皆様こんにちは、柏井伸子です。 使い捨てせず洗浄・滅菌して繰り返し使用する医療用具の取り扱いで注意すべきことは「洗浄」です。 皆様は使用済み医療用具のどこに微生物が存在しているとお考えですか? 当たり前のことですが、多くの病原性微生物は唾液・血液・組織片などの汚染物の中に存在します。 ということは、汚染物を除去することでかなり微生物の量も減少させることが可能になり、ミラー・ピンセットをはじめ金属製のインスツルメント類(鋼製小物)に付着している汚染物に対し、ブラシを用いて物理的にこすったり、洗剤を用いて化学的に分解したりという処理を行うことにより、次に行う滅菌を「質の高い滅菌」につなげていきます。 皆様の施設ではどのような洗剤をお使いですか? 消毒コーナーを見学させていただくと、お台所で使う食器用洗剤が置かれている施設があります。 お皿に着いた炭水化物や脂肪はきれいに落とせても、医療用具に付着するタンパク質を分解するのは苦手です。 テレビのサスペンスドラマ等でよく登場する「遺伝子のDNA鑑定」のDNA(デオキシリボ核酸)は、一人一人で異なるタンパク質で構成されているために個人識別に使用できるのです。 つまりDNAの異なるタンパク質が人体に入り込むと、アレルギー反応が起こります。 医療用具にダメージを与えず、しかも汚染物を効果的に除去するためには、タンパク質分解酵素洗剤入りの中性洗剤の使用をお勧めします。 前回はハンドピース(以下HP)のチェックポイントとして、ボディに135℃の耐熱温度と内部洗浄可の場合のウオッシャブルマーク(以下WM)がついているかいないかを確認しましょうとお伝えしました。 ただし、どちらにしてもHPは超音波洗浄器を使用して洗浄することはできません。 これは金属製のギアとギアがかみ合って回転力を生み出すHPの構造によるもので、超音波洗浄を行うとこのギアの部分に緩みを生じさせてしまう危険性があるためです。 また内部洗浄の可否に関わらず、洗浄時には適切な洗剤が必要です。 適切な洗剤を用意し計量・希釈して調製し、歯ブラシ・歯間ブラシ・試験管洗い用ブラシ・水洗後の拭取り用タオル等を用意します。 金属製のワイヤーブラシでは傷がついてしまうため、医療用具の洗浄には適しません。 これで準備は完了です。 次回はWMの有無別に適切な洗浄・滅菌方法についてお伝えします。
著者柏井伸子
歯科衛生士
略歴
- 1979年 東京都歯科医師会付属歯科衛生士学校卒業
- 1988年 ブローネマルクシステム(歯科用インプラント)サージカルアシスタントコース修了
- 2003年 イギリス・ロンドンおよびスウェーデン・イエテボリにて4ヶ月間留学
- 2006年 日本口腔インプラント学会認定専門歯科衛生士取得/li>
- 日本医療機器学会認定第二種滅菌技士
- 2009年 日本歯科大学東京短期大学非常勤講師
- 2010年 上級救命技能認定
- 2011年 東北大学大学院歯学研究科修士課程口腔生物学講座卒業口腔科学修士
- 2013年 東北大学大学院歯学研究科博士課程口腔生物学講座入学
- 2015年 ミラノにて3か月間臨床研究
- 2016年 アメリカ心臓協会認定ヘルスケアプロバイダー
- 2017年 上記更新
- 2020年 WHO Confirmation of Participation Infection Prevention and Control (IPC) for Novel Coronavirus (COVID-19)修了
近著 「よくわかる 歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル」 ~無駄なく無理なく導入できる現実的な実践法~ 書き込み式 歯科衛生士のための感染管理の基本 http://interaction-books-information.blogspot.com/2018/04/blog-post.html