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2024年3月のピックアップ書籍

2024年3月のピックアップ書籍
2024年3月のピックアップ書籍

読み方は自由! 文献と症例を備えた即時インプラント治療の決定版 即時治療の真髄 補綴的要件を達成するための即時埋入と即時負荷

小濱忠一・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 24,200円(本体22,000円+税10%)・344頁 評 者 山﨑長郎 (東京都・原宿デンタルオフィス) 過去から現在に至るまで、本書のように整然とまとまっていて臨床例が圧倒的に豊富で、なおかつ論文の検証がともなっている抜歯即時の治療書は上梓されていないと思われる。それほどにこの書は完成されており、症例のすばらしさと経年的に変化のない推移が抜歯即時インプラントの優位性を、文献と臨床の両方で証明している。   本書は6章構成で各章がよくまとまっており、それのみで十分に参考となるが、簡単に各章の特徴とポイントを順次解説してみたい。 「第1章 前歯部即時治療の概念とその有効性」では、概念と治療戦略に大きく分かれていて一般的な即時治療の基礎と基本術式を解説しているが、とくに待時とも比較して即時の優位性と埋入に至るまでの詳細な術式が充実している。単にインプラント埋入に関してのみならず、口腔内全体の咬合・歯周・歯のポジション等々の複合的要素を関連付け、その重要性を述べている。 「第2章 臼歯部抜歯即時埋入の臨床的優位性」においては、その優位性を説くと同時に待時埋入の持ち合わせている問題点を列記し比較している。また同治療戦略として埋入以前の基本術式としてその検査および診断を解説している。 「第3章 即時負荷の治療概念」では、即時負荷の優位性を述べると同時に成功に導く条件を解説している。また、即時負荷の治療戦略として注意深く適応・非適応の鑑別診断および利用可能なシステムをさまざまな角度から検討している。 「第4章 前歯部上部構造製作」は本書のハイライトともいえるパートで、評者がとくに興味をそそられたのは、前歯部におけるアバットメントとスクリュー固定の選択基準であった。まさに明瞭な解説である。この結論の次に審美インプラントをいかに達成するかさまざまな要件と術式を述べている。さらに、この章の最後に上部構造物が長期的に審美性を維持するための概念と戦略がこと細かく解説してある箇所も必見である。 「第5章 臼歯部上部構造製作」、この章において注目すべきはインプラント周囲炎のリスク因子の変遷と考え方であるが、とくに多数の文献と著者の経験からこの難問をクリアーにしている。また最後のスクリュー固定のEBMと戦略も非常に臨床に役立つであろう。 「第6章 症例供覧」であるが、これはまた骨太の長期症例および審美的な補綴装置で仕上げたものであり、読み手を飽きさせないさまざまなケースが居並び圧巻である。 いずれにしても、これだけエビデンスを踏まえた長期的で、審美的なインプラント即時埋入・即時負荷に関する書は今後現れないかもしれないと感じられるほど、充実の内容となっている。読み方は自由であり、どの章を切り取っても各々完成された論文となっている。抜歯即時インプラント治療のバイブルの書となるであろう。

