睡眠歯科治療の流れにおいて、医科と連携する場面は非常に多くあります。その理由は、睡眠時無呼吸は広範にわたる睡眠障害の1つであり、合併症を併発することも多いため(図1)、多方面からのアプローチによって治療を行う必要があるからです。 図1 OSAの合併症の例とそのリスク。参考文献1より引用。 睡眠時無呼吸にはさまざまな治療法があり、睡眠歯科治療により症状の改善がみられない場合は、他の診療科と連携して適切な治療法に変更する必要があります。睡眠時無呼吸治療に関与する可能性の高い医科および歯科の診療科名を図2に示します。医科と歯科の連携で重要なことは、患者さんを主体とした医科歯科連携の体制を構築すること、睡眠時無呼吸に関する知識と相互の治療内容の知識を高め、情報共有の土台となる医学概念や専門用語を理解しておくこと、そして必要に応じて医科と歯科で密に連絡を取り合うことです。 図2 睡眠時無呼吸治療に関与する可能性の高い医科および歯科の診療科名。参考文献1より引用。 医科で行う代表的な治療法は「持続陽圧呼吸(CPAP)治療」です。CPAPとは、鼻マスクや口マスクなどを介して上気道に空気を送り込み、睡眠中に上気道を陽圧状態に保つことで、気道を広げる治療です。CPAPは睡眠時無呼吸に対する治療としてのゴールドスタンダードであり、一般的に、閉塞性睡眠時無呼吸の重症度決めるAHI(Apnea Hypopnea Index:呼吸低呼吸指数)が20以上の場合、適用されます。 一方で、重症度はあくまでも目安であり、必ずしもその患者の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の現状を正しく反映していないこともあります。重症度に加え、患者の具体的な症状、骨格的要因、生活習慣、睡眠習慣など、気道を狭窄させる危険因子が何であるかを必ず極め、適切な治療法を選択していくべきです。また、OSAは体重増加や年齢などに応じて悪化していく場合かがあるため、患者の現状に応じて、治療法を切り替えていく必要があります。ここでも医科歯科連携が重要となるのです。 図3 CPAP治療。参考文献1より引用。 さて、患者さん主体の睡眠時無呼吸治療を実現するためには、地域の医療機関と密に連携をとり、患者さんが円滑に検査や治療を受けることのできる関係を他医療機関と構築することが重要です。 具体的には、近隣のクリニック(呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科など)、睡眠外来や無呼吸外来を有する総合病院へ赴き、その医療施設で睡眠時無呼吸検査を実施しているか、患者さんをどのように紹介すればよいかなどを確認します。 また、医科はどの歯科医院が睡眠歯科治療を行っているのかがわからないことも多いため、医科に対して自身の歯科医院で睡眠歯科治療を行っている旨を伝え、歯科で製作する口腔内装置の治療効果を説明し、治療を必要とする患者さんがいれば、自院を紹介してもらえるように依頼するとよいでしょう。また相手に内容が伝わりやすい診療情報提供書および報告書をこまめに書くようにしましょう(了)。 参考文献 1.宮地舞.歯科医師のための睡眠時無呼吸治療.東京:クインテッセンス出版,2022.
TOP>臨床情報>閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療のための睡眠歯科講座 第12回(最終回):睡眠歯科治療に必須な医科歯科連携
著者宮地 舞
DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA
歯科医師
経歴
- 2015年 東京医科歯科大学歯学部歯学科 卒業
- 2016年 東京医科歯科大学歯学部病院第二総合診療部 臨床研修終了
- 2018年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部病院 保存修復分野プリセプタープログラム修了
- 2020年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部病院 口腔顔面痛・睡眠歯科学専門医コース修了
- 2020年 歯科成増デンタルクリニック 勤務
- DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA 勤務
- 東京医科歯科大学病院 歯系診療部門 口腔機能系診療領域 義歯科
- (専)快眠歯科(いびき・無呼吸)外来
- 2023年―現在
- 歯科成増デンタルクリニック 勤務
- DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA 勤務
- 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
- 摂食嚥下リハビリテーション学分野
- Institute for Dental Sleep Medicine(https://idsm.jp/)主宰