ども達
数年前、長崎の小児歯科医である池田靖子先生は「これまで診療室で多くの子ども達の口腔を診てきましたが、このこども園は非常に不正咬合が少ないのです」。
さらに「もちろん口腔機能発達不全症の児もいますが、成長とともに健全な状態になる傾向にあります」と言われた。
どうしてこの園では、健全な歯列を持つ児が多いのだろう?
どんな取り組みが口腔機能の発達を促すのだろう?
先生に聞くと、さくらさくらんぼ保育で有名な“斎藤保育”の実践園であった。
ここで斎藤保育について簡単に述べる。
創始者の斎藤公子先生は,戦後に貧しい子どもたちを集めて保育を始められた。(図1)


そこでは、子どもの動き,筋肉・情緒・社会性の発達を様々な観点から捉えた保育を行っており、全国に系列の園がある。
最大の特徴の一つは「個体発生は系統発生を繰り返す」の言葉に従った保育法を取り入れたことだ。
さて、地球の誕生は約46億年前、単細胞動物の出現が約35億年前、さらに多細胞動物が約7億年前。そして,魚類から両生類,爬虫類,そして哺乳類へと進化した。
一方、母体内では受精の瞬間から、細胞分裂が繰り返され、魚類から哺乳類へと形を変えヒトの赤ちゃんとして誕生する。まさに、ヒトの体には動物の進化の歴史が刻まれている。(図2)


そこで、“水や土、泥との触れ合い”、それに“金魚運動”や“両生類のようなハイハイ”などの動きを基本した体作りを行っている。
早朝から体を使った遊びや,野山を駆け回る自然保育がなされた後,室内でピアノ伴奏に合わせリズム運動が始まる。(図3・4)



そこでは、走る・跳ぶ・転がる動きの中で,体幹筋が鍛えられ良い姿勢となる。(図5)


運動によりお腹が減るので,食欲は旺盛となり,心地よい昼寝となる。
また食事は,栄養のみならずよく噛んで食べるように工夫されている。(図6)


さらには、“離乳食から手づかみを推奨し,食べる意欲を育む”ことを大切にしている。
では、斎藤保育で育まれた子どもたちの口腔内を覗いてみよう。   続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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