豊富な臨床経験に基づいたマグネットデンチャーの診断と術式の教科書 Dr.もDHも患者さんも介護者にも! みんなにやさしいマグネットデンチャー
小坪義博/中島寛明・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・112頁 評 者 添島正和 (熊本県・添島歯科クリニック) 学兄の小坪義博先生がクインテッセンス出版から『Dr.もDHも患者さんも介護者にも! みんなにやさしいマグネットデンチャー』を上梓したとのことで、本書にさっそく目を通すと、全編を通してそのスライド写真の美しさに目を奪われた。 さらに、“みんなにやさしい”というタイトルに、歯科医師としての小坪先生の根底にある日頃から周囲に対する、さらにいうと超高齢社会に対する熱き想い(医療理念)を感じた次第である。 長期に渡る豊富な臨床経験のなかで試行錯誤されたマグネットデンチャーの診断と術式は、日本はもとより世界でも通用する教科書になると感じた。 本書の構成について簡単に紹介しよう。「オーバーデンチャープロローグ」では、まず無歯顎症例において上下顎左右側へ均等に8本のインプラントを埋入し、マグネット・アタッチメントを用いたインプラントオーバーデンチャーで口腔機能・審美性を回復したケースに始まる。著者の機能回復に対する徹底したこだわりに、読者諸兄は現在の超高齢社会におけるマグネット・アタッチメントを用いたインプラントオーバーデンチャーに対する誤った先入観を払拭されるのではないだろうか。 「第1章:オーバーデンチャー総論」では、補綴治療におけるオーバーデンチャーの位置付けから、基本的な支持の配置に始まり、数あるアタッチメントのなかでマグネット・アタッチメントを推奨する理由と、コラムでは磁石とマグネット・アタッチメントに関する興味深い歴史について言及されている。 「第2章:いまこそマグネットデンチャー」では、マグネットデンチャーの利点として、インプラント埋入の自由度が高く、メインテナンスと修理が容易でインプラント体に対する負荷が少ないことが挙げられている。 「第3章:マグネットデンチャーを用いた症例」では、4点支持を基本設計として咬合支持の維持安定に考慮され、とくにCASE3では孤立した鉤歯の両側から包み込むノンメタルクラスプデンチャーで審美的に仕上げたケースに驚嘆した。それに加えて、数多くの部分欠損に対するマグネットデンチャー症例と長期症例がこの章に花を添えている。 最後の「第4章」ではマグネットデンチャーに関するQ&Aが写真やイラスト付きで掲載されている。 福岡歯科大学インプラント科、日本臨床歯科学会(SJCD)、福岡口腔インプラント研究会(FIRA)100時間コースと地場の歯科医師会等で、小坪先生は後輩にもかかわらずお互い刺激し合う良きライバルとして共創する社会をめざしてきたことに対して喜びを禁じ得ない。 日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本補綴歯科学会等さまざまな学会に所属している者の1人として、近未来におけるマグネットデンチャーの優位性を機会あるごとに発信していきたいと思う。見るという単純なことが、奥深いものだと気づき、技術を磨きたくなる1冊 ザ・クインテッセンス マイクロデンティストリー YEARBOOK 2023 歯科衛生士のワンオペ対策、認定指導医・認定医におけるアンケート調査からわかる、“あなた”のマイクロスコープ活用法
日本顕微鏡歯科学会・編 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,050円(本体5,500円+税10%)・152頁 評 者 木ノ本喜史 (大阪府・きのもと歯科) 本別冊は、日本顕微鏡歯科学会(JAMD)が編集し毎年発行されている最新刊である。JAMDは、毎年会員数が増加し2,000人を超える規模となり、英文雑誌のMICROと本別冊がオフィシャルの刊行物となっている。また、JAMDでは毎年500〜800名程度の会員が学術大会に参加しており、非常にアクティビティが高い学会である。この勢いのある学会が編集する本別冊には、新進気鋭の若手が歯科のあらゆる分野でマイクロスコープ(以下、MS)を使いこなしている状況が示されている。それでは内容を紹介していこう。 本別冊はPART1から4まであり、PART1では、2022年に開催された第18回学術大会で登壇された演者の講演内容が紹介されている。MSの幅広い使用範囲を示すThe Case Presentationはもちろん、DH座談会としてアシスタントなしでのMS診療、いわゆる“ワンオペ”についての対応など、毎日の臨床で参考にしたい内容が示されている。 PART2では、JAMDの認定指導医・認定医に対して行ったアンケートの結果が紹介されている。MSおよび周辺環境・機器の現状と傾向が明らかになっており、これからMSを使いこなそうと考えている先生にとって見本、あるいは目標としてたいへん参考になる内容が示されている。また、英文雑誌のMICROから3本の論文が全訳で掲載されている。いずれもMSの有用性を実感する症例報告である。 PART3では、マイクロユーザーによるケースプレゼンテーションとして、若手の先生の論文が掲載されている。“マイクロネイティブ世代”という単語も使用されているが、見えてあたりまえ、患者に見せてあたりまえの状況を、試行錯誤してうまく各自の診療スタイルに落とし込んでいることがわかる論文である。また、多くの臨床のヒントが紹介されているので、読めばマイクロネイティブに近づくことができる内容となっている。 PART4では、3種のMSの紹介と、それらを使用した症例報告となっている。 細かい部位を対象とする歯科治療において、対象部位が大きく見えればよいことは誰もが理解できることである。しかし、いざMSを使うとなると、尻込みあるいは急に否定的になる場合もあるが、本別冊のようなきれいな症例写真の像を、臨床の場においてリアルタイムで確認しながら診療できるのが、MS臨床の最大のメリットである。MSの臨床のヒントが満載の本別冊に毎年、目を通していると、「見る」という単純なことが、ものすごく奥深いものであることに気づき、さらに自分の技術を磨きたくなることは不思議ではない。 経験の若い先生から、目が怪しくなってきている先生まで、ぜひ手に取ってもらいMSの世界を堪能していただきたい別冊が今年も発刊されたことに感謝したい。