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発達期における咬合の変化 その29 斎藤保育で育った子ども達の咬合状態

発達期における咬合の変化 その29 斎藤保育で育った子ども達の咬合状態
発達期における咬合の変化 その29 斎藤保育で育った子ども達の咬合状態
斎藤保育では、さまざまな運動により体幹筋が鍛えられる。
また食事は,栄養のみならずよく噛んで食べるよう工夫されている。(図1)


ここで、斎藤保育で育まれた子どもたちの口腔内を覗いてみよう。  
これは斎藤保育のこども園の園医である小児歯科医 池田靖子先生が撮影された5歳児の口腔内写真の一部である。(図2)


比較のため、某小児歯科医院で定期健診を受けている4歳児の写真を並べてみた。(図3)


ここで注目していただきたいのは、乳前歯の被蓋の状態である。
じっくり比較していただきたい。
斎藤保育の子ども達は、全般的に被蓋が浅いように感じられるがいかがだろう。

さて以前,モンゴルと日本(宮崎市)の4歳児(各50名)を対象に,乳前歯の被蓋の比較について述べた。
発達期における咬合の変化 その18 日本とモンゴル人小児の前歯部被蓋状態

まず口腔内写真より,上下の乳前歯の被蓋を次の4つのタイプに分けた。(図4)

タイプ0:切端咬合。        タイプ1:下の前歯が1/2以上見える。
タイプ2:下の前歯が1/2も見えない。 タイプ3:下の前歯がまったく見えない。 

その結果,モンゴルではタイプ1が圧倒的に多く,日本ではタイプ2が多かった。
仮にタイプ0・1が正常とするならば,日本では24%,モンゴルでは78%となる。(図5)


ここに,斎藤保育の園児(5歳児 77名)を加え比較した。
その結果,この保育法で育った園児は,モンゴルのパターンと類似し,タイプ1が最も多くタイプ3が少なかった。(図6)


さて、これはモンゴルで遊牧生活を営む4歳児。(図7)


背が低いので,誰かに乗せてもらわないのと馬に乗れない。
しかし乗せると,見事な手綱さばきで鞍をつけずに裸馬を乗りこなした。(図8)



本来の食生活と運動が、理想的な咬合を作り出すのだろう。(図9)

斎藤保育に関する参考文献
1)石田房枝,他:赤ちゃん歯科からの気づき,小児歯科臨床.  Vol16(11),2011年
2)池田靖子:「斎藤公子の保育」を実践するこども園での口腔機能獲得―お口育てへのアプローチ―,小児歯科臨床,Vol22(5)16-23,2017.
3)石木尚子:リズム遊びと暮らしで育つ こどもの実践から見えたこと,小児歯科臨床,Vol24(12)53-60,2019.
4)池田靖子:こども園との取り組みから咬合誘導を考える,小児歯科臨床,Vol24(12)61-68,2019.


著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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