2020年より私たちの生活に多大な影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症。実は毎日の睡眠にも影響を与えています。 スリープテック開発でも有名な株式会社フィリップス・ジャパンは、「世界睡眠の日(ワールド・スリープ・デー)」に合わせて2017年から全世界で行っている睡眠に関する調査を実施しました。 「世界睡眠の日」は、健康的な睡眠の重要性と睡眠が抱える問題に目を向けるために、世界睡眠協会(World Sleep Society)によって2008年に制定されました。毎年3月の春分の日の1週間前の金曜日と決められています。 特に2021年の調査は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が世界の人々の睡眠にどのような影響を与えたのかについて、フォーカスを当てています。全世界13カ国の成人13,000人に実施した調査の中から新型コロナに関するデータをご紹介します1。 調査の対象は成人男女、そのうち男性51%、女性49%。平均年齢は42.9歳。調査対象はオーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、シンガポール、韓国でした。 コロナ禍以降、回答者の70%が1つまたは複数の新たな睡眠の問題を抱えており、43%が夜中に目が覚めてしまうと回答しました。また、新型コロナの流行が良質な睡眠に悪影響を及ぼしていると回答したのが37%でした(図1)。 図1 新型コロナの流行が良質な睡眠に悪影響を及ぼす結果となっている。 睡眠の満足度も低く、わずか55%だけしか現在の睡眠に満足していない結果となりました。また、日本における睡眠に対する満足度は29%ともっとも低い結果となりました(図2)。さらに、日本人の睡眠時間は調査した国の中でもっとも少なく、平日では平均6.2時間、週末は6.7時間でした。推奨睡眠時間は7~9時間といわれており、その時間に到達しないという結果になりました。 図2 13か国の睡眠に対する満足度。参考文献1より引用。 男女別に見ると、新型コロナ禍以降、睡眠に関しては男性よりも女性のほうがより影響を受けていることもわかりました(図3)。具体的には、新型コロナが睡眠習慣、寝る能力に悪影響を及ぼし、新たな睡眠に関する問題に直面したと回答した人数が男性を上回りました。 図3 コロナ禍では男性よりも女性のほうがより睡眠の問題に悩まされている。参考文献1より引用。 コロナ禍における閉塞性睡眠時無呼吸はどうでしょうか? 世界でも新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の睡眠が影響を受けていることが今回の調査結果で明らかになりました。また、より直接的に、睡眠時無呼吸は新型コロナウイルス感染症のリスクを高めるという研究結果がアメリカで発表されました2。 睡眠時無呼吸の主な治療法であるCPAP使用率も低下しており、2020年度においてCPAPを使用していると回答したのが36%に対して、2021年度では18%まで低下しました。CPAPを中止した人のうち、ほぼ4分の3(72%)が、経済的問題(55%)や物資へのアクセスの制限(44%)など、新型コロナに関連する理由を挙げました。 参考文献 1.https://www.philips.co.jp/c-dam/b2c/master/experience/smartsleep/world-sleep-day/2021/philips-world-sleep-day-2021-report.pdf(2023年2月13日アクセス) 2.Maas MB, Kim M, Malkani RG, Abbott SM, Zee PC. Obstructive Sleep Apnea and Risk of COVID-19 Infection, Hospitalization and Respiratory Failure. Sleep Breath. 2021 Jun;25(2):1155-1157.
著者宮地 舞
DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA
歯科医師
経歴
- 2015年 東京医科歯科大学歯学部歯学科 卒業
- 2016年 東京医科歯科大学歯学部病院第二総合診療部 臨床研修終了
- 2018年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部病院 保存修復分野プリセプタープログラム修了
- 2020年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部病院 口腔顔面痛・睡眠歯科学専門医コース修了
- 2020年 歯科成増デンタルクリニック 勤務
- DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA 勤務
- 東京医科歯科大学病院 歯系診療部門 口腔機能系診療領域 義歯科
- (専)快眠歯科(いびき・無呼吸)外来
- 2023年―現在
- 歯科成増デンタルクリニック 勤務
- DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA 勤務
- 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
- 摂食嚥下リハビリテーション学分野
- Institute for Dental Sleep Medicine(https://idsm.jp/)主宰