専門医取得に必要なインプラント治療の知識・技能の到達目標がわかる インプラントの専門医を取得するための研修マニュアル

公益社団法人 日本顎顔面インプラント学会 診療マニュアル作成委員会・編 矢郷 香/木津康博/嶋田 淳/河奈裕正/ 藤井俊治/丸川恵理子・編著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,900円(本体9,000円+税10%)・176頁 評 者 沼部幸博 (日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座) 本書は日本顎顔面インプラント学会診療マニュアル作成委員会によって編集された、一般のインプラント治療に関する専門医取得を目指す歯科医師のための本であり、また、日本口腔インプラント学会と共同で、日本歯科専門医機構に申請中(2024年1月現在)のいわゆる「広告可能なインプラント歯科専門医(仮称)」を視野に入れている。 日本顎顔面インプラント学会理事長の嶋田 淳氏によると、同学会の書籍『顎骨再建とインプラントによる治療指針─広範囲顎骨支持型装置治療マニュアル─』の策定・編集経験を経て、一般のインプラント治療に対するマニュアルを作成するべく本作成委員会が組織され、その後日本口腔インプラント学会と合同で検討を進めてきた研修カリキュラムと研修手帳に基づいて、本書が編纂されている。それゆえに読者は各章を順に読み進めることで、一般のインプラント治療に関する知識と技能、専門医取得に必要なポイントが理解できる仕組みとなっている。 具体的には、「Ⅰ.専門医としての倫理、Ⅱ.歯科基礎医学の知識、 Ⅲ.医療安全、Ⅳ.医療面接、 Ⅴ.全身的診察・検査、Ⅵ.インプラント歯科治療に関係する全身疾患、Ⅶ.局所的診査・検査・診断、Ⅷ.治療計画の立案・説明、Ⅸ.周術期管理、Ⅹ.インプラント体埋入手術、Ⅺ.インプラント歯科関連手術、Ⅻ.インプラント歯科補綴、 ⅩⅢ.広範囲顎骨欠損症例、ⅩⅣ.メインテナンス、ⅩⅤ.併発症例への対応」の15章で構成され、患者に対する最良のインプラント治療を提供するうえで、必要な概念、専門知識、準備すべきもの、基本的そしてアドバンスの技術(検査・術式)、患者に対する配慮などが、各章ごとに豊富な図表や写真を駆使してわかりやすく詳説されている。 注目すべきは各章に学習(到達)目標としての一般目標(GIO)と行動目標(SBOs)が明示されている点で、それに基づいて目標に至るための方略が述べられている。さらにSBOsに付随したチェックリストを読者が確認することで、自分が学習した内容についての振り返りができる。これは本邦の医学・歯学の卒前教育に取り入れられている手法でもあり、まさに卒前・卒後のシームレスな歯科医師育成を目指している現在の教育への考え方に合致したものである。この編集方針からは編集委員と各執筆者の本書に対する情熱を感じるとともに、本書の専門医取得に向けての指南書としてのクオリティが明確に高められている。 加えて付録として、治療説明書、問診票、照会状、治療計画書·同意書の例、現行の骨補填材やメンブレンの紹介など、インプラント施術に必要な関連情報が提示されており、これらの整理された情報は読者にとって大きな助けとなる。 このように、本書はインプラントの専門医取得のための指南書の決定版であり、これから取得を目指す歯科医師にとっての必読書として、ぜひおすすめしたい一冊である。

加速矯正の源流を探る、垂涎の1冊 加速矯正による治療期間短縮のコンセプト スピード矯正研究会ケースブック

北村 敦/深澤真一・監著/朝日啓司/ 遠藤為成/加藤道夫/神谷規明/菊田大士/ 齋藤兆生/坂本好昭/澤田大介/崔 齊原/ 堤 三告子/中嶋 亮/平手亮次/福本卓真/ 船越栄次/三林栄吾/宮井崇宏/桃沢 尚/ 山口 大/ 山田邦彦/山之内哲治・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 24,200円(本体22,000円+税10%)・224頁 評 者 浦野 智 (大阪府・浦野歯科診療所) この本を手にした時、まずタイトルの明確さに驚いた。 というのも、著者らの思いである「矯正治療の治療期間短縮」に特化した書籍であることが、瞬時に理解できるからである。 つづいて序章、総論へと読み進むと、その理由が紐解かれ、著者らの積み重ねてきた思いが綴られている。海外では、矯正治療の期間短縮のオプションとして、コルチコトミーを併用した矯正治療が取り上げられることが多い。しかし、筆者の知る限り、日本国内では、この分野における矯正医と外科医との連携はいまだに少ないと感じている。 その理由のひとつとして、この治療体系を学ぶ書物や情報が圧倒的に少ないことが挙げられる。今回ご紹介する書籍は、まさにその要望に応える1冊である。 それでは、本書の内容に沿って紹介していきたい。 CHAPTER1では、著者らが本書籍を執筆するにあたり、加速矯正に興味を持ち始めた原点に遡り、その後の寿谷一先生との運命的な出会い、さらにスピード矯正研究会の立ち上げなど、その解決法を模索してきた変遷が述べられている。この内容は、単にこの研究会の歴史が示されただけでなく、まさに日本における加速矯正の歴史が凝集されていてとても興味深い。また、歯の移動の原理から解説され、世界的な視野からみたコルチコトミー矯正の発展の歴史が示されており、中でもコルチコトミーに限らず、タイトルにも示されている治療期間短縮のための他の方法(矯正装置の改良やバイブレーション、レーザーの併用など)も紹介されている。読者がこの分野において、より多くの情報を得ることができるように配慮されている。 CHAPTER2では、医科と歯科におけるエビデンス、ガイドラインに対する考え方の違いが、医科の視点から述べられている。 現在、伝家の宝刀のごとく「エビデンス」という言葉だけが独り歩きしている感があるが、改めて医療におけるエビデンスのとらえ方と、それを基にしたガイドラインとの関連は、加速矯正の域を超えて、とても興味深い。 つづくCHAPTER3においては、どのような加速矯正の方法を用いたかを軸として、23症例が統一されたフォーマットとともに多くの臨床写真で提示されている。 治療方針、治療経過においては各症例において「なぜその術式を選択したのか?」「どの部位に、どのタイミングで適用したのか?」などが詳細に記されており、読者が治療を進めるうえでとても参考となり、考察で述べられている内容も興味深い。また、随所にちりばめられているColumnも、本編に記載できなかったポイントが取り上げられ、読者の理解をさらに深めるうえで役立っている。 これから「加速矯正」に取り組もうとする臨床医にとっては、必携の書籍である。

