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発達期における咬合の変化 その27 椅子と姿勢

発達期における咬合の変化 その27 椅子と姿勢
発達期における咬合の変化 その27 椅子と姿勢
姿勢は、咬合と深く関係する。
ヒトの体は、脊柱の上に重い頭蓋骨が乗り、さらにそこには下顎がぶら下がる。
脊柱が傾けば、頭蓋や下顎が変位するのは当然である。
座位から脊柱を前方に傾けると下顎は後方位をとる。逆に、後ろに傾くと前方に移動する。
さて、 筆者らの調査では、園児の半数近くが椅子に座る姿勢が悪かった(岡山県保育協議会)(図1)。


これは、過蓋咬合や下顎の後退位とも関係するだろう。
さて、姿勢は口腔機能と関係が深い。なかでも足裏を床に付け食べると咀嚼力や回数が向上することが知られている。
岡山県保育協議会の調査では、足が床に接地しないまま食べている小児は約30%であった(図2)。


よく噛んで食べるためにも、足の下に台を置くなどの工夫が必要である。(図3)


余談ではあるが、ファストフード店のカウンター席は、椅子が高い。
足が接地しないため落ち着かず、食事時間が短くなり客の回転率が高くなるらしい。

さて、幼稚園の歯科保健指導時、5歳児クラスの姿勢の悪さが目立っていた。むしろ、4歳児クラスの方が良いではないか。(図4)


年齢とともに姿勢が良くなるはずだが正反対だ。不思議に思い、その様子を観察した。
その後、男児は同じ室内で歯磨き指導を行ったが、女児は廊下で行った。
両者を比べると、女児は男児より姿勢が良い。(図5)


その理由は、座っている椅子にあった。廊下の椅子は、室内より5cm高かったのだ。(図6)


5歳になると身長が伸び手足が長くなる。すると相対的に椅子低くなる。
そこで足を組んだり、投げ出すため姿勢が悪くなっていたのである。
足の接地だけに注目するのではなく、体に合った椅子を使用も大切だ。


著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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