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糖尿病連携手帳

糖尿病連携手帳
糖尿病連携手帳
こんにちは。澤木内科・糖尿病クリニック 塚本雅美です。
最終回の今回は、糖尿病と歯周病の関係についてお話したいと思います。
皆さんはもうすでにご存じとは思いますが、歯周病は糖尿病の第6番目の合併症と言われるほど、糖尿病と関係があります。
また、合併症であるだけでなく、糖尿病のコントロールが悪化すれば、歯周病が悪化し、その逆に歯周病が悪くなると、糖尿病のコントロールも悪化するなど、双方向の関係性なのです。

1900年に、肥満、2型糖尿病有病率が高い、ピマインディアンの集団において、糖尿病患者は、非糖尿病患者に比べて、約2.6倍も歯周病の有病率が高いことが報告されました。①また、日本でも糖尿病患者さんでは歯周病の有病率が高いことが報告されています。②
糖尿病患者さんにおいて、歯周病が悪化する理由としては、高血糖が白血球の機能を低下させ、細菌にたいする抵抗力が低下することや、タンパク質とブドウ糖が結合することでできる最終糖化産物(AGEs)の影響で、歯周組織の性質が変化することなどが考えられています。③さらに、HbA1cが高いほど、歯周病が重症となる頻度もあがることなども報告されており④糖尿病治療で血糖値が改善することで、歯周病が改善する可能性もあると考えられています。③
歯周病による局所の炎症は、炎症性サイトカインである、TNFαや、IL-6が上昇することで全身の軽微な炎症となり、その炎症がインスリン抵抗性に繋がり、血糖コントロールが悪くなることが考えられています。③歯周病による炎症の総面積は歯周ポケット5mm分と考えると、約片手一枚分になるともいわれ、歯周病の全身への影響の大きさが伺いしれます。

その為、いくつもの研究で、歯周病が改善すると、血糖値も改善するという報告され、2型糖尿病では、歯周病治療で血糖値が改善する可能性があり、推奨されています③

その歯周病と糖尿病との関連の高さから、日本歯周病学会からも糖尿病患者さんへの歯周病治療ガイドラインが作成されていますので、ご参照ください。

最近では糖尿病だけでなく、歯周病と内科疾患との関連性の研究が進んでおり、歯周病と肥満や、歯周病と腸内細菌、歯周病と非アルコール性脂肪性肝疾患など、様々な内科疾患との結びつきが示唆されています。今後、さらなる研究が進む事が期待されています。
最後に、日本糖尿病協会が発行している、糖尿病連携手帳には、歯科受診の記録をするページがあります。糖尿病内科と、歯科とが協力し、医科歯科両方からのアプローチで患者様の健康を守れるよう、今後もより強い連携ができるよう、尽力できればと思っております。
短い間でしたが、糖尿病のお話にお付き合いくださり、ありがとうございます。
明日からの診療に少しでもお役に立てたら、うれしいです。



糖尿病連携手帳 日本糖尿病協会HP

(参考文献)
①(J Am Dent Assoc. 1990 Oct;121(4):532-6. doi: 10.14219/jada.archive.1990.0211.
Type 2 diabetes mellitus and periodontal diseaseM Shlossman 1, W C Knowler, D J Pettitt, R J Genco)
②Nishimura F.et al Negative effects of chronic inflammatory periodontal disease on diabetes mellitus    J Int Acad Periodontol 2:49-55,2000
③糖尿病診療ガイドライン 2019 P.219-228
④Tsai C. et al Glycemic control of type2 duabetes and severe periodontal disease in the US adult population.Community Dent Oral Epidemiol 30:182-192 2002

【関連 動画コンテンツリンク】
糖尿病について
糖尿病の合併症
糖尿病連携手帳

著者塚本 雅美

医師・医学博士
日本糖尿病学会糖尿病専門医 日本内科学会総合内科専門医

経歴
  • 2006年3月 東京慈恵会医科大学医学部卒業
  • 2006年4月  東京慈恵会医科大学関連病院にて前期・後期研修
  • 2011年4月 東京慈恵会医科大学 大学院
  • 2015年3月 東京慈恵会医科大学 大学院修了
  • 2016年4月  独立行政法人 京都医療センター 糖尿病内科
  • 2019年5月 澤木内科・糖尿病クリニック
塚本 雅美

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