皆様は花粉症アレルギーをお持ちでしょうか? アレルゲンとしては杉・ヒノキ・稲・ブタクサ等の花粉が知られています。 花粉症は、典型的なアレルギー反応ですね。 8年前のアレルゲン検査の結果ではスギ花粉に対して陽性でしたが、最近ではヒノキに対しても感受性が高くなったようで、4月中旬になってもマスクをせずには外出できません。 『医学大辞典』によると、アレルギーとは「ある抗原によって感作されていた個体が、再びその抗原に出会った場合に、その抗原に対して、強いあるいは速やかな反応を起こし、その反応の結果が生体に防衛的に働くのではなくて、有害に作用するという特徴を持った一連の免疫反応をいう。 この抗原を特にアレルゲンとよんでいる」と定義し、アレルゲンとは「主に蛋白質であるが、一部、細菌多糖類がアレルゲンとなりうる」としています。 つまり唾液・血液・組織片などを構成している蛋白質がアレルギーを引き起こすアレルゲンになる危険性を有しており、当然ながら医療用具に付着したこれらの汚染物は「適切に処理」されなければなりません。 この適切に処理ということから、皆様は何を連想されますか? 歯科衛生士養成機関で臨床実習を経験した3年生に感染管理の講義をする際に、「感染管理という言葉から、何を連想しますか?」と質問すると、多くの学生が「滅菌」を挙げます。 教科書にも消毒と滅菌の違いについては説明されていますが、残念ながらその前段階として考えなければならないのが「除染の重要性」です。 前述の医学大辞典において、汚染微生物数(bioburden)を調べると、「物品に付着する微生物数を意味する。滅菌をする場合に、滅菌前の汚染微生物の数が問題で、・・・(中略)同じ滅菌時間をかけるなら、滅菌前微生物数が少ないほど確実な滅菌が可能である。したがって滅菌を行う物品の汚染微生物数を少なくして滅菌を行うことが必要」として、滅菌の前処理の重要性を強調しています。 では、その前処理とは何でしょうか? まずチェアサイドにおける処理から考えましょう。 汚染物は時間の経過とともに凝固・固着します。 これを避ける為にはチェアサイドにおいて、唾液・血液・組織片(プラークや歯石などを含む)・セメント類が付着した器具は、硬化する前に拭き取りましょう。 その際に忘れてはならないのが、アルコールを使用しないということです。 アルコールはタンパク質と反応して凝固させます。 つまり、汚染された器具をアルコールワッテで拭き取ってはいけないということです。 使用済み器材は、3wayシリンジを利用して、水で湿らせたワッテやガーゼで拭き取り、その後で消毒コーナーに下げるようにしましょう。 次回は効果的な除染方法についてお伝えします。
著者柏井伸子
歯科衛生士
略歴
- 1979年 東京都歯科医師会付属歯科衛生士学校卒業
- 1988年 ブローネマルクシステム(歯科用インプラント)サージカルアシスタントコース修了
- 2003年 イギリス・ロンドンおよびスウェーデン・イエテボリにて4ヶ月間留学
- 2006年 日本口腔インプラント学会認定専門歯科衛生士取得/li>
- 日本医療機器学会認定第二種滅菌技士
- 2009年 日本歯科大学東京短期大学非常勤講師
- 2010年 上級救命技能認定
- 2011年 東北大学大学院歯学研究科修士課程口腔生物学講座卒業口腔科学修士
- 2013年 東北大学大学院歯学研究科博士課程口腔生物学講座入学
- 2015年 ミラノにて3か月間臨床研究
- 2016年 アメリカ心臓協会認定ヘルスケアプロバイダー
- 2017年 上記更新
- 2020年 WHO Confirmation of Participation Infection Prevention and Control (IPC) for Novel Coronavirus (COVID-19)修了
近著 「よくわかる 歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル」 ~無駄なく無理なく導入できる現実的な実践法~ 書き込み式 歯科衛生士のための感染管理の基本 http://interaction-books-information.blogspot.com/2018/04/blog-post.html