義歯を使用していくうちに直面する問題のほとんどを網羅! 別冊ザ・クインテッセンス YEARBOOK2024 患者説明にも自信がつく 今はこうする・こう考える 義歯のケア

村田比呂司・監著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,700円(本体7,000円+税10%)・186頁 評 者 濱田泰三 (広島大学名誉教授、東北大学元教授、日本義歯ケア学会元理事長) 2024年時点での義歯ケアに関するノウハウを、研究者、病院歯科医師、開業医など、32名の幅広い実践者達が分担して著した書である。著者たちはそれぞれに専門的な著作も多いが、本書ではとくに義歯の取り扱い方を自信をもって患者さんに説明するための資料や実践の体験などが簡潔にまとめられている。臨床の現場における患者さんからの、「どの製品を使えば良いか」などの質問にも的確にお答えするために、本書に紹介されている各社の製品一覧は役に立つだろう。 そもそも、義歯を装着したら治療は終わりではなく、むしろ患者さんにとってはその時点から義歯や、口腔、身体とのかかわりが始まる。もう60余年も前の「病巣感染(永末書店)」という単行本にもあるように、口の不潔、口からの感染が全身の病気の一因であるといわれていたにもかかわらず、長い間、装着後の義歯がどのようになっているかについて関心が向けられなかった。 義歯そのものは患者さんがその使用に慣れることで機能的に快適な時期となるが、物性的には装着直後から劣化が始まり、衛生面では不潔になりやすい。年余の義歯使用の期間には、生体の老化などの変化も起こるから、義歯にもその変化に対応するための補修は必須である。最近になってやっと、不潔な義歯が誤嚥性肺炎などの一因だと理解されるようになり、歯磨きと同じく義歯の洗浄も一般化してきた。また、メディアでの義歯ケア関連用品の広告も目立ってきている。 本書では、義歯を使用していくうちに直面する、義歯がゆるい、アタリがでる、汚れている、臭いがする、口が乾いて痛いなどの問題のほとんどが網羅されている。とくに義歯安定剤、軟質義歯裏装(リライン)、義歯洗浄剤、さらには修理などについては、詳しく解説されている。訪問先での対応、患者自身が自分の義歯を正しくケアできない場合などの対応に関する説明も大いに役立つ。 高齢義歯患者さんでは、食べられる食品が増えたり、咀嚼機能の回復が図られてはいるが、だからといって、栄養を十分に摂れているかについては、義歯だけでは必ずしも功を奏していないらしいことも紹介されている。このような知見もわきまえて、義歯患者さんに接することは大切である。高齢の義歯患者さんを見守るのは、歯科の関係者だけではない。広く介護者の方々とも義歯ケア関連の知識、情報を共有することの重要性も本書では紹介されている。 図表や写真も多くわかりやすいので、歯科医師のみならず、歯科衛生士、介護をされる方々にも役立つであろう。義歯を正しく維持管理し、不適切な義歯由来の疾病などを予防し、さらに義歯使用で最大の機能回復を得るために、それらを適切に指導できる義歯ケアのスペシャリストである「日本義歯ケア学会義歯ケアマイスター」の認定を受けるための準備読本としても最適である。